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魔女祭り34 エルヴィン登場

(うん?)


 ソティリオはその声のした方を振り向くや否やセシリアの腕を掴んでいた左手を離し慌てて右手に持っていた剣の柄を自分の顔の前で握る。


『ガキッイッン』


 凄まじい剣戟を両手で握る剣で辛うじて防いだソティリオの顔の前にニヤリと笑う男の顔がありその男の口が憎々しげに開かれる。


「よく、俺の一撃を防いだな、だが!」


 抜き打ちを仕掛けた男の空いている左拳がソティリオの左顎にめり込まされ、たまらずソティリオは殴り倒される。


「グフッ・・・」


 いきなり斬り付けられて更に殴り倒されたソティリオは自分を傲然と見下ろす金髪の男を凝視する。


(何者ですか、この男は・・・)



「お怪我はないですか、セシリア殿」


 左腕で立ち竦むセシリアをそっと抱くようにソティリオから庇いながらエルヴィンは彼女に尋ねる。


「エ、エルヴィン様なのですか・・・?」


「はい、私です、エルヴィンですよ」


「あ、あああ・・・」


 エルヴィンの声に安心したのかむせび泣きながら自分の顔をエルヴィンの胸に押し付けるセシリア・・・。


「セシリア殿、もう大丈夫ですから安心してください。私としてはもう少しこのままの状況を・・・とも思うのですが周りの方の視線も気になりますので、あははは」


「あっ、す すみませんエルヴィン様、私としたら・・・」


「いえ、目が不自由なセシリア殿です状況がわからず本当に怖かったでしょうね、にも拘わらず毅然とした態度・・・さすが聖女様ですね尊敬します」


「そ そんな・・・」


「セシリア殿、早速で申し訳ありませんが治療をお願いしたいのですが、アルフィオ殿とヴィオラ殿の」


「そ そうでした!」


「フィーネ殿」


「はい!」


 エルヴィンは成すすべもなく立っていたフィーネを呼ぶと


「セシリア殿をお二人のもとへお願いできますか?」


「は はい、セシリア様こちらです」


 セシリアの手を引きながら重傷とみられるアルフィオのもとへ向かうフィーネ達二人の姿を確認したエルヴィンは視線を戻す。そこには殴られた顎をさすりながら立ち上がったソティリオの姿があった。


「いやはや、他人に殴られるなどという事は、いつ以来でしょうか?」


「そうか、なんならもう二、三発でももらっとくかい」


「フッフッフ、面白いですねあなたは。不意を衝かれたとは言え私を殴り倒すなどとは賞賛に値します」


「お褒めにあずかり光栄だが、お前には聞きたいことがあるからここからは無事に戻れると思うなよ」


「ほお、私を捕らえるということですか、ホト殿の魔法でも私は捕らえれないのをあなたはご存知ないと?」


「いや、知っている。だから」


「だから?」


「腕づくということだ」


「クックック、面白い!腕づくで私を捕らえると」


「ああ」


 エルヴィンはそう言うとソティリオの前に自然に対峙すると


「ヘル爺、悪いがこの会場内だけでも魔法の無力化を頼む、こいつに魔法で逃げられるとやっかいだからな」


「うむ・・・」


 ホトはエルヴィンにそう頼まれると躊躇なく魔法の無力化の呪文を唱え始める。


 それを見たソティリオはあきれたように


「あなたは、正気ですか?この室内で最強の戦闘能力を持つホト殿は魔術師なんですよ、その戦闘能力をも無効化させてしまうのを・・・」


 ソティリオは言葉を途中で止める、前にいるエルヴィンが闘気を上げ剣を抜いたためである。


「ふむ、本気のようですね・・・私に剣の稽古を所望したことを後悔させて上げましょう」






(す 凄い・・・)


 ヒリヒリ痛む喉を左手で押さえながら神官戦士のヴィオラは目前で行われている戦いに目を奪われている。


(あの男・・・こんなにも強かったのか・・・)


 自分や同僚のアルフィオを苦もなく一瞬で倒したソティリオという男とあの傭兵は互角に戦っているのだ。


(打ち下ろす剣の速さだけでなく受けに回る時の体捌き・・・目で追うのがやっとだなんて・・・)


 無造作に相手の間合いに入ったエルヴィンの突きから始まったソティリオとの斬り合いはすでに何十合にも及んでいるのだがその光景を見ている広間の人間達からは一粒も言葉も出ない、聞こえるのは剣戟の音だけだ・・・。


