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暁に立つ吸血姫  作者: 澪亜
現在編
54/54

執行官、観光をする3

「さて、次はモールだったか……」


ルフェさんの言葉に、内心首を傾げる。

……モールとは何だろう、と。


けれども、どうせ聞いても「行けば分かる」と返されるのがオチだろうし、諦めて私は黙って付いて行った。

そうして辿り着いた場所は、横に広い建物だった。


「ここがモール。見れば分かると思うが、幾つもの商店が入った建物を、モールって呼んでいる。そっちの建物が生鮮食材とか食材関連の商店が入っていて、こっちが服とか雑貨を扱う商店が入ってる」


中に入れば、多くの人で賑わっている。


「何で、建物の中に商店を集めたんですか?」


「確か……元は市場だったんだよ、この辺り。けど、市場だと雨の日とか大変だろ? それで、建物の中に集めた方が良いって話になったのが始まりだと」


「へえ……」


折角なので、入口近くの店に入ってみる。

その店は、洋服を扱うところだった。


「いらっしゃいませ」


適当に見て回る。

ふと、その中で一着気になって手に取った。

綺麗な藍色のワンピース。

グラデーションになっていて、上は白に近い藍色で裾に近づけば近づく程、濃い藍色に染まっている。


「そちらは、新作です。薄くて柔らかいですが、ホワイトスパイダーの糸を使用しているので丈夫なんですよ。染めたのは新しい技術で……」


「……え、ホワイトスパイダーですか?」


ホワイトスパイダーは、魔物の中でも危険な存在だ。

何せその危険度は、Bランク。

国軍の一部隊で、やっと討伐できるレベルだ。

当然、それだけの強さを誇るホワイトスパイダーの部位や糸は入手が困難。

貴族に人気ということもあり、それらを使った品は非常に高い。


「ええ、そうですよ」


それが何か、と言わんばかりに店員さんは首を傾げていた。


……ああ、なるほど。この店は、高級品を取り扱う店なのかと思って値札を見たところ……別の意味で驚いた。


「え……この値段」


安い。……安過ぎる。

私でも、手が届くぐらいだ。

王都でコレが売られていたら、少なくとも桁が三つは違うだろうに。


「これ、本当にホワイトスパイダーの糸を使っているんですか?」


「え、ええ。勿論。少々価格が高めなのは、最新鋭の染色技術を使用しているからですが……その分、美しいグラデーションとなっています」


高い? いや、逆だろう。

どうして、ホワイトスパイダーを使っているのにこの値段に抑えることができるのだろうか。


そんな疑問を抱えつつ、私は店を離れた。


「……あの、ルフェさん」


店の前で待っていたルフェさんに、声をかける。

彼は面倒くさそうに、顔を上げた。


「この領地では、ホワイトスパイダーがよく出没するのですか?」


「ホワイトスパイダー? ああ、あれ。そうだな。森とエンダークの境あたりによくいるな」


「……ホワイトスパイダーの糸でできた服が置いてあったので、気になったんです」


「ふーん。王都では、珍しいのか?」


「え、ええ。……あの、ちなみに……ホワイトスパイダーは誰が討伐されているのですか?」


「外隊の仕事だ」


「外隊?」


「ウチの領地は、防衛の下に外隊と内隊がある。外隊は、外敵……ようは魔物だな。そいつらと戦う部隊。そんで内隊は領地の治安を取り締まる部隊。大体、六対四ぐらいの人員構成だったっけか。まあ、詳しくはミフネアに聞け」


「え、ええ。……ありがとうございます」


それから私は店を見て回ったけれども、一店目の衝撃が覚め止まず、どんなものを見たのか結局あまり覚えていなかった。


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