20話 ルカール迷宮 その2
「やっぱり弱いな。」
ルカール迷宮の魔物は、レベルが1に下がっている俺でも、倒せるくらいに弱い。
魔物の出てくる間隔が狭いが、動きは単調でしかも遅い。
「ご主人が強いだけじゃないの?」
「確かに俺は強いが、この強さの差には何かあるような気がするんだ。」
それに、さっきから同じ方向から魔物が出てくる。
魔物の形は、恐竜型や動物型、ましては植物型までいる。
まぁ、今の俺ならどんな型の魔物でも余裕で倒せるがな。
そんなこんなで、どんどん進み最下層まで着きましたと言いたいのだが、そうはいかなかった。
「何でこんなに出でくるんだよ。うっとしい。ちょっとイムル、囮になれ。」
「嫌。囮になんかなりたくない。それに逃げる気でしょ。」
「逃げるわけないだろ。魔物を操ってる奴がいるから、それを倒すまでは魔物を引きつけておいてくれって言ってるんだ。」
「それなら、早く言ってよ。」
「いやいやいや、さっきから言ってるだろ。口を開けるのがめんどいから、何度も何度も、【念話】で言ってるだろ。」
「ごめんなさい、ご主人。気付かなかった。」
「そうか、気付かなかったか。イムル、気づいてないってどういう事か分かるか?」
「分かりません。」
「【念話】で言ってる事に気付かないって事は、俺とイムルの相性は最悪で、お前は俺の事をどうでもいいと思っているという事だ。」
勿論嘘なんだが。
イムルが、どんな反応するか楽しみなだけだ。
「嘘だよね?ご主人。私、ちゃんとご主人の事を愛しているはず。ご主人は嘘をついてる。」
「嘘なんかついてない。それにお前さっき、愛しているはずと言った。愛していると断言出来なかったという事は、お前は俺の事を愛してなんかいない。」
「違うもん。私、ご主人の事大好きだもん。」
イムルはそう言って、いつ魔物が出てくるかも分からないのに、壁にもたれながら座り、顔をうつむかせ、泣く。
「じゃあな、今までありがとう。」
そう言って、俺は歩き出す。
私は、引き止めることも、ご主人の事を追いかける事が出来なかった。
自分は本当にご主人を愛しているのかが分からなくなった。
私は、ふと思い返す。
今までの事を。
そして気付く。
私は今まで、ご主人の邪魔にしかなっていなかった事に。
いらん事ばっかりして、迷惑かけているだけだった。
だから、嫌われたんだ。
私は、要らなくなったんだ。
今、追いかけて謝れば許してくれるだろうか。
また、一緒に居てくれるだろうか。
嫌だなぁ、一人になるのは。
寂しいから。
私は、どうしたらいいのかな。
私は、私が嫌になってくる。
何で私は、ご主人の事をなにも考えていないんだと。
私はご主人の使い魔なのに、ご主人の邪魔しかしていないんだと。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
ご主人に謝って、また一緒に冒険してもいいですか?って言わなきゃ。
ずっと側に居てもいいですか?って言わなきゃ。
私は、顔を上げる。
顔を上げたのはいいが、私は立とうとはしなかった。
だって、目の前にはご主人がいたのだから。
「よっ。まだ泣いてんのか。もう、操ってた魔物倒してしまったぞ。なぁ、イムル。あれ、嘘だから。【念話】なんかそもそもしてなかったから。ちょっとイムルがどんな反応するか楽しみにしてただけだから。」
「え?それってどういう。」
「俺は嘘をついて魔物を倒しに行っていただけで、お前が嫌いだから放って行ったわけじゃないんだ。まぁ、嘘をついた理由はあるんだがな。」
「ご主人、ごめんなさい。私、ご主人の事何も考えてなかった。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
「そんな謝るな。俺も悪かったな。」
俺はイムルの手を握り、「早く行くぞ、イムル。」
「はい!ご主人。大好き!」
イムルに、そこまで慕われているというのは、嬉しい事なのだが、たまに忘れてしまうのだ。
イムルは、使い魔だって事を。
ま、俺は使い魔だと今は思ってないんだがな。
昔は、思っていた。
イムルの事なんて、どうでもよかった。
だから、逃げるために囮にしたり、イムルを投げて、魔物がイムルに夢中になっている時に、倒したりしていた。
俺はイムルを見て、面白そうな事を思いついた。
「イムル。目瞑れ。」
「分かりました、ご主人。」
イムルが、目を瞑った事を確認したら、イムルの前髪を上げ、イムルの額に口づけをした。
「ご主人、今何しました?」
「イムルの額に口づけした。」
おぉ、イムルの顔が赤くなった。
「からかってるんですか?」
「からかってなんかないぞ。」
「ご主人、もう目を開けてもいいですか?」
「あぁ、いいぞ。」
そう言って、イムルが目を開けた瞬間に、キスをした。
イムルの唇は柔らかかった。
それに、さっきより一段と顔が赤くなった。
「これは、些細な気持ちだ。これからも、一緒だ、イムル。」
「勿論です。ご主人、いいえアオバ君!」
こうして、二人は幸せに暮らしましたとさ。
……………………………………………………………。
まだ、終わらないぞ。