(ああ・・・きれい・・・。とても、とっても凛々しい  お姿ですわ・・・)


 セシリアの付き人であるフィーネはソティリオと戦うエルヴィンの姿に見惚れている・・・。

 フィーネは剣士ではないのでエルヴィンの技量の高さを細かくは把握できてはいないのだろうが戦っているエルヴィンの姿を見てただ単純に感心しているのだ。あの突然の乱入者であるソティリオが目の前で近衛騎士達や彼女の同僚であるアルフィオやヴィオラを赤子扱いで倒してしまう光景を見て湧き上がる恐怖の念のためにその場で立ちすくんでいた彼女を我に返したのがエルヴィンから掛けられた声だった。


(ああ・・・素敵です。かっこいい・・・)


 エルヴィンの雄姿に目を奪われていたフィーネにそっと小声で彼女の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「フィーネ、フィーネ、アルフィオの状態はどうなってますか?」


「あ、はいセシリア様」


 そこには、治癒魔法を行使したためであろうか顔を上気させたセシリアが目を閉じたまま自分に問い掛けている。

 フィーネは慌てて床に横たわる巨体のアルフィオの状態を素早く確認する。アルフィオは顔色はまだ悪いが意識は戻ったようだ。ソティリオに刺された腹部の傷からも出血は止まっておりその傷跡もほぼ元通りになっている。


「アルフィオ様は意識が戻られています。傷の箇所も塞がって今は出血も止まっています。さすがですねセシリア様、もう大丈夫かと見受けれます」


「そうですか、それは良かったです」


 ふうーと息を吐き出し額ににじみ出ていた汗をそっと右手の裾で拭うセシリアに


「セシリア様、ヴィオラ様も治療をお願いできますか」


「ええ、ヴィオラは大丈夫そうですか」


「ヴィオラ様はあの男に剣の柄の部分で喉を突かれて苦しそうです」


「それは、いけませんね!ヴィオラをこちらに」


 フィーネは喉を押さえて苦しそうにしているヴィオラをセシリアの傍らに連れてくるとセシリアの右手を取り患部であるヴィオラの喉まで誘う。


「ヴィオラ、私を守ってくれてありがとう。今、治療しますからね」


「・・・」


 声の出ないヴィオラは黙って頭を下げる。


 フィーネは治療を始めた二人を確認するとまた、広間で戦うエルヴィンの姿を見つめる。





『ギィッリ、キーン』


 強烈な斬戟をぎりぎりのところで剣で流しながら反撃の一撃を返すエルヴィンは内心で焦っていた。


(ソティリオとか言ったなこいつ・・・。強い・・・)


 平然とした表情とは裏腹に自分の体に付いた傷跡・・・肩口、腕、手首と軽症だが確実に剣を入れられて出血しているのが高くなっている自分の心臓の音と共に痛みを伝えてくるのだ。


(こんなに強いって分かっていれば、さっきヘル爺と一緒に魔法戦で片付けたほうがよかったか・・・?いや、魔法戦になればこの場に居合わせた人達も巻き込んで下手をすれば陛下達の身にも危険が及んだかもしれないからな・・・、それにこいつがどれくらいの魔術師かどうかもわからん・・・、えーい!!)


「セイヤァァァッ!!!」


 気合と共にエルヴィンは大きく踏み込むとソティリオの顔面に強烈な袈裟切りを叩き込むがソティリオは身をかわすのが不可能と咄嗟に判断したのか両手に持った剣で受け止める。鍔迫り合いを始めた二人の力が空気を通して感じられるような錯覚に陥る。


「す 凄い・・・凄すぎる・・・」


 セシリアにヒール(治癒魔法)を掛けてもらって声が出るようになったヴィオラは呟くように小声で先程と同じ感想を漏らした。


「え?何が、そんなに凄いのですか?」


 呟いたヴィオラの小声に反応するように小首をかしげてセシリアは尋ねる。


「あの男です、い いやエルヴィン殿のことです」


 急に慌てて言い直すヴィオラの言葉に気になったセシリアだが


「エルヴィン様は、そんなに凄いのですか?」


「はい、エルヴィン殿の剣の腕は相当なものです。私やアルフィオ、更にその前では近衛騎士5人を赤子の手をひねる様に打ち倒したあの不埒者ともう何十合以上も剣を重ねています。あの不埒者も相当な腕前ですがエルヴィン殿の技量はそれに負けておりません。私は同僚の神官戦死達やイタリア王国の騎士、ローマ聖教国騎士達とも稽古や訓練でかなり手合わせをしてきましたがあのエルヴィン殿のような実力者は初めてです」


