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東京 6
山口先生が辞めさせられる日に渡してくれた書付を懐に大事にしまってある。
そこには山口先生がうちに来る前にお世話になっていた下宿先の住所が書かれてあって、
どこに住むにしてもここのおかみさんと連絡はとっておくから彼女に聞けば行き先はわかるようにしておくと言ってくれた。
山口先生が家の物を質にいれていたのは私の為だった。
私が逃げ出す時の軍資金を用意するために相談して目立たなくて発覚しづらいものをこっそり持ち出してもらっていた。
だからお金は用意はできている。
ただ、先生には申し訳ないことになってしまったけど。
親族は誰も頼れない。
これがばれたら連れ戻されるだけだ。
他に頼れる他人は誰もいない。
とにかく山口先生と再会して、その先のことはそれから考えるしかない。
私に一体何ができるだろう。
読み書きはできるけどまともに働いたこともないのに。
住み込みの女中仕事ができるだろうか。
先生のようにちゃんとした女学校を出ているわけではないから家庭教師のような仕事はできないし、身元がちゃんと証明できないから普通の仕事は難しいかもしれない。
ただ当面は困らないだけのお金はある。懐に抱いたお金が支えだった。




