表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/149

揺れる心、囚われの絆

船の出航は、ちょっとした修理と積荷が終わり次第とのことになり、各自が準備のために一度解散することになった。


――帰り道、港を降りたエルフィナたちは、町のカフェに立ち寄り、木の香り漂う落ち着いた席で一息ついていた。


メイ=スケ(湯気の立つマグを両手で包みながら)

「もうすぐ船で長旅だなぁ〜……。ねぇカクは、ナリアさんに言ったの?」


ティナ=カク(ストローをくるくる回しながら目を逸らし)

「いいや〜まだ……。なんで?」


メイ=スケ(にやにやしてエルフィナの方を見る)

「へぇ? なんでって〜ねぇ〜エルフィナ様!」


エルフィナ(おっとりと微笑んで頷きながら)

「そうですわね〜。長い旅になるかもしれませんし、今のうちにお伝えしておいたほうがよろしいのでは? 旅に必要な積荷を、船に積み込みましたら出航ですし……」


ティナ=カク(顔を真っ赤にして慌てる)

「ひ、姫様まで〜! 私とナリアさんはそんな関係じゃないですよ〜!」


エルフィナ&メイ=スケ(声をそろえて身を乗り出し)

「えーーー!?」


メイ=スケ(指を折って数えながら)

「あんなにしてもらって〜!? 愛情弁当とか、朝食夕食もいつも作ってもらってるし! 休日も二人でお出かけしてるだろ〜?」


ティナ=カク(両手を振ってあたふた)

「そ、それは……友達としてだよ〜!」


エルフィナ(ジト目でじっと見つめながら)

「……ちゃんとしたほうがいいですわよ?」


ティナ=カク(顔を赤らめて声を荒げる)

「う、うるさいですよ! いちいちプライベートまで干渉しないでください! 例え姫様だからって……人の人生に口出しするのはいただけないです!!」


エルフィナ(ハッとして慌てる)

「ご、ごめんなさい……ナリアさんと仲が良かったので、てっきり。よかれと思って……さしでがましいことをしてしまいました」


メイ=スケ(手をひらひらさせながら)

「カク〜姫さんせめるのおかしくね〜?」


ティナ=カク(ムッとして噛みつくように)

「うるさい! おまえもいつもいつもヘラヘラして不真面目で! 少しはちゃんとしろ!」


メイ=スケ(テーブルを叩いて)

「なぁ!? カク!! いい加減にしろ!」


エルフィナ(両手を広げておろおろしながら)

「二人とも……やめてください。わたくしが悪かったのです。ねぇ、落ち着いて……」


ティナ=カク(苦しげな顔をして目を伏せ)

「……っ、少し……護衛から離れます」


(そう言い残し、椅子を引いて立ち上がり、スタスタとカフェを出ていってしまう)


メイ=スケ(口をとがらせて腕を組み)

「うわー……あいつ〜! 態度悪すぎだろ!! エルフィナ様にまで!!」


エルフィナ(にっこり微笑みを浮かべて)

「いいんですよ。ナリアさんのことは……きっとだいぶ悩んでらっしゃるのだと思います。カクさんなりに整理できずにいるところへ、追い打ちをかけてしまった……。だからこれは、わたくしのせいですわ」


メイ=スケ(むくれて腕を組みながら)

「エルフィナ様〜……優しすぎないですかぁ? 私はゆるせません!」


エルフィナ(イタズラっぽい笑顔で)

「ここのカフェ……美味しいパフェがありましたよね〜たしかぁ?」


メイ=スケ(目を丸くして)

「え? 知ってたんですか?」


エルフィナ(紅茶を口にして微笑む)

「もちろんです! スケさん、ここを通るたびに表のメニュー絵をじっと見てたでしょ〜?」


メイ=スケ(頬を赤くして笑いながら)

「えぇ!? 見られてたんだぁ〜……」


エルフィナ(嬉しそうに身を乗り出して)

「さぁ! 今日は特別にスペシャルジャンボパフェなんてどうです?」


メイ=スケ(目を輝かせて)

「え? いいんですか?」


エルフィナ(にっこりと)

「もちろん♡」


メイ=スケ(両手を挙げて喜ぶ)

「やったー!!」


――こうしてテーブルには、次々と大きなパフェの器が積み上がっていくのだった。


場面は変わり、路地裏――。


ティナ=カク(影を落とした顔で歩きながら)

「……はぁ。やってしまった……。ナリアさんのことになると、どうしても頭に血が上る……。それで……姫様にまで、あたるなんて……」


ティナ=カク(ふと足を止め、険しい目で)

「……ん? あれは……ナリアさん!?」


――港の端、荷馬車の前でもめる声が聞こえてきた。

ナリアが必死に商人らしき人物を庇い、複数の盗賊に囲まれている。荷馬車の積荷は散乱し、盗賊たちが乱暴に荒らしていた。


盗賊頭(いやらしく笑いながら)

