2 不思議
遅くなってしまい申し訳ありません。
「ああっもううるさいな‼️」
朝の光が部屋を照らす中、佐野黄泉は苛立つように起き、目覚まし時計を叩いた。
「もう、黄泉ったら、そんな目覚ましぐらいで怒っちゃって、学校遅れるわよ」
「分かっているよ‼️そもそも何で起こしてくれなかったの❔」
「だって黄泉、貴方、昨日私が起こそうとしたら、もう私は子供じゃない、自分でも起きれるよと言ってたじゃない」
「ぐぬぬぬぬぬ、、、」
佐野黄泉はそこで唸った。確かに自分は昨日、そんなことを言ったような、言ってないような。決して大きいとは言えない胸を前に腕を組み、唸りながら黄泉は考える。
「あらまぁ、もうこんな時間、ごめんね黄泉、ママは朝に出勤することになっているから、ご飯は冷凍をチンしてね」
「はーい、分かった。行ってらっしゃい」
黄泉はその場でパジャマの姿で母親を見送り、自分は急いで学校の準備をしようと行動を始めた。
「んーーなんでいつも、私が冷凍をチンしたら加熱ムラがあったりベタベタしたりするのかな❗️」
黄泉は目の前で冷凍食品らしき物をにらみつける。
そこには冷凍パスタや冷凍の唐揚げとは決して違うドス黒い何かがあった。
「ああーー、もういいや朝ごはんは無しにしてもう学校に行こう‼️時間もないし」
解凍された食品をもったいないなと思いながら袋に包みゴミ箱に捨て、黄泉は学校に登校しようと、制服に着替え空腹を訴える腹の虫を無視し玄関を開けた。
黄泉が学校に登校したのは、午前8時15分を回った頃だった。
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ、何でいつもこんな学校は遠いのよ」
汗が額から滴り落ち白い制服がどんどん汗で濡れてゆく。
「あー、もう制服も汗でビチョビチョ、帰ったら洗濯機で洗わないといけないし、本当に時間がないなぁー」
イライラした黄泉が廊下で地団駄を踏むが、周りにいる生徒はいつものことだと無視し、その音は静かに廊下に吸い込まれていった。
だが、そこで一つの足音が黄泉に近づいていった。
「もー、黄泉そんなにイライラしないの。何かあったの?」
「もう、聞いてよ、今日学校ついた時に忘れ物をしてすぐに家に帰って、そっからダッシュで学校に戻ったの。そしたらこんな風に汗をかいてたの」
「なるほど、まぁ、忘れ物もしてこんなに走ったらそりゃ汗も一つや二つもかくよね」
「うるさい、私は頑張った。だから褒めて」
黄泉はもうすぐ高校二年生になろうとしているのに子供のように、目の前にいる一番の親友に頭を突きつけた。
「仕方ないね、分かったよ。黄泉は頑張ったえらい、えらい。だから今日もちゃんと一緒に勉強しようね」
「うー、分かったよ橙子」
黄泉は一番の親友である橙子に頭を撫でられながら、幸福感や安らぎを感じながらも、自分が一番嫌いな勉強の事を言われ芋虫を噛み潰したような顔になった。
黄泉が通っている学校はコーンボーン国際学校という名前であり、立地としては険しい坂の上にある。そのことから地獄の坂道という別名がかつて通っていた卒業生から名付けられており、今もなお共通の話題として出されている。
「そもそも、なんでこんな場所に学校作ったのさ。この学校作った人頭おかしいんじゃないの」
いつの間にか時間は昼になり学園の生徒は家から持ってきた弁当や自動販売機で買った食べ物、さらにネット注文してきた食べ物を食べていた。
「それに毎日学校の坂を上がったり降ったり疲れるし、もう1年近くも通っているのに慣れないよ。うんっ、これ美味しい」
そう言いながら黄泉は自動販売機でなけなしのお金を使い買った卵サンドを頬張っていた。
「まあ、私も同じこと思ったけど、この学校でいうことじゃない思うよ。しかもここ宗教の学校だし、もしシスターに聞かれたら怒られちゃうよ。後、食べるか喋るかどっちかにしなよ、行儀が悪いよ。まぁ、そこが可愛いんだけど、、、」
「ん、何か言った」
「いいや、なんでも」
黄泉は最後に何を言いかけたのかを気になったがが、昼休みも後5分たったら終わり授業の準備をしなくてはいけないため、聞くのをやめた。
「はー、やっと授業終わった。ねぇねぇ、橙子この後一緒にゲーセン行かない?」
「うーん、黄泉。期末まで後一週間だし、そろそろ勉強したほうがいいと思うよ。あっ、それと私は塾があるから、いけない」
空を照らしていた太陽はいつの間にか沈みかけており、夕日になって教室を照らしていた。
