拝啓 天馬 見て、あの空を自由に飛ぶ鳥たちをⅣ
ダイヤモンドを粉砕し、髪に絡めているのかと疑うほどの輝く銀の髪。
その髪は短く、肩ほどまでしかないのに、存在感はクリスティーナの黄金の髪にも匹敵する。
顎から頬までのフェイスラインも、配置された高めの鼻梁も、その薄い唇もまるで異才の芸術家から生み出された石像のようだ。
だが、何より驚いたのは、その瞳だった。王国中を探しても、めったにお目にかかれないだろう紫水晶の瞳。
息をのむような美しさに、ソフィーは我が目を疑い、あんぐりと口を開いたまま硬直してしまった。
ここまで美しければ、普通もっと中性的に見えるものではないのだろうか。彼は美しいが、しかし女性には見えない。美しい顔に似合った体格はスラリとして、ジェラルドと同じくらいの背丈があった。
男だと再認識した瞬間、祐の思考がつい吠えてしまう。
(神話級美形なんてみんな爆ぜろ! 爆ぜてしまえ!!)
ぐぬぬぬ…と、手渡された本を強く握りしめる。本に当たるのはいけないと分かっていても、つい力が入ってしまうのだ。
神話級美形は、ソフィーに本を手渡すと、スッとその場から去った。
「…………生徒?」
今の時間は誰もいないはずでは? と疑問に思っていると、彼に、最後まで礼を伝えていないことに気づく。
爆ぜてしまえばいいと願うほどの美形でも、礼は言わねばなるまいと辺りを見渡すが、そびえ立つように設置された本棚しか見えない。
「…やだ、幽霊じゃないわよね?」
相手が幽霊なら、美形でも許せそうだ。今度垣間見ることがあれば、花でも手向けよう。
勝手に幽霊だと断定し、ソフィーは書庫に設置されていた簡素な椅子に座る。テーブルも簡素だが、本を読むのに華美な必要はない。
テーブルに鞄を置き、中からいつでもメモできるようノートを取り出す。
書庫の中は薄暗かったが、高窓があるお蔭で最低限の光は差していた。その光を頼りに、本を開く。
『神の山、神の樹』は、神話の物語ではなかった。実際に存在する山の話だ。
その山は、海に近いこともあり、湿った風が山にあたり大量の雨がふりそそぐそうだ。降水量は平地の数倍。別名、雨の山とも言われていると記述されていた。
(なら、どうしてタイトルは神の山なのかしら?)
読み進めると、理由はすぐに分かった。
山には、樹齢数千年の大木が生えており、その集落の者たちはこれを神木と呼んでいるのだ。
(日本で言うところの、屋久杉ね…)
神木がスギであるかどうかは分からないが、抗菌性、耐久性が強いのは同じのようだ。この木でできた水車は、数十年腐ることなく回り続けているらしい。
「腐りにくいなら、下水道処理施設にも使えるかしら?」
前世と違って、プラスチックなどは無い。使えるのは鉄、陶器、レンガくらいだ。
時間があればプラスチックを作り、プラスチック管が作れるのだが、そこまで手を伸ばせば下水道施設の方が遅れてしまう。ロレンツオからも、この知識はどこからもたらされたものなのか疑念を抱かれそうだ。
(フェリオからは、まず小規模の施設を建設して、軌道に乗れば医科学研究所が指揮と監督を請け負うと言われたけれど…)
この国の最先端の研究員で構成された医科学研究所の銀星たちは優秀だ。原理とシステムさえ理解してもらえれば、次々と新しい施設を作ってくれるだろう。一般的には、まだまだ普及しているとは言えないが、医科学研究所には発電機の試作品があるとロレンツオから聞いている。機械装置と電気を駆使すれば、処理速度は格段に上がる。そう考えれば未来は明るく感じた。
しかし、現状はまだ無理だ。どう考えても前世のような機器もなければ、それを支える大量の電力も無い。ロレンツオには、将来的にはこういった装置が欲しいと提案するつもりだが、すぐにできるものではない。
(やっぱり当初の計画通り、最初の施設についてはあるもので作るしかないわよね)
フェリオが拠点を“王の剣”に設けたのは、元々長い期間を想定しておらず、彼がまず考えている期間は約三年だった。三年で小規模な下水処理施設を作り上げ、様子を見ながら国を挙げての一大事業へと拡大する。
そしてソフィーはその三年の間に、医科学研究所へ拠点を移してもロレンツオの名に負けないほどの名声を培わなくてはならない。
長雨の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。毎度格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
(´・ω・`)アツイ…
暑いです。この暑さと湿気の中、もう生きているだけでエライ、生きているだけで百点満点だと思いながら日々を過ごしています。
皆さまもお体に気をつけてお過ごしください。
もう生きているだけで満点の季節ですから(´・ω・`)




