↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護の旅行記  作者: ツギハギ
東城

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/7

7p. 天国行き──駅の中

 ──神秘の中には、オスかメスかわからない生き物がいる。本人たちから、オスであると言われて初めて気づくことがある。


 何故、急にそんなことを言ったのか。


「はぁい、どうも。初めまして!僕の名前は若王子 御兎(みと)!御兎って呼んでね♡」

「ようこそ〜東城へ。俺は九折(くおり) 飛爻(ひこう)。伊予ちゃんから聞いた双子ちゃんであってる?」


 御兎、と自分で名前を言った少女のような子──桃色の髪の毛に黄緑色の目をしたその子が飛爻と名乗った緑髪の男の子の横で笑う。

 飛爻さんは、駅から降りてきた私たちに真っ先に駆け寄ってきてくれた。


「もしかして、今日案内してくれる人ですか?」

「もしかしなくても、ね。聞いてた通りそっくりだねえ。ツインテールなのが稲穂ちゃんでくくってないのが風ちゃんね。覚えた」

「はあ…あの、そちらの御兎さんは?」

「ついてきただけだよ。うちの後輩。」

「後輩?」


 首を傾げる私の横で風が、「東城で店員さんしてた人じゃない!?」と叫ぶ。そういえば、見覚えがあるわね。


「正解!男子高等学校二年です。よろしくね」

「……ん?待ってください。男子高等学校…?」


 御兎さんを見ると、ニコッと笑われる。

 どっからどう見てもひらひらふわふわのスカートを履いていて、愛らしい姿だ。黒のハイソックスに、リボンがついたブーツ。ケープのついた赤茶色の服。

 めちゃくちゃ美少女…。


「男だよ、僕」


 唖然としてしまう私の横で、風が何か感心したように頷いた。


「ですよねえ、肩幅、腰の感じ…やっぱ男の子…というか後輩ってことは私たちと同い年だよ、稲穂」

「え、ぁああ、そ、そうね!」


 風は神秘だけじゃなくて、そもそも生態が好きなのかもしれないわねえ…。

 さて、と飛爻さんが手を叩く。


「自己紹介もこの辺で。今日は俺たち二人が案内だ。早速だけど、駅の中でも見てみる?」

「!はい!」


 飛 飛爻さんたちに案内され、レンガで作られたアーチ型の入り口を潜り抜けると、汽車の中で使われていた窓ガラスと同じ花模様のガラスが、床の一部に使われている。


「これ、ふむと花が咲くんだわ」

「みんなこの上通るから常に咲いてるよね」


 飛爻さんが私たちを見る。踏めってことかしら。見られるままに踏めば、蕾からするすると枝が伸び、模様を描きながら大輪の花を咲かせた。

 全てのタイルがガラスなのかといえばそうでもなく、一列だけ花模様のガラスの道が作られている。


「端から端まで伸びてんだけど、あそこで十字に重なるようにできてんの」

「何でですか?」

「あそこが駅の中心だってわかるようにね」


 上を見上げると、吊るされた宝石の照明が駅の中を照らしている。

 流石は、職人がたくさんいる地区。

 周りを見渡せば、手すりも、柱も傷一つなく磨かれている。

 駅構内全体は黒で統一されており、手すりや柱は青色だ。


「この手すり本体の青色も宝石ですか?」


 手すりのツルツル感に癖になってしまう。触る私に飛爻さんはさらりと告げる。


「サファイアだね」

「サファイアっ!?」


 触っていた手すりから慌てて手を離す。ケラケラと笑った飛爻さんは今度はチラシが貼られている薄い水色っぽい輝きを放つ柱を指さした。


「あの柱はアクアマリン」

「……見ただけでわかるんですね」

「まあ、ここで生活してるからね」


 当然のように言った後、床のタイルを指差した。


「東城は宝石の街だけど、宝石って要は石だからね」

「…?はい…」

「これは大理石」

「だ……」


 思わず、横にある花模様のガラスの上に移動する。ふわりと花が開き、輝きを放った。そんな私の行動に飛爻さんがお腹を抱えて笑い出す。


「稲穂ちゃん面白え〜!風ちゃんも面白いけど」


 そう言って、飛爻さんが目を向けた先にいる風は御兎さんに、神秘について聞いていた。


 ◆


「ケルベロスや巨人はいないんだね」


 見渡した駅の中には人やドワーフ、旅行者の神秘くらいしか見かけない。大きな生き物はどこにも居なかった。