「この娘が邪魔したんだ! 捕まえて人質にしろ! おい……猫耳に尻尾……クルド族だな? 珍しいぜぇ、いい金になるぞ!」


ナリア(必死に抵抗しながら)

「やめてくださいっ! この積荷は……村の人々の命をつなぐものなんです!」



ティナ=カク(鋭く声を飛ばす)

「おい! そこの悪党……いや、盗賊ども! やめるんだな!!」


ナリア(振り返り、瞳を輝かせて)

「カクさん!」


ティナ=カク(刀を抜き放ち、鋭い目で盗賊たちを睨む)

「ナリアさんから離れろぉッ!!」


盗賊(ゲラゲラ笑いながら)

「おい見ろよ、女だ! こいつもまとめて売り飛ばせばいい金になるぜ!」


ティナ=カクは深く息を吸い、居合いの構えを取った。

瞬間――居合の一閃から生じた風圧が、盗賊たちを一斉に吹き飛ばす。


盗賊たち

「ぐわあああああッ!!!」


盗賊頭(目を剥きながら)

「な、なんだとぉ!?」


ティナ=カク(歯を食いしばりながら)

「この人に……指一本触れさせない!!」


盗賊頭(後ずさりしつつ叫ぶ)

「せ、先生! 出番ですぜ!!」


――すると、盗賊団の後ろから黒いローブをまとった魔法使い風の男が現れた。


黒いローブの男(ため息をつきながら)

「やれやれ……こんな相手にてこずるとはな」


ティナ=カク(小さく呟き)

「……ただの盗賊じゃないな。禍々しい気配をまとっている……」


黒いローブの男(右手をかざして)

「黒水よ、この者を捕縛せよ!」


地面に魔法陣が浮かび上がり、どろりとした黒い液体が湧き出してティナ=カクに襲いかかる。


ティナ=カク(刀を抜き放ちながら)

「斬るッ!!」


刀閃が走る――しかし、黒い液体は斬れず、そのまま絡みついてくる。


ティナ=カク(目を見開き)

「なっ!? 斬れない……!?」


黒い液体が腕や足に絡みつき、ティナ=カクの動きを封じた。


ティナ=カク(必死に抗いながら)

「くっ……動けない……!」


盗賊頭(下卑た笑みを浮かべて)

「ははーん! わしらを甘く見ていたなぁ、お嬢ちゃん! さぁ、ずらかるぞ!! こいつも積荷に入れろ!」


ティナ=カク(必死に身をよじる)

「ぐっ……離せッ!!」


ティナ=カクばたばた抵抗するが、盗賊頭に何かを飲まされ気を失った。


ティナ=カク

「……っ!!」


次の瞬間、意識が闇に落ちていった。


――そして彼女は抵抗する力を失い、盗賊たちの手で担ぎ上げられてしまった。



場面は変わり……カフェ。


テーブルの上には、いくつもの空になったパフェの器が山のように積まれていた。


エルフィナ(紅茶を一口飲みながら、ため息)

「スケさん……いくらなんでも食べ過ぎですわ〜」


メイ=スケ(うなだれてお腹をさすりながら)

「う〜……もう食べられないです〜……お腹がぁ〜……」


(そこへ慌てた様子の御者が駆け込んでくる)


御者(息を切らしながら)

「エルフィナ様!大変でございます! 先ほど町外れで遊んでいた子供達が──偶然、ティナ=カク様とナリア殿が怪しい連中に連れ去られるのを目撃したと!」


エルフィナ(紅茶のカップを持ったまま、凍りつく)

「なっ……なんですって……!?」



その頃、捕まったティナ=カク達。


ティナ=カク(薄暗い牢屋の中で目を覚まし、息を荒げて)

「……だ、誰かが呼んでいる? ナリア……?」


ガバッと起き上がると、横には心配そうな目で見つめるナリアがいた。


ティナ=カク

「わ、私はいったい……」


ナリア(悲しそうに微笑みながら)

「……私達、捕まってしまったみたいです」


ティナ=カクは周囲を見渡した。錆びた鉄格子の牢屋に入れられ、剣も奪われている。


ティナ=カク(拳を握りしめ、悔しそうに)

「そうか……不甲斐ない……私がいながら……」


ナリア(首を横に振り、必死に言葉をかける)

「いいえ。私こそ、こんなことに巻き込んでしまって……すみません」


ティナ=カク(壁を殴りつけ、声を荒げて)

「くそっ! 私に、もっと力があれば……助けられたのに……くそ!くそぉ!!」


(何度も壁を殴りつける)


ナリア(慌ててティナ=カクの手を取る)

「や、やめてください!!」


ティナ=カク(悔し涙を流しながら)

「……しかし、私は……」


ナリア(ぎゅっと手を握りしめ、真剣に)

