13話 最後の部屋 その2
俺はさっきまで開かなかった扉が開く事を確認した。
「おい、ここからは喋るなよ。」
「何で?」
「フラグ建てたらどうすんのさ。」
「フラグって何?」
「そんな事どうでもいいだろ。」
もし、喋っている時に何らかの言葉でフラグを建ててしまっていて、この扉の先に魔物がいたらめんどくさいのだ。
「よし、行くぞ。くれぐれも言葉を発するなよ。」
イムルは、コクコクと頭を縦に振った。
俺は、扉を開ける。
扉を開けた先には、広い部屋が広がっていた。
ここで誰かが生活していたんだと、すぐに分かった。
人の気配はしないのに、この部屋は綺麗すぎる。
旅行から帰って来た時の家って感じだった。
「イムル、今からちょっと寝るわ。疲れた。」
疲れがどっと来た。
俺は、近くにあったソファーに寝転んだ。
久しぶりに、寝るような感じがした。
俺は気持ち良さに負け、すぐに眠りについた。
イムルはどうしたらいいのかわからなかったのだが一緒に寝れるチャンスだと思ったのか、アオバと一緒に寝る事にしたようだ。
そこからは、疲れが取れるまで寝た。
(なんか重い。でも、柔らかくて暖かい。)
俺は目を開け、体を動かそうとしたのだが、動かなかった。
否、動けなかった。
俺は右手だけ自由に動かせる事が分かった。
だから、何とか右手だけでこの重さと柔らかくて暖かさの原因であるイムルをどかそうとした。
揺すったり、頰を突いたりした。
だが、起きなかった。
「重い。イムル、起きろ。」
「ぐぅぅ。」
「ぐぅぅ。じゃないわ。早く起きろ。」
俺は力づくでどかそうと重い、左手を使えるようにするために左手を動かしたら、「ぁん。」と艶かしい喘ぎが聞こえた。
(ん?さっきのは何だ?何で喘いだんだ?)
俺には、何で喘いだのか分からなかった。
でも、左手は動かさない方がいい事を俺は悟った。
だから、右手だけでどかすか起こすしかない。
「おい。起きろ。重いんだよ。」
「ぐぅ。」
「だから、ぐぅ。じゃないから。どけよ。早くどけよ。」
「すー、すー、すー。」
こいついい度胸してるわ。
人の上で、寝てるのに起きないとか。
俺は、【畜力】を使う。
右手に力を蓄える。
五秒間の【畜力】で、イムルをしばいた。
べしーん。
と気持ちの良い音が鳴った。
「ん。おはよう、ご主人。」
「おはようとかいいから、さっさとどけよ。」
「うん。」
イムルは、言われた通りにどいた。
そして気づいた。
イムルが、素っ裸だった事に。
あ、違うわ。
こいつ元々、素っ裸だったわ。
すっかり忘れてたけど。
「これでも、着とけ。」
そう言って、黒いコートを渡した。
イムルはそのコートを着て、匂いを嗅いだ。
「すんすん、ご主人の匂い。」
「嗅ぐな。」
どうしようか、こいつの服。
とりあえずは、このままでいいか。
そこからは、この部屋を探索した。
どうやら二階構造となっており、一階はリビングらしいのだが、二階はどうなっているか分からなかった。
その理由は、部屋が開かなかったからだ。
ある一つの部屋を除いて。
開けれるところは、開けたい。
だから俺は、その部屋を開けた。
そのドアの先には、床に描かれている大きな魔法陣、本棚があり、その本棚にびっしりと本が敷き詰められていた。
「この魔法陣、どうしたらいいんだ?」
「分からない。けど、その魔法陣の中に入ってみたらいいと思うよ。」
俺は、イムルが言った通りに、魔法陣の中に入った。
そしたら、その魔法陣は淡く輝き、部屋を神秘な光で満たし、とても綺麗な女性の映像を流し、その女性の映像が喋った。
その声は、既に聞いた事のある声だった。
イムルを、使い魔にするかどうかという時に聞こえた声だ。
「初めまして。南条 アオバ君。私は、女神ウィルネス。この映像は、私がこの世から消える前に撮ったものだから、質問に応える事は出来ません。どうして名前が分かるのか?という疑問を浮かべるのは分かりきっているので、応えておきましょう。私には、未来が見えるのです。だから、ここに初めて訪れるのが、あなた、南条 アオバという男性である事が分かっていたのです。ですが、私も完全に消滅したわけでは無いのです。その証拠が、あなたが持っている加護の一つである【神の加護】です。私は1年前、あなたが死んだ時に会った事があるんですよ。その時に加護を与えたんです。もし、私が完全に消滅したその時は【神の加護】が無くなります。だから、その前にあなたにして欲しいことがあるのです。世界を旅して、全ての迷宮を攻略し、私をこの世に現界させて下さい。もし、それが出来たのなら、元の世界に戻してあげます。あ、もう時間切れです。最後に私の力と神代魔法である【生成魔法】を授けます。もし、レベルが1に戻ってたらごめんなさいね。また、次の迷宮で会いましょう。この世界を救えるのはあなたであり、勇者ではありません。」
