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多分……、宇宙もの……。  作者: わだつみ
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52.大地に立ち続ける者達

「あ~ばばぁ~、づがれだよ~」


「マスター。5日間、毎日同じセリフを言ってて良く飽きませんね」


「好きで言っている訳じゃねぇー」


「ならば、ラウタサロ大尉に言って、少し減らしてもらえばいいではないですか」


「それは駄目。やると決めたから」


「ならばグジグジ言わないで下さい。聞かされる私の身になって下さい」


「くぅー、俺の機嫌悪いからって、AIが俺を虐めるー」


「私のセリフをパクらないで下さい」

毎晩俺は、ハッタと生産性の無い似たようなセリフを繰り返していた。

 無茶苦茶なハードスケージュールなんて、どこかで体調不良を言い訳にサボってやろうと思っていたのだが、二日目にンジェグ海賊艦隊戦・戦没者慰霊式典に出席して気が変わった。



 滞在二日目のことである。朝から俺は、軍需産業関係者と会っていた。

 総統が、気前よく光子魚雷とカウンターミサイルをくれると言ったのは、当初から軍需産業会社に供出させるつもりだったらしい。

 軍需産業側からしても、『総旗艦フラデツ・クラーロヴェーに装備されていると宣伝出来るので、幾らでも差し上げますからドンドンぶっ放して下さい」としか取れない物騒なお言葉をいただいた。

 この言葉に一番喜んだのは、ハッタだ。『マスター、光子魚雷をもらったら、テストの為にンジェグのドブ鼠を探しに行きましょう』と殺(や)る気マンマンである。勿論、俺はそんな殺伐とした宇宙探検旅行など嫌だ。

 しかし軍需産業の皆さんは、今回に限らず必要な時は何本でも光子魚雷とカウンターミサイルをくれると言うので、使う予定は無いが感謝の言葉を並べて和やかに会談を行った。



 そして、昼食後はンジェグ海賊艦隊戦・戦没者慰霊式典に出席した。


 喪服など用意していない俺の為に、ラウタサロ大尉が黒を基調とした弔意用の礼装軍服を誂えてくれており、俄か提督の俺もそれなりの姿で参列した。しかし、この礼装軍服はアスピヴァーラ国軍と同じデザインなのだが、名誉提督号を貰った俺もアスピヴァーラ軍人扱いなのだろうか。

 まぁ、スーツ姿で式典に出席するよりかは良かったけどね。なにせ、オーダーメイドスーツはお高いだけあって、なかなかにオシャレに作られていますから、式典に相応しくないのは一目瞭然。


 式典は滞りなく終了した直後、戦没者遺族側から会談を申し込まれた。

 ついに来るべきものが来たなと覚悟を決め、『どんな恨み言でも罵倒でも平然と受けてやるぜ』と意気込み会談場所に赴いた俺は、散々に打ちのめされるのだった。

 遺族の皆さんは、俺の口からンジェグ海賊艦隊戦の詳細を涙を流しながら聞き、口々に俺に感謝と称賛の言葉を送ってくれたからだ。



「提督のお蔭で、娘の死が無駄死になりませんでした。ありがとうございます」


「最後の戦いが、提督の指揮する総旗艦フラデツ・クラーロヴェー指揮下だった事は、妹にとって名誉なことです。ありかとうございます」


「従妹は亡くなりましたが、従妹の大切な人は、提督が駆け付けてくれたお蔭で助かりました。ありがとうございます」


「提督が、敵の追撃よりも行方不明者捜索を優先してくれたお蔭で、私の愛しい人が私の元へ帰ってきてくれました。ありがとうございます」

遺族の皆さんの言葉は、けっして俺を傷付ける為の当て擦りや嫌味などではない。何故なら皆さんの真摯な眼差しは、俺の瞳を捉えて離さないからだ。その瞳が、俺の心を徐々に抉っていった。そして、トドメとなるのが……、


「母は、見知らぬ誰かの為に戦って死にました。次は、見知らぬ誰かが私の為に戦って死ぬかもしれません。そして、いずれ私も見知らぬ誰かの為に戦って死ぬかもしれません。そうやってアスピヴァーラに生きる者達は、己の尊厳を守って、大地に立ち続けてきたのです。

 提督のお蔭で、死を目前にした多く者達の命が助かりました。助かった者の中には、将来私と共に戦場に立つ者もいるでしょう。未来の戦友を助けていただき、ありがとうございます」


 これには、参った。

 平和ボケしている日本人の俺が貧相な想像力で、小説やアニメのように軽々と遺族達から『何故、早く助けに行ってくれなかった。そうすれば、助かったかもしれないのに』と非難されると思って片意地を張った態度でいたのだが、彼女たちの覚悟は俺の想像力の上を遥かに飛び越していた。


 アスピヴァーラに生を受けた彼女達は、自らの生活を守る為、自らの生命を守る為、自らの財産を守る為、自らの尊厳を守る為、それらを犯す者達と戦う覚悟をもって生きている。

 だからこそ、亡くなった人々の数よりも助かった人々の数に重きをおき、亡くなられた方々を無駄死にさせぬよう戦い抜く決意を固める。


 アスピヴァーラ国が巨大な軍事力を背景に、自国の利益の為に他国へ干渉するような国家であれば、『何を綺麗事を言ってやがる』と思っただろうが、彼女達は自国を守ることに専念している。

