19話 ルカール迷宮 その1
「イムル。今から、ルカール迷宮へ行くぞ。」
今は、出店を出した日の翌朝だ。
「ぐぅーーー。」
「おい、起きろ!」
「ぐぅーー。」
「寝てるやつがぐぅーーなんて言うわけないだろ。」
「ぐぅー。」
「起きなかったら、放っていくぞ。」
「ぐぅ。」
「じゃあな。」
「待ってて、ご主人!」
「はぁ、早くしろよ。」
イムルは、着ていた大きめのシャツを脱ぎ、装備を纏う。
イムルの装備は、俺の装備とは正反対の色の白がベースだ。
白のワンピースに、白のコート。
ワンピースに、コートはおかしいってイムルに言ったら、「嫌!ご主人と同じがいい。」という事だったので、イムルのいう事にした。
「ご主人、まだご飯食べてない。」
「お前が起きないから、先に食べた。」
「むぅー。」
頰を膨らませてもダメだから。
可愛いけど。
「ご飯食べてないから、行かない。」
「そうか。それじゃあ、今日でお別れだな。バイバイ。」
「嫌。ご主人と一緒がいい。」
イムルは、俺に抱きつきそんな事を言ってくる。
「はぁ、じゃあ早く食えよ。」
そう言って、【透明化】を解除する。
解除した途端、机にはご飯が置かれてあった。
【透明化】は、何にでも使える。
ほんと、便利だ。
「うん。」
そう言って、椅子に座り食べる。
今日の、朝食はトーストと目玉焼きとベーコンとレタスとトマトとコーンスープだ。
しばらくすると、「ごちそうさまでした。」と手を合わせてイムルは言った。
「美味しかったよ、ご主人。」
「そうか。じゃあ、行くぞ。」
今日で、この宿屋から出て行く予定だから、鍵をかけて、返しに行った。
「そういや、お前。昨日何か欲しいものがあるとか言ってなかったか?」
「言ったけど、もういいの。」
「ならいいんだが。そうだ、イムル、お前にこれやるわ。」
そう言って、イムルにペンダントを渡した。
このペンダントは、全ての状態異常を無効化出来る。
このペンダントは、ありとあらゆる状態異常を治す事が出来る、ユニコーンの角をベースに作った物だ。
「ありがとう、ご主人、大事にする。」
「おう。」
嬉しそうで何よりだ。
さてと、取り敢えずは、この街を出るか。
「あの、私をルカール迷宮へ連れて行ってください。お願いします。」
俺は、振り向きながら「断る。」と言った。
声をかけてきたのは、先日俺が助けたミイラ族の女性だった。
「どうしてですか。」
「どうしてもなにも。お前さ、俺と一緒に行くってことは、死んでもいいって事だよな?」
「死にたくないです。」
「なら、行くのなんてやめろ。」
「あなたが守ってください。」
「無理だ。今、俺が守るのはイムルだけだ。」
「どうして、その子がよくて、私はダメなんですか?」
「黙れ、邪魔するな。邪魔するなら、殺すぞ。」
そう言って、さゆりを鞘から抜き、ミイラ族の女性の、首に刃を当てる。
【亜人武器】であるさゆりは、変形可能だが、俺はいつも刀の形にしている。
なぜ刀の形なのか?と問われれば、カッコイイからと答えるしかない。
「それに、俺はルカール迷宮へ行った後、ここへは戻って来ない。」
「そうですか。じゃあ、あの人と一緒に行きます。」
「あの人って誰だ?」
「言いません。」
「あっそ。じゃあな。」
俺たちは、そのまま街を出た。
しばらく歩いた後、人がいない事を確認し、魔力駆動二輪を出した。
俺は、それにまたがり、「イムル、早く乗れ。」と催促した。
イムルも、魔力駆動二輪にまたがり、俺を抱きしめる。
【透明化】を魔力駆動二輪と俺たちにかけ、前進する。
魔物もところどころに存在していたが、俺たちには、気づいていない。
気づいていたら、【透明化】をかけた意味がないがな。
そして、暫くすると、大きな遺跡が現れた。
俺たちは、遺跡の前で魔力駆動二輪から降り、【透明化】を解除し、魔力駆動二輪を異次元空間に送った。
「さて、行くか、イムル。」
「うん、ご主人。」
俺たちは、ルカール迷宮へと入っていった。