照らされている教室の中で黄泉は橙子の返答に不貞腐れて机に突っ伏していた。
「えー、なんでさ、前に一緒に行けるって約束したじゃん。橙子の嘘つき」
「うーん、分かったよ。じゃあ期末の一日前に一緒にゲーセンに行こう。私も時間が空いてるし、それに久しぶりに音ゲーしたいな」
その返答を聞き、黄泉は机に突っ伏した状態から視認できない速度で起き上がり周りの目を無視し、橙子に抱きついた。
「本当‼️絶対だよ‼️地震が起きても、火事が起きても、ゲーセンがテロリストに占拠されても絶対だよ‼️」
「うーん、黄泉、ゲーセンがテロリストに占拠されたらゲームできないよ」
目の前で飛び跳ねてはしゃぐ黄泉を見て、橙子はため息をついたが、その顔はどこか嬉しそうだった。
この光景を見た同じ学生は皆こう思った。
ーー絶対あれ付き合っているだろう。えっ、付き合ってない嘘だー。
夕日は完全に落ち、空は雲ひとつない青空から段々と赤に染まっていく時刻の今、黄泉は下校していた。
橙子はそのまま塾に行くために、途中の坂の道で別れ、黄泉自身もなぜかゲーセンにいく気がなかったからなのか、トボトボと家に帰っている。
「もうすぐ期末テストだし、そろそろ勉強しないと前みたいに成績赤点取るからなー、それに橙子がいないと寂しい」
坂を下りながら黄泉は心の中で思ったつもりが気づいたら口に出てしまい「はっ」と気づいて当たりを見渡すが、誰もいなく。そこには、ただひたすらに恥ずかしさを堪えて自分の家に走って帰る女子高校生がいた。
黄泉は急いで走ったおかげか時計の針が16時00分に刺すまえに商店街につき家に帰るためには必ず通らなければいけない道路を目の前に歩き出そうとしている。
ここの商店街は代々木商店街といい駅近という最高の立地があるので、たくさんの人と観光客が賑わっている。
(いやー、やっと帰れる。ゲーセンは行けなかったし、今日はスイッチをやろうかな。うーん、でももうやりたいゲームもないし、、、、、、そうだっっ‼️二週目をやろう。前は攻略本を見ながらやったし、今回は絶対見ないでやろう)
そう心に誓い黄泉は道路を渡ろうとする。
「えっ、」
だが、渡ろうとした瞬間、間抜けな声が黄泉の口から出た。まるで初めて言葉を発したかのように。
黄泉のすぐ横に何かが現れた。いや、現れたというよりかは、今まで気づかなかったのか、拳ひとつ空くか空かないかの距離に「それ」はいた。
(綺麗だな……)
黄泉は思わず見惚れてしまった。
端正な顔立ちのように見えて目は幼く、身長は黄泉を上回る170cmほど。それ以上に目を引くのがその服装だった。
腰にまで伸びる、癖ひとつない美しい紫色の髪。白を基調とした幻想的で神秘的なドレスを身に纏っている。羽や花びらのような装飾が多く、胸元や肩には白い花を思わせる飾りが施されていた。
この世界の美をすべて集めたと言っても過言ではないほどの容姿で、その年齢に劣らぬ豊かな女性の象徴が自己主張している。
「え、なんで……?」
黄泉が見惚れている間にも、その少女はゆっくりと足を動かし、前に進んでいく。
ただ歩くだけなら問題はなかった。だが、それは信号が青の時の話だ。少女は何を気にする風でもない足取りで、車が激しく行き交う道路へと踏み出していく。
暗く不気味に光る青色の車が道路を猛スピードで走り抜け、少女と接触しようとしたその瞬間――。
「危ないっ!!」
黄泉は本能的に少女のドレスの襟元を掴んで引き寄せると、迫り来る車のボンネットに手を突き、まるで飛び箱を跳ぶかのような動きで車を飛び越えそのまま勢いよく道路の向かい側へと着地する。
かすった手の痛みを無視して、黄泉は少女を抱えたまま、なぜ車に飛び込んだのか、なぜそんな綺麗なドレスを着ているのかを聞こうとした。
「貴方には、私が見えているのか」
静かに語りかけてきた少女の目は、完全に死んでいた。誰も信じず、もう何にも縋りたくない、そんな深い絶望を湛えた目をしている。
黄泉の心臓が激しく鐘を鳴らす。今、この子はなんて言った? 自分の耳は正常なのか。生唾を飲み込み、目の前の少女が何者なのかを確かめようとした、その時。
「私の名前はニヒル。それだけが、私の覚えているただ一つのこと」
「貴方は……一体、何者なんだ?」
やけに耳に心地よく、それでいて冷たく響く声で、ニヒルは黄泉が問いかけるよりも早く、その答えを口にするのだった。
毎週休日に投稿できうように頑張ってみます。