「居ないねえ〜」

「駅は使わないんだ…」

「使う必要ないからね」


 稲穂と飛爻さんが話している横で、ガラスに花を咲かせたり、蕾にさせたりしながら御兎ちゃんと話す。


「…大きいから?」

「それもある。でもよく考えてみてほしい。あの人たちの足と汽車。どっちが早いと思う?」

「…ああ、なるほど」


 駅まで歩く程度なら、巨人にとっては大した距離でもないのかもしれない。


「それにあの巨体なのに無駄に足速いしねあの人たち」

「そうなの?」

「そう。でも細かいところは見えないから、かくれんぼは僕の勝ちだった」


 巨人とかくれんぼってどうやってやるんだろう…。


「あと、犬族は流通を担ってるくらいあちこちをうろうろしてるんだよ?汽車使う理由ないよねえ」

「そっか、東城は足が速い生き物が多いんだったね」

「そうだねぇ、ドワーフのおじさんたちもちょこまか動くね」


 それは足が速いとは違うような気もするけど…まあいっか。


「え、巨人の人たちはどうやって暮らしてるの?崖とか?」

「なんで???普通に家で暮らしてるよ。僕近所だったし」

「ご近所にいたんだ!」

「巨人の声って大きいから、それで何回も夜目が覚めたよ」

「安眠妨害…ちょっと嫌かも…」

「だから巨人のお家は防音であることが多いんだよね。あのおじさんがたまたまそういう家に住んでただけでさ」


 すごいすごい!え!トイレとかどうしてたんだろう!洪水になったり岩みたいに大きいのかな!


「汚い話していい?」

「ここまで話してきたから何となく想像がついてる。先に言わせてもらうね、外でする巨人はいないからわかりません」

「…くっ!何でわかったの!」

「流石にここまできたら僕でもわかるよ!女の子がそんなこと聞いちゃいけません!」


 御兎ちゃんすごい…でも稲穂に聞いても同じこと言われそう…。


「見た目がすっごい清楚なのに喋るとなかなか愉快だね、風」

「そうかなぁ…あ、ねえねえ女の巨人もいるの?」

「そりゃぁいるよ。後赤ちゃんも大きいよ」


 スマホを出してスライドさせていく御兎ちゃん。こちらに画面を向けて「これこれ」と見せてくれた。

 写真の中に映る赤ちゃんは腕に抱かれているだけならとても普通の可愛らしい赤ん坊だ。

 私の疑問に答えるように、無言で御兎ちゃんがスマホの中の写真をスライドさせた。


「で…っか……」

「およそ縦に並んだ車4台分ね」

「生まれたて…?」

「生まれてそんな日にちたってないね。あと数ヶ月もしたら一歳だよ」

「いつ生まれたの?」

「2月とかかな…今7月でしょ?」

「そんなに日にちたってないのに!」


 なんてこと!巨人って年齢によっても成長速度が違うの!?

 すごい!あとで稲穂に言わなきゃ!

 興奮する私に御兎ちゃんが微笑む。


「理屈は知らないけど、巨人はそうなんだってさ」

「すご〜い!」


 実物を見たわけじゃないのに、もうすでに面白い。

 稲穂が近づいてくるのが見える。


「稲穂!巨人の赤ちゃんって車4台分あるの!しかも、年齢によって身体の成長速度も違うみたい!犬とか猫みたいな感じ!」

「へえ、すごいわねえ」

「え、だよねえ!流石私の片割れ〜」


 ウキウキで稲穂の腕に絡みつけば、嫌がるそぶりもなく腕を絡ませてくれる。


「仲良い双子だなぁ」

「この後稲見星市に行きたいんだと」

「巨人の市ね。ちょうどいいじゃん。行こうよ〜飛爻兄さん」

「ん、行くか〜」


 ふにゃりと笑った飛爻さんは穏やかな話し方だからか、かなり気が抜けてしまう。

「飛爻兄さん?」

「お兄ちゃんみたいだからって、勝手に僕が呼んでるんだよ」

「まあ俺お兄ちゃんなんで」


 自慢げに笑った飛爻さんに御兎ちゃんが笑う。兄弟にもいろんな形があるなぁ。


「血は繋がってないし、義兄弟でもないからね、風」

「え!声に出てた?!」

「顔に出てたかな」


 御兎ちゃんに指摘されてしまった。思ってたより顔が緩んでるのかも。稲穂を見れば稲穂が苦笑いをしてる。

 稲穂もわかっていたらしい。


「そんじゃ、稲見星市にしゅっぱーつ」

「どうやって行くんですか?」

「外に出りゃわかるよ」


 稲穂の質問に、飛爻さんがそう言ってニヤリと笑いながら、一歩先へ足を進める。私たちもその後ろを慌てて追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。