「それに、戦う姿がとっても美しくて・・・素敵ですよセシリア様」


 不意に口を挟んできたフィーネに少し驚いたヴィオラだったが同意するように


「わ 私もそう思います・・・」


「まあ、ヴィオラまでも!!」


「はい、ただの一介の傭兵と見ていた自分の見識の低さを自嘲しています・・・」


「そうですか」


(こ こんなに目が見えないということが悔しいと思うのは・・・いつ以来でしょうか・・・)


 フィーネとヴィオラが語るエルヴィンの姿をうまく想像できない自分を悲しく思うセシリアであった。





「えーいっ、しつこいですね」


 ソティリオは鍔迫り合いに何度も持ち込もうとするエルヴィンを無理やり両腕に力を入れて跳ね飛ばす。


「どんな目的かは知りませんが、鍔迫り合いからの返し技ごときでは私は斬れませんよ」


「目的?いや、ただお前の顔をもう2、3発殴ってやろうと思ってな」


「な?   あなたは馬鹿ですか?そんなことをすれば体力が消耗されるだけではないですか」


「あいにく俺は全然平気だがな」


「とてもそのようには見えませんが・・・」


 ソティリオが言うようにエルヴィンは、はたから見て分かるように肩で息をし始めていた。


「まあ、よいでしょう。あなたが強いのは十分にわかりましたのでここは敬意を表してそろそろ終わりにしてあげましょう」


 ソティリオは油断なく後ろ足でエルヴィンとの間合いを徐々に広げる。


 エルヴィンは間合いを取ろうとするソティリオを注意深く見ながら呟く。


(こちらもあまり長引かせる訳にはいかないな・・・。よし、誘ってみるか)


「終わりにしたいのは、お前の方だろ。肩で息をしてるぜ」


「あなた程ではありませんよ」


「ほう、余裕を見せているわりにはお前の脇腹から出ている血の量はただ事じゃないと見えるが」


「な、なんですと!」


 ソティリオは慌てて脇腹に手をやるとヌルリとした感覚が・・・


「こ これは・・・」


「俺が、何度も鍔迫り合いに持ち込む意味を理解したか?嫌がるお前に何度も同じ仕掛けをして油断させたんだよ、最後に俺を振り解こうとした時に隙ができたな・・・」


「ん?あの時・・・」


 ソティリオは鍔迫り合いからエルヴィンを無理やり離そうとした瞬間エルヴィンの剣が左脇に薙いだのを思い出した。


「クックック、ハッハッハ!!!あなた、面白い、面白すぎです。一介の傭兵のようなあなたごときに不覚を取るとは!!!」


 ソティリオは、一人哄笑を上げていたがそれを止めると両手を広げて上を見上げる。


「カアー!!!」


 突然、気合のためか大声を上げると剣を胸の前に構える。


「殺して差し上げましょう」


 エルヴィンは、殺気を異常にに高めたソティリオを見て


(誘いに乗ったか・・・)


 エルヴィンもまた、間合いを広げるように後ろへ少し下がると右手に持った剣をゆっくりと鞘に収めた。 そして無言で、スゥーと右足を伸ばし腰を沈めると左足の太腿の付け根あたりに鞘のままの剣の柄を左手でそなえ、右手は剣の柄を鍔元付近で軽く握り呼吸を整える。


 ソティリオはエルヴィンの構えに一瞬、と惑う。


(かわった構えですね・・・、あの構えではこちらは突きの攻撃はしずらい・・・ならば!)


 トンっと左足で床を鳴らすと脱兎のごとく速さで間合いを詰めエルヴィンに襲いかかった。






 




















エルヴィンさんとソティリオとの戦いの行方はどうなる???・・・。


とても気になる方には申し訳ありませんが、来週この時間までお待ちを・・・。


G・Wも、今日で終わりですね、皆さんは良い思い出ができたでしょうか?


最後にまた、ご挨拶です。


この物語を楽しみにしていただいてる全ての皆様にお礼を申し上げます。


本当に、ありがとうございます。


評価、ブクマを付けていただいた皆様、とてもうれしく思っております、励みになりますから・・・。


それでは、また来週お会いしましょう^^





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