4話 愛らしい紙芝居
4話 愛らしい紙芝居
ターサーがルフと一緒にサフンの家まで歩いていて
あと少しの時だった…。
???「ルフ…?」
ルフ「っ…」
ルフは少し肩をビクッっとさせては静止する。
心なしか頬が赤い。
ターサー「…?」
サーカ「俺だよ…サーカだ!」
サーカを名乗る男は黒い農民のシャツにオレンジの
農民のズボンを履いていた。
ルフ「サーカ…くん…」
ルフは頬を赤らめたまま振り返りチラチラと見るが
結局俯いてしまう…。
ターサー「…(ほ~う?)」
ターサーはルフの反応から察すると少しニヤリとしながら腕を組みルフの様子を見続ける。
サーカ「何年も…どこにいたんだよ…ルフ…心配してたんだぞ…」
サーカは髪が赤毛で長く後ろは縛っている、鋭い目だが瞳は優しくオレンジ色だった。
ルフ「え…えぇっと…」
ルフは口をモゴモゴさせながらなにも言えずにいた。
ターサー「あー…サーカだったか…?今は…
サフンの家にこいつを連れていかなければならなくてな…悪いが後で良いか?」
サーカ「お…おう…あ…まさか…あんたがルフを
助けてくれたのか?」
ターサー「……そんな感じだ…ほら…行くぞ…」
ずっと下を向いて頬を赤らめているルフの手を引いてサフンの家の道を歩いていく。
ターサー「…好きなんだな?」
ターサーは少し茶化すような声で聞いてみた。
ルフ「っ…そ…そそっ…そんなこと…」
ターサー「分かりやすい」
ルフ「……黙秘します…」
ターサー「なんだそれは」
ターサーは少し笑いながら歩き、やがて…サフンの家の前に着く。
サフンの玄関前に着いてはノックを三回…。
ターサー「サフン、俺だ」
ドアの奥から小さく足音と杖をつく音が聴こえ
ターサーは二歩扉から離れる。
木のドアのきしむ音が聴こえながら開いた先には
サフンの他にガルボもいた、まさに今さっきまで
話していたかのような雰囲気がある。
ターサー「…ガルボ…」
ガルボ「よう…ターサー…それと…ルフ…」
ルフ「…サフンさん…ガルボさん…」
サフン「ルフ…あがれ…」
ルフ「はい…」
ルフはゆっくりとサフンとガルボについていく…
ターサーも一番後ろにいながらゆっくりと歩いていく。
やがて、いつもの綺麗な部屋に通されてはサフンとガルボを前に、ルフと同じソファーに座る。
ターサー「ルフ…この二人はあれを知っている…
気にせず話せ…とはいっても…記憶はないようだが…」
ガルボ「記憶がない?」
ターサー「あぁ…ここに来る前に少し話した…
ルフには完全に記憶がなかった…狼人間どころか…ここ数年の記憶がない…最後の記憶は…ルフが行方不明直前の記憶だ。」
ガルボ「…数年の記憶がない…か…」
ガルボは腕を組み深く考える仕草をする。
サフン「…ルフ…おぬしには…呪いがあったのかもしれぬな…」
ガルボが割り込むように。
ガルボ「呪いかどうかは良い…ただ…村のみんなも知ったらこう言うだろうが…あんまり気にするな…」
ルフ「…ターサーさんにもそう言われました…ですが……知らない内に村の人を殺めたんです…」
ルフは自身の手を広げ見つめる。
その手には一粒の涙が落ちる。
ルフ「…みんな家族がいたのに…」
ルフは声を震わせ、肩を震わせ、さらに涙が落ちていく。
サフン「…」
サフンは静かにルフの話を聞いていた…が…
一つ咳払いをして話し始める。
サフン「ルフよ…この村の宝物よ…ワシは許す…
お主は…いなくなる前から…村の皆に好かれていたじゃろう…殺しは本望じゃないことなど…すぐ分かるわい…」
ルフ「…でも…」
ターサー「ルフ…サフンの言う通りだ……お前が
目覚めてから…あの部屋を出たとき…子供達が
駆け寄ってきたな…その時すぐに気付いた……
お前は大事にされていた…ってな…」
ルフ「…」
ルフはただ俯き涙を溢し続ける。
ガルボ「…ルフ…害獣を退治しようと…向かった
農民のみんなは…お前を見つけようともしていた…
結果…見つかって無事に帰ったんだ…きっと報われる…」
ルフ「…なんで…どうして私だけの為に…」
ターサー「………。人間は一人の人間を生かす為に…
みんなで命を懸ける時がある…その価値があるからだ…まだ生き続けるなら、奴らは無駄死にじゃない…そいつらが残した結果が今なんだ」
サフン「…あぁ…気にするでない…ルフ…村の皆に話すつもりはない…これまで通り…ここで過ごしていくと良い…。」
ガルボ「……さっ…話はここまでだ…ルフ…お前が好きなお茶を淹れてやろう…少し待っててくれ」
ルフ「…っ…あ…ありがとうございます…」
ルフはまだ俯き続けていたが、心は先程より
軽くなっているのを見て感じ取れた。
そうして時間は過ぎていき夕方…。
ターサーは部屋で休んでから外に出る、ドアを開けた瞬間的夕陽の光が目に差し込む。
ターサーは少し目を細めながら村の声のする方へ
行く。
村のちょっとした広場に子供達が集まっていた。
広場は柵で囲まれていて、柵は木に囲まれていた。
子供達が集まり見ている先は座りながら紙芝居を
見せているルフだった。
ルフは優しい口調でゆっくりと子供達に紙芝居を
読み上げていた。
ルフ「…王子様には…昔…愛しい愛しい愛人がいたのです…」
ターサー「…」
~回想~
???「ターサー?ターサー!」
茶髪のポニーテールを揺らしていターサーを起こすオレンジ色の瞳の女性…。
ターサー「…なんだっ?…っ…メユ…」
メユ「もう…常にボーッとしてる?」
ターサー「すまない…なんの用だった?」
メユ「なんの用って…」
メユは少し頬を赤らめながら
メユ「わ…渡したいもの…みたいな…」
ターサー「渡したいもの…?」
メユ「はい…」
ターサーはメユにヘアクリップのような髪を留める
物を渡される。
ターサー「これは…?」
渡された物は銀色の少し長い髪留め…開きやすく
頑丈そうにしっかり作られている。
メユ「ターサーって髪を切った方が良いって言ってるのに全然切らないから…それ使って…」
ターサー「髪…?これはまだ長くなんか…」
メユ「い…良いから着けてよ…ほら…髪の真ん中とか…」
ターサー「あ…あぁ…」
ターサーは髪の真ん中をオールバックにししっかり留める。
ターサー「これで良いか?」
メユ「…もう少し…」
メユはターサーの髪に手を伸ばし、髪をサイドに垂れるようにする。
そしてターサーの肩に手を置いて顔全体を見る。
メユ「うんっ!良い感じ…すごく似合ってる…」
ターサー「そうか?」
メユ「うんっ!」
~
ルフ「王子様は……おしまい」
昔こっちの国に来て間もない時の記憶を思い出していたらルフの紙芝居は終わりを迎えた。
子供「わぁ…やっぱりルフ姉の紙芝居が一番!」
子供達は全員ワイワイと紙芝居を終えたルフを囲み
笑いあっていた。
ターサー「…」
続く。