「あなたはたくさんの人を、この手で助けてきました。これからも、きっと……エルフィナ様や大切な人を守る手なんです。だから……この優しい手を、痛めないでください」


(少し頬を染めて)

「私にだって……たくさん思い出をくれた、私の大好──」


ティナ=カク(驚いた顔で)

「大好?とは……?」


ナリア(目を逸らし、ちょっとむくれて)

「……うーん。なんでもないです」


ティナ=カク(慌てて)

「え? そのあとは!?」


ナリア(顔を赤くしながらぷいっとそっぽを向く)

「いいじゃないですか!」


――すると、小窓から盗賊の看守が顔を出す。


盗賊看守ニヤニヤしながら

「おいおい! イチャイチャしてんじゃねぇよ! お頭がお呼びだ、早く出やがれ!」


縄で手を縛られ、螺旋状の階段を降ろされるティナ=カクとナリア。


ティナ=カク(周囲を見回しながら小声で)

「……ここは……灯台か?」


盗賊看守(鼻を鳴らして自慢げに)

「ああ、そうさ! お頭はなんでも直して作れる天才大工よ!」


ティナ=カク(険しい目で)

「……なぜ大工だった者が、盗賊なんぞに?」


盗賊看守(肩をすくめて)

「さぁなぁ。跡取りを亡くして酒に溺れてたところを……あの魔法使いが誘ったらしい。よくは知らねぇがな」



やがて辿り着いたのは、灯台内部の広間。

重厚な椅子にふんぞり返る盗賊頭。その横には、黒いローブを纏った男が立っていた。


盗賊看守(胸を張って)

「お頭! 連れて来やした!」


盗賊頭(低い声で)

「入れ!」


ティナ=カクとナリアは部屋へ押し込まれた。


盗賊頭(指を突きつけて)

「おい! お前……エルフィナ姫の護衛、ティナ=カクだな!」


ティナ=カク(驚愕し)

「なっ……なぜそれを!?」


盗賊頭(横のローブの男を顎で示して)

「こいつはなぁ……王宮で働いてたんだとよ。だから顔を知ってたのさぁ!」


ティナ=カク(目を見開いて)

「王宮で……!? おまえ……王宮魔導士か!どうして?」


ローブの男(冷たい笑みを浮かべて)

「真面目に生きるのがバカバカしくなったんだよ。王宮の奴らは“正義感”だの“義務”だのとほざくばかり……他人を助けて何になる? 自分に得もないのに動くなんざ……愚か者のすることだ」


ティナ=カク(睨みつけながら叫ぶ)

「得だの損だのじゃない! 民を助けるのは……我らの勤めであり誇りだ!!」


ローブの男(鼻で笑い、突然ティナ=カクの顔を蹴り上げる)

「くだらねぇ理想だ」


ティナ=カク(床に倒れ込み、血を滲ませて)

「ぐっ……」


ナリア(慌ててティナ=カクの前に立ち)

「や、やめてください!!」


ローブの男はナリアの髪を乱暴に掴み、ぐいと引き上げる。


ナリア(苦痛に顔を歪めながら)

「ぐっ……!」


ティナ=カク(必死に叫び)

「やめろぉぉぉ!!!」


盗賊頭(手を上げて制止しながら)

「おい! 人質だぞ! こいつらは大事に扱え、先生よ!」


ローブの男(不満げに手を離し)

「……そうだな」


ドサッとナリアが床に落とされる。


ティナ=カク(歯を食いしばり、ナリアを見て)

「貴様……絶対に許さない……!」


盗賊頭(いやらしく笑って)

「ははは! そう怒るな。だがな、今からいいことを教えてやる。俺の計画だ……」


ティナ=カク(睨みつけて)

「……計画だと?」


盗賊頭ニヤリと

「エルフィナ姫と、そのクルド族の娘の人質交換だ! 交渉役はおまえだ、ティナ=カク! エルフィナに“助けてくれ”と泣きつけ!」


ティナ=カク(目を見開き)

「な、なんだと……!? 卑怯な!」


盗賊頭(愉快そうに笑って)

「できなきゃ、その娘がどうなるか……わかるだろ?」


ティナ=カク(縄を引かれながらも怒声を上げる)

「卑怯者めぇ!!!」


盗賊頭(片手を振り払って)

「牢にぶち込んでおけ! せいぜい言葉を考えるんだな!」


連れ出されるティナ=カク、しかし振り返って叫ぶ。


ティナ=カク

「……エルフィナ様を舐めるな!! 必ず後悔するぞ!」


盗賊頭(鼻で笑いながら)

「フン……吠えてろ」


――つづく

【外部サイトにも掲載中!】


イラストはこちら(Pixiv)


https://www.pixiv.net/artworks/132898854


アルファポリスにて画像付きで作品を公開しています。

ご興味ある方はぜひこちらもどうぞ!


▼アルファポリス版はこちら

https://www.alphapolis.co.jp/novel/731651129/267980191

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