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第5話 布団を蹴っても…

この日惣二は早くに布団をかぶった。

 そういえば……惣二は去年、豆腐屋に砂をいた。すぐに捕まって、肩の盛り上がった豆腐屋の主人に「よく見いっ」と水の底の豆腐を見せられた。

 真っ白い豆腐に黒や灰色の砂粒が乗っている。「してええと思うっかあっ」と首根っこを揺すられ耳の穴が震えるくらい怒鳴られた。


 実はこれには惣二にも理由があった。豆腐屋の主人は自転車で豆腐を売り歩く。近くの家の前で箱から豆腐を出したり鍋に入れたり金を数えたりで周りがおろそかになる。

 豆腐屋の主人が振り向いた時にたまたま走ってきた惣二の鼻へ大人の重い肘が迎え撃った。いきなり顔が破裂して惣二は気持ちを押し殺すことに精一杯となり知らず流れる涙を抑えられなくて走るしかなかった。すぐ後ろで主人が客と笑う声が聞こえた。

 この何かしゃくに障る気持ちをこの時九歳の惣二は整理出来なかった。笑ったのは自分のことではないのかもしれない。けれど、自分と相手との理不尽な落差の事実だけが残って、空くうを百万回蹴りたくなった。

 …真っ白い豆腐にまだらな砂粒……

…息を詰めている自分………何かを蹴りたくなるし……自分がどんげぇ人かあ?………

 …こんげぇ気持ちになるんは自分だけかいやあ…?


 何度も読み返した少年倶楽部が棚にある。少年倶楽部に連載されている「のらくろ」は黒い野良犬の兵隊。野良犬だから休みの日には他のみんなのようには帰る家が無い。もし家がなかったら自分はどうしようか……かかもとっつぁもいない…朝起きてもご飯が無い…隠れる布団も無い…家が無いってどういうことなのか……     

 

 薄べったい布団の中で惣二は時々色んなことを思い出して布団を蹴った。

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