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東京 8
今朝、約束の通りいとが部屋にこっそり忍んで来てくれた。
目が真っ赤で泣き腫らしたような顔で、胸が痛んだ。
こんなこと、やはりやめましょうと私が言えれば、全て終われたのに。
いとは私にとても腹を立ててもいたのだと思う。
こんな勝手なことを押し付けてと。
だから私達の最後は想像していたよりずっと険悪なものだった。
残念だなんて言えない。
いとの怒りはいとのせいじゃなくて私のせいだから。
残念というより、ただ、辛かった。
辛いなんて言える立場ではないのだけど。
いとは思い詰めたような何か言いたくてたまらないという顔をしていた。
おそらく、私への怒りを、非難が口先まででかかってそれを押し留めていたのだろう、そんな顔で、でも私に何も言ってくれなかった。
いとは、怒りもぶつけずただ私が一方的にいとの献身に感謝し、それを黙って聞きながら頑なな表情で目もあわさずに立ち尽くしていた。
いとに恨まれ、いとに嫌われ、それでも生きていくのだ。
後悔はもはや役に立たない。
激しく揺れる狭い二等車両でまとまらないままにいろいろなことを思い浮かべる。
これからの不安をしまいこんで過去のことばかり考えてしまう。
不安なのだ。これからのこと全てが。




