頼れよ
ルイフェルは、最近のアーシアの行動に違和感を覚えていた。
「なぁ、アーシア。ちょっと見に行かないかぁ?」
「にゃ? どうしてにゃ?」
「チビも会いたいだろぉ?」
「チビ言うなぁ〜……でも、たしかに会いたいにゃ」
「よーし決まり! 神殿に行こう!!」
──神殿前。
「あっ、いた? 何やってんだぁ?」
「ミャーリ? ……なんかサイン会みたいなぁ~」
ミャーリはすぐに気づいた。自分もよく行くからわかるのだ。
「アーシア様、すごい形相でサインしてるにゃ〜……」
その様子を、ルイフェルは黙って見ていた。
「もう行くぞ」とだけ言って、神殿を後にした。
──その夜、宿。
アーシアがふらふらになりながら戻ってきた。
自分たちの部屋の扉を開けると、美味しい匂いが漂ってくる。
ドアを開けると──
「おかえり〜!」
みんなが笑顔で出迎えた。
食事が終わったあと──
アーシアはもじもじと、言葉に詰まりながら口を開いた。
「……みなさん、ごめんなさい。実は……」
今日までの四日間、大神官様に頼まれてサイン会やチェキ会を行い、神殿の資金集めをしていたことを告白した。
「本当にごめんなさい……私、力の秘密を探るために神殿に行ったはずなのにぃ……」
目に涙を浮かべながら、うつむくアーシア。
その瞬間、ルイフェルが椅子からばっと立ち上がった。
「ひっ……!」
怒られると思い身をすくめるアーシア。
しかし、ルイフェルの口調は優しかった。
「辛かっただろぉ〜……我達を頼ればよかったんだぁ!」
「そ、そうにゃ! みんなを頼ったらいいにゃ! もちろん私もにゃ!」
ミャーリが満面の笑顔で言う。
「そうじゃのう」ノームがうなずき、
「ワフ!」ウルワが尻尾を振る。
「……みなさん、ありがとうございます!!」
「明日は我が一緒についていってやるよぉ〜」とルイフェルが優しく微笑んだ。
「私もにゃ!」とミャーリが張り切ると、
「今回は任せろ! お前は美味しいご飯を作って待っててくれ!」
「わかったにゃ!!」
──翌日、再び神殿。
「ルイフェルさ、ま……? どーして、私またサインさせられているんですかぁ?」
「いや〜頑張れ! 嘘ついた罰と、冒険者案内所で苦労した我の分まで働け〜!」
「まぁ、グッズ売り上げの八割はもらえるよう大神官と交渉済みだけどな!」
「む、無理やりだった気がする……」
「これは喜ぶべきだぞぉ〜アーシア!」
「この悪魔〜〜!!」
アーシアの叫びが、神殿、町中に虚しく響き渡った──。