 過去、アスピヴァーラ国が他国に戦いを挑んだのは、先に仕掛けられたか、連合の要請によって参戦したかのどちらかだけだ。


 そんなアスピヴァーラの人々の覚悟の滲んだ言葉の数々が、覚悟も無く戦場へ赴き、覚悟も無く戦い、何の功績も無いのに称えられている俺の心の中の何かを抉った。

 

 以前、俺が平和が一番と言った時に『そうですね。完全に同意します。しかし、その為には備えが必要です。そして、その為の総旗艦フラデツ・クラーロヴェーです』とハッタが言った。そして、備えとは、武力の有無だけでなく、心の覚悟と武力を扱う者の理性だと今更ながらに知った。

 勿論、戦いを避ける為の努力は欠かしてはならない。最後の瞬間まで、話し合いによる解決を努力するべきだ。しかし戦いを厭わない国家や集団がある以上は、備えが必要だ。それを、愛する者を亡くしたばかりの彼女達は、俺に教えてくれている。


 だから、俺は決めたのだ。アスピヴァーラ滞在中だけでも、彼女達が望む提督でいようと。彼女達が、未来に希望が持てる提督でいようと。俄か提督の俺では、いずれボロが出るだろうが、今だけでも頑張ると決めたのだ。



 そして、俺は馬車馬の如くに働かされ、今日も『退役軍人のグループホーム』で40代ぐらいにしか見えないご老人達と談笑し、その他各所巡りをした挙句に『オティーリエ・アンドルリーク王女殿下の功績を称えるファン会』とやらを訪問して、安来節をヒップホップ調で踊る謎のダンスを見せられてきた。


 感想を求められたので、

「私の先祖であるオティーリエ・アンドルリーク王女殿下を慕う皆様の思いを、これ以上なく感じ取りました」

と言い逃れた。



「まぁ、まぁ、マスター。そんな多忙な生活も、明日で終わりですよ。明後日には、アスピヴァーラ国を立ちシュクヴォル王国へ向かうのですから、もうひと頑張りですよ。

それに明日は、幼年学校の訪問とリンネ大尉の母親との面談。それにナノマシーンの更新だけですから、そんなに忙しくないですよ」


「そうだね。明日は、チビッ子たちとパルヴィ達に会うだけだから気が楽か」

地球で、幼年学校と言えば、幼い頃から軍隊生活を身に着ける為の寄宿学校のことだが、アスピヴァーラに於いては小学校を意味する。

 ただ、国民皆兵制を執っているアスピヴァーラは、幼年学校のカリキュラムに軍事教練がある。そして幼い頃から、アスピヴァーラの置かれている現実を教え、立ち向かう覚悟を育てている。



 滞在三日目の事である、パルヴィが連絡を取ってきた。何度か連絡をくれたようだが、俺は多忙な為にラウタサロ大尉が断っていたようだ。それでハッタ経由で連絡をしてきたパルヴィとは、通信であったが再会できた。

 パルヴィの要件は、『母が経営しているペール醸造会社の経営が上手くいってないので、新商品に拓留の名を使わせて欲しいと頼んでくれと母に泣きつかれたので、良ければ使わせてくれないだろうか』という内容だった。

 まぁ、母親とはいえ人の為に苦労するパルヴィに『相変わらず、人の世話をしてるのね。勿論オッケェーさ。パルヴィの願いを断ったりしないよ』と快諾し、ラウタサロ大尉の眉を吊り上らせてしまった。

 それと『あまり特定の人物を優遇されますと、提督に取り入ろうとする者が増え揉め事が起きますよ』との、有り難い小言をいただいた。なんせ、ラウタサロ大尉は、個人的に俺との接触を計った者達を全てシャットアウトしてくれていたのだから。それは勿論の事、お馬鹿な自由人が原因なのだけども。 


 あと、パルヴィに『亜麻色の髪の子とは、上手くいってる?』と気楽に聞いてしまったら、『あの子は私が死んだと思って、直ぐに次の人を見付けていたわ』と暗黒のオーラがスクリーン超しにも判るぐらいに出ていたので、慰めて通信を終了した。



「アスピヴァーラ国って、真面目な方ほど苦労する国なんですね。私のアーカイブにしっかりと記録しておきました」


「それを、お前が言うな。貴賓室の修復、昼夜を問わず交代で頑張っているのに、まだ終わらないと聞いているぞ。何をやったんだ」


「ほんのちょっとだけ、元より豪華にしただけですよ。でも、予算内ですからオッケェーが出ましたよ」


「はぁ~」

予算ギリギリまで使ったと聞いたぞ。本当に溜息しかでないよ。アスピヴァーラの皆さん、ハッタを止められずにすみませんでした。




そんなこんなで俺は、色々と考えさせられる事の多いアスピヴァーラ滞在を頑張っていた。

ヒップホップ調の安来節。どなたか、ユーチューブで「踊ってみた」をして下さい。

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[良い点] やべえ!シリアスだ!! 逃げろおおお!
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