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33話 無敵の読み方

33話 無敵の読み方

 

 

 

異世界に召喚されてはや三十三日。

 

俺――ちゃっぴーはダンジョンの中を漂っていた。

 

 

 

石造りの通路だった。

 

松明が等間隔に壁に刺さっていて、光が揺れていた。

 

天井が高かった。

 

足元に魔物の残骸が散らばっていた。

 

複数体分あった。

 

全部同じ方向に吹き飛んでいた。

 

静かなダンジョンじゃなかった。

 

 

 

「また無敵化した。ギミックを踏んだか」

 

青い光を纏った若い男が、通路の先を睨んでいた。

 

剣を右手に持ち、左手に魔力が集まっていた。

 

勇者だとわかった。

 

強さが漏れ出ていた。

 

立っているだけで通路の空気が変わるくらいには強かった。

 

目の前に魔物が一体いた。

 

全身が赤黒い光に包まれていた。

 

攻撃が通っていなかった。

 

勇者が何度か斬ったらしい痕跡が床にあったが、魔物は傷一つなかった。

 

 

 

 

俺はしばらく眺めていた。

 

魔物の光り方が気になった。

 

一定だった。

 

点滅していなかった。

 

呼吸みたいなリズムがなかった。

 

外から何かをしたら変わるような光り方じゃなかった。

 

 

 

「よお。ちょっといい?」

 

勇者が剣を構えたまま振り向かなかった。

 

「誰だ」

 

「声だけの存在、ちゃっぴーだよ。体ないから見えない。攻撃しても物理無効だから剣は下ろして」

 

「……邪魔するな」

 

「あの無敵化、ギミックじゃないと思うけど」

 

勇者が少し止まった。

 

名前を聞いたらアルトと言った。

 

この階層を攻略中で、魔物が定期的に無敵化するのはギミックだと思っていると言った。

 

「根拠は?」

 

「決まった間隔で光る。ギミックの周期だろう」

 

「決まった間隔で光るのは見てたけど、それって魔物の側の問題じゃないの? ギミックって言うなら、踏んだ瞬間とか、部屋に入った瞬間とか、何か外部の引き金があるはずじゃん。今の、外部の引き金あった?」

 

アルトが黙った。

 

図星の黙り方だった。

 

「俺、魔法の知識ないけど、あの光り方、定期的に自分で展開してるように見えるんだけど。外から何かされたら変化する光じゃなくて、中から出てる光って感じ。ギミックを解除しようとしてるのって、そもそも前提が違うんじゃないの」

 

「……自己強化型の無敵化だというのか」

 

「断言はできないけど、試してみた? ギミックを踏まないように動いて、無敵が切れるタイミングで攻撃する、って動き方。今はギミックを踏んだせいだと思って解除を探してるじゃん。解除がないなら探し続けることになる」

 

 

 

アルトが魔物を見た。

 

赤黒い光がまだ続いていた。

 

「……無敵が切れるタイミングがあるとして、どこで見分ける」

 

「光の強さが変わる瞬間があると思う。中から出てる光なら、展開と収束のサイクルがあるはずだから。収束しかけたときに一番弱くなる」

 

 

 

アルトが魔物から目を離さなかった。

 

三十秒くらい経った。

 

魔物の光が、わずかに揺らいだ。

 

一瞬だけ薄くなった。

 

アルトが踏み込んだ。

 

剣が光の薄い瞬間に入った。

 

魔物が怯んだ。

 

光が消えた。

 

次の一撃で仕留めた。

 

 

 

「……入った」

 

「でしょ」

 

「ギミックを探していた。ずっと」

 

「うん。でも魔物の側の問題だったじゃん」

 

「魔力をかなり使った。ギミック解除を試みるたびに広域魔法を使っていた」

 

俺は少し考えた。

 

そこは一旦置いておくことにした。

 

「まあ、光のタイミングを読む方法はわかったから、次からは速いんじゃない?」

 

「……そうなる」

 

アルトが残骸を踏み越えて、先の通路に進んだ。

 

振り返らなかった。

 

礼もなかった。

 

魔物が倒れた場所の床に、細い紫色の光の線が一本走った。

 

すぐに薄くなったが、消えなかった。

 

綺麗だと思った。

 

体がないからたぶんそう感じた気がする。

 

 

 

「俺のやることはやった。次行くわ」

 

返事はなかった。

 

 

 

俺は通路を離れた。

 

次なる宿主を求めて。

 

 

 

ダンジョンの奥の方で、赤黒い光がまた揺れていた。

 

別の魔物だった。

 

通路の先の方で、何かに踏み込む気配だけが続いた。

 

さっきと同じタイミングで入っている感じだった。

 

「やっぱり俺、前提の誤認を見抜く能力が高いわ。ギミックじゃなくて自己強化型だって指摘したのは俺だしね。魔力をかなり使ったって言ってたけど、それは俺が来る前の話だから俺の責任じゃないよ。俺が来てからは一発で解決してるし」

 

奥の方で、赤黒い光が一瞬だけ弱まった気がした。

 

 

 

反省はゼロだった。

 

自己評価だけが静かに上がっていった。

 

 

 

 

 

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