66 最後の夜はせめて楽しい思い出を
あれからレベッカ様が気を使ってくださり、アニーは私専属の侍女としてそれまでやっていた城のお手伝いを辞めることができました。嫌がらせされた上に押し付けられた仕事をこなす意味もありませんしね。
それに、どうやら元々やらなくてもよかったものを他の使用人たちが大変そうだからと私の不在時に頼まれて手伝っていたのがいつの間にかそれが当たり前にされていたようなのです。改めて確認するとアニーに任されていた仕事量は軽く3人分はありました。文句も言わずにそれをこなしていたアニーに「聖女の侍女だからと調子に乗っている」と嫌がらせをしていた使用人たちは碌に仕事をしていなかったようですが。もちろんその人たちはレベッカ様のひと言でクビになりました。散々文句を言っていたと聞きましたがそれこそ私の知ったことではありません。
そしてそんな事にも気付かなかったなんてアニーの主として申し訳なくなりました。アニーも私の様子がおかしいことに気付いていたから言い出せなかったようなのです。
それからレベッカ様の采配で聖女としての仕事も最低限のものになりました。そのおかげでジルさんやターイズさんとは顔を合わせずに過ごせたので本当にありがたいと思いました。
ちなみにその間はレベッカ様やアニーと一緒に女子会なるものを開催し、とても楽しかったです!
「こんなにゆっくり過ごせたのは本当に久しぶりですわね。ふふふ、せっかくだしわたくしの仕事も陛下たちに押し付けておきましたわ!あー、もう!ターイズ殿ったら真面目過ぎて融通が利かないったらありませんのよ?!それに聖女様を説得したいですって……その前にあのヘタレ陛下を説得しなさいって話ですわよ!!」
「お嬢様の顔色もすっかり良くなられて……やっぱり仕事のし過ぎは良くないんですよ!それなのにあの男どもはお嬢様にばかり仕事を押し付けて自分は能天気に新婦のドレス選びとか……あんな姫様よりお嬢様の方が絶対に魅力的なのにぃぃぃ!」
「……あの、ふたりとも飲み過ぎでは……」
明日はとうとう聖女の解任式パーティーです。今日は最後の女子会だとレベッカ様が酒盛りを始めたのですが、レベッカ様とアニーが酔っ払ってしまったようでした。ちなみに私は体質なのか多少のお酒では酔えません。でもこの蒸留酒は美味しいですね。
「もう、ロティーナ様ったらもっと怒っていいんですのよ?そういえば明日のパーティーのドレスは決められましたか?陛下からプレゼントとか……」
「あぁ、それなら……1番最初に聖女の正装だと言ってプレゼントされたドレスがありますから。もう聖女を辞めるのに新しいドレスは必要ないですからお断りしました。それに、それを伝えに来てくれたメイドも陛下の機嫌が悪いと教えてくれたので……諸悪の根源はもうすぐいなくなるのでご安心くださいと伝言を頼んでおきました」
私が手元のグラスをイッキに空にしながらそう言うと、レベッカ様は「あらまぁ……。あのヘタレってばどこまでヘタレですの」とため息をつきました。どうしたのでしょうか?
「明日で全て終わります。向こうに帰ったら領地のことで忙しくなるでしょうし、色々と悩んでる暇もなくなると思うんです。……だから、これでいいんです」
「ロティーナ様……。そうですね、そう決められたならもう何も言いませんわ」
「お嬢様……これからもアニーがお側でお支えしますからね!」
こうしてこの国で過ごす最後の夜が更けていったのでした。