女性の映像は消え、そして淡く輝いていた魔法陣の光も消えた。
「やっと、終わった。」
「ご主人、どうするの?世界を救うの?」
「結果的にはそうなってしまうな。お前には言っておいた方がいいな。イムル、俺はこの世界ではない、別の世界から来た。俺は元の世界に戻りたいんだ。悪いな。お前とずっと一緒には居られないんだ。」
「嫌。ご主人と離れるのなんて嫌。もうこの世界に私の居場所はない。私の居場所は、ご主人の側だけ。」
そう言って、抱きついて来た。
俺は頭を撫でながら考え、一つの提案をした。
「なら、俺と一緒に来るか?俺がいた世界は魔法も、魔物も存在しないから窮屈だと思うが、妥協すればそれなりには楽しいと思う。ご飯も美味いし、それに平和だ。どうだ、イムル。」
「うん。ご主人と一緒に居たいから。」
「そうか。」
俺は、イムルには甘いな。
「で、これで他の部屋も開くようになったのか?」
「分からない。」
「行ってみるか。」
俺たちは、開かなかった部屋を次々に開けて行った。
開かなかった部屋は、全部で六つある。
その開かなかった部屋を開けてみたら、六つの部屋の内四つは全て本棚で埋め尽くされていた。
残りの二部屋には、宝、鉱石が沢山ある部屋に、多分地上に出るための魔法陣がある部屋があった。
宝、鉱石が沢山ある部屋には見た事のない鉱石が沢山あった。
ここで、少し暮らしてみるのもいいのかもしれない。
ここには、今誰も住んでいない。
つまり、所有者がいないという事、だから俺がここに住んでも問題ないという事だ。
「世界を旅する前に、ここで用意する。」
「うん。」
俺はウィルネスに授けてもらった【生成魔法】で、必要なものを生み出し、そして鉱石と一緒に錬成した。
二人分の普段着、防具に【亜人武器】の強化、イムルの防具に武器、銃弾のストック、その他諸々作り、そしてここにある全ての書物、鉱石、宝などを指輪の異次元空間に送った。
そして、今はお風呂に入っている。
どれぐらい入っていなかっただろうか。
そりゃ、布を水で濡らし、体を拭くくらいの事はしていた。
だが、所々痒かったのだわ、
お風呂好きの日本人の俺には、久々のお風呂が天国に思えていただろう。
イムルが入って来なければ。
「おい、近いんだが。」
「これくらいが普通。」
「いやいや、近いわ。ピッタリくっついてるじゃねぇか。」
確かに、柔らかい肌の感触を感じる事が出来るのはいいのだが、こいついちいち胸を押し付けて来るんだよ。
思春期の俺からすれば、やめてほしいし、誰かに見られたら、即ロリコン認定される。
そういや、こいつ何歳なんだろうか?
後で聞いておこう。
イムルは水色の髪に、水色の瞳で、小さい。
身長は140がいいところだろう。
胸も小さい方だと思う。
他の女性の胸なんか見た事ないから知らんが。
これからは、イムルとは絶対にお風呂に入らないし、一緒のベッドで寝ないようにしよう。
そう、俺は誓った。
お風呂に出てからは、すぐに寝た。
そして、今は地上に出るためにある魔法陣の前にいる。
「よし、行くぞ。」
「うん。」
俺たちは、魔法陣に足を踏み入れた。
魔法陣は、淡く輝き、俺たちを包み込んだ。
しばらくしてから、目を開けると、そこには緑が沢山広がっていた。
そして、俺はふとある事を思い出し、ステータスカードを見た。
「マジか。レベルが1になってる。」
南条 アオバ 15歳 男 レベル1
天職 錬成師
筋力 10
防御 10
敏捷 10
器用 10
魔力 10
魔耐 10
精神力 10
技能 共通認識 錬成(+鉱物鑑定)(+精密錬成) (+鉱物分離・融合)(+複製)喰奪 胃酸強化 暗視(+透視)(+遠視) 感知 (+魔力感知)(+把握)空歩(+縮地)(+神速) 畜力(+魔力畜力)(+二重畜力)気配(+透明化)(+幻影) 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 硬質化(+付与) 再生 無効化 異次元 限界突破 魔力回復 威圧 念話 剣技 銃技 武術 超成長 生成魔法
加護 亜人の加護 (亜人達の特性を理解し、自分のものと出来る。全魔法適性 全魔法耐性 魔力操作(+魔力放出)(+魔力圧縮)(+魔力強化) 全身強化 錬成強化。)神の加護 (【神々の加護】と違って、体に馴染みやすい。全ステータス、+1000。全ての魔法、魔法陣などの、魔力を使ったものを、強制終了する。)
亜人武器 さゆり ありさ
称号 自由人 喰らう者 奪う者 神に認めらし者




