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3話 狼の哀しき正体

朝陽が窓に差し込む。


女はその光に気付きゆっくり目を開けていく。


青色の綺麗な目がゆっくりと…。


女「っ…ここは…?ぅ…」


女は自身の手に手錠がついてることに気付く。


ターサー「目を覚ましたか…」


女「…あなたは…?」


ターサー「先に聞く…覚えているのか?…最後に

覚えてる事を何か話せ…なんでもいい…」


女「…え?」


ターサー「…覚えてる事だ」


女「っ…えっと…昨日は…宴があって…」


ターサー「…(村が最後の記憶か…)」


女「あっ…それで…友達の男の子が…面白くて…」


女はくすりと笑う…。


到底狼人間として人を襲った者には見えなかった。


ターサー「…そうか…楽しんだようだな…」


女「はい…ところで…ここはどこなんです?」


女は静かに見渡しながら聞いてくる。


ターサー「…サフンの村だ…」


女「えっ…?」


女は窓から見える村の荒れ具合に驚いていた…


女「昨日の宴で誰かやっちゃったの?」


ターサー「それはちがう……話すと長くなる…」


女「これは…なに?」


女は続けて手錠のついた手を上げる


ターサー「…」


ターサーは静かにベットに座り話す。


ターサー「お前の宴の記憶は…数年前の話だ…」


女「…どういう…こと?」


ターサー「……ふぅ…お前…名前は?」


ターサーは一呼吸おいて聞くことにした。


ルフ「ルフ…」


ターサー「ルフ…お前は数年間…行方不明になっていた」


ルフ「…行方…不明?…でも…昨日…私…」


ルフは急に頭を抱えだす…手錠の音がジャラジャラ

と鳴る。


ターサー「…今からもっと辛くなる…だが…聞いてもらう…」


ルフ「…」


ターサー「あんたが…行方不明の間…村は害獣に

襲われた…見た目は…白い人形の狼…聞き覚えは…」


ルフ「…ない…です…」


ターサー「そうだろう…昨日俺達はその狼人間を

見つけた…そして退治したんだ…」


ルフ「…は…はい…」


ターサー「そしたら…その狼人間はみるみる内に

君に変わっていった…いや…治っていった…」


ルフ「っ…」


ルフは手が震えだす…。


ルフ「つまり…私は…」


ターサー「あぁ…君は狼人間を退治するために向かった村の農民を森で全滅させた…その結果…村は

貧困に陥った…」


ルフ「…」


ルフの手はさらに震えていく。


ルフ「私が…やったの…?」


ターサー「…」


ターサーは少し考えベットから立ち上がる。


ターサー「いいや…お前じゃない」


ルフ「え…?」


ターサー「狼とお前は別物だ…君は一人の女性で

狼は狼…ただお前の身体だっただけだ…」


ルフ「でも…」


ターサー「…これは間違いないことだ…さて…

立てるか?」


ルフ「……うん…」


ルフはゆっくりとベットから出ていく…。


ターサー「ほら…」


ルフに靴を差し出して。


ルフ「…」


ルフが靴をゆっくりと履いた後、ルフの手を優しくとってはドアの方へ案内する。


ルフ「…」


ルフの手はまだ震えていた。


ターサー「怖いか…」


ルフ「…ぅ……」


ターサーはドアを開けていく、太陽の光がより強く入っていく、その他にも涼しい風も入り込んでくる。


ルフをゆっくりとドアから出す。


その時だった…


タッタッタッ…


駆けつける足音が聞こえる…。


子供達がルフに駆け寄っては足元に抱きつく。


子供「ルフ姉!」


ルフ「わっ…」


子供「いなくなっちゃったのかと思った…」


ルフ「…ヤン…サン…ラン…」


ヤン「どうしていなかったの…?」


サン「みんな心配してたんだよ…?」


ラン「…もういなくならないで…」


ルフ「…ごめんね…」


ルフはゆっくりとかがんで子供達の頭を撫でる。


ヤン「えへへ…」


ラン「ねぇ…ルフ姉…サフンさんが会いたがってたよ!一緒に行こ?」


ルフ「うん…分かった…」


ルフはランに笑顔を見せてゆっくりと立ち上がる。


ターサー「三人とも…少し先にサフンの元に行っててくれ…こっちは話しながら行く…」


サン「分かった!行こーぜ!競争な!」


ヤン「よっしゃぁ!」


ラン「あ!待ってよぉ!」


三人は元気よくサフンの家に走っていく。


ターサー「…心配するな…あのこと(狼人間)は言ってない…」


ルフ「…ありがとうございます…」


そうして二人はゆっくり歩きながら話を続ける。


ルフ「ところで…お名前は…なんというんですか?」


ターサー「ターサー…」


ルフ「ターサー…さん…」


ターサー「それで…体調は平気か?随分しっかり

歩けているな…」


ルフ「はい…まだ…昨日が宴の日としか…思えてなくて…だからか…普通なんです…」


ターサー「とりあえず…俺の話は信じてくれたんだな…」


ルフ「……はい…」


ターサーは足を止める。


ターサー「疑う訳じゃないが…前に自覚のある何かをしてしまった事があるのか?」


ルフ「…」


ルフは俯きゆっくりと振り返る。


ルフ「ええ…実は…一回…宴の日の数日前の事でした…鏡を見ると…目が…赤くて…爪が長くて…

急に何か抑えれなくて…気付いたら…ベットに大きな引っ掻き跡を…。」


ターサー「そうか…」


ルフ「すごく怖くて…」


ターサー「分かるさ…自分を見失うのはいつだって怖い…」


ルフ「……ターサーさん…私はどうなるんですか?処刑…されちゃうんですか?」


ターサー「…いや…俺がそうはさせない…」


ルフ「…」


ルフは再び俯き。


ルフ「…何故私を助けてくれるんですか?」


ターサー「さぁな…美人…だから?」


ターサーは笑いながら言う。


ルフ「っ…ふふ…そうですか…」


そうして二人はサフンの家に向かって再び歩き始める。


続く

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