第9話・COOKING!異世界の食材に挑め
薬草採取を終えた俺達は、報酬を貰うため再びギルドへ。
「お疲れ様でしたっ!初めてなのに早かったですね!」
「元の世界でも良く山菜採りで慣れてたので」
「そうだったんですねぇ。ではお預かりしますね。
ひーふーみー……はい!こちらが報酬の銀貨2枚です!」
「ありがとうございます!」
「またお待ちしてます!」
報酬を貰い終わる頃には日も暮れ始めていた。
「なー、夕飯どうする?」
「屋台で食べるか食堂行くか……迷うわね」
「バーガークイーンのチーズアッパー食いてー!」
「私だって筑前煮とか食べたいわ……」
「おまっ、それなら俺だってラーメンとかカレーとか食いてーよ!」
「何の対抗なのよ……」
ジャンクなものも食べたいけど、やっぱりいつもの家ご飯が恋しくなる。
でも屋台はほぼ焼いただけの何かだったり、
食堂は色々あるにはあるけど、やっぱり物足りなさを感じる。
味が悪いわけじゃないけど……。
「こんなに食材たくさんあるのになぁ」
屋台を見回すと出来上がったものだけじゃなく、野菜や果物に始まり肉まである。
「……兄さんが作ればいいんじゃない?」
「俺!?」
「料理人でしょ?」
「そーいやそーだな……」
「どこかでキッチン貸して貰えるんじゃないかしら」
「でも材料……」
「屋台で買えばいいでしょ!」
「……出来ちゃうな」
華蓮は腹が減ってるんだろう。
俺の言葉を遮るように答える。
屋台を一軒ずつ見て回り、肉と野菜をいくつか買い込む。
肉や野菜の並ぶ屋台の中に、ミンミン草を始め、他の薬草や実を無造作に並べた露店があった。
「すんません、これ香草なんすか?」
「へい、らっしゃい!
香草?そんな高価なもんはうちには置いてねーな」
「んじゃこれは何に使うもんなんすか?」
「兄ちゃんどっから来たんだ?これは調合用のもんだろ」
「ほほう?」
「例えば……ミンミン草は分かるか?」
「あ、それは分かるっす」
「バジリカ草、カミル草、レグラス草は調合なんかに使うらしいな」
「なるほど……こっちの実は?」
BB弾くらいの大きさで、乾燥させてるせいか硬そうな実だ。
「そっちはサンショの実、ガラシの実。サンショの実は強烈な味でな。主に気付け薬としてガリっと丸かじりすんだ」
「気付け……そんな強力なんすか?」
「おーよ、試してみっか?」
「や、遠慮します……!」
昔、何かのアニメでそんなシーンみたことあるな……。
「こっちのガラシの実は、強烈な匂いでな。主に害獣避けや、目潰し用に使われとる」
「へええ!」
「ただし使い方には気を付けろよ。サヤを折ると、中の粉が即座に舞うからな」
結構、クセのあるもんが多いな……。
「兄さん、これも買いましょ」
「これ調合用だぞ?……って、華蓮も使うか」
「ええ、もう何でもいいから買って帰りましょ」
ダメだこいつ、腹減ってるだけだ。
「おっちゃん!ここら辺の1スタックずつおくれ!」
「あいよぉ、まいど!」
食材に調合素材……結構買ったな。
「なー、あともう一軒寄っていい?」
「……何買うの?」
「調合道具と調理器具だよ。調理器具貸してもらえなかったら地獄だろ?」
「…………仕方ないわね」
「ぶわー!つっかれたー!!」
「買いすぎよ、こんなに」
「いや、お前のせいだよ!?」
あの後、道具屋へ行き、店の人の話を聞きながら基本的な調理器具を見せてもらった。
初心者ということで甘く見られたのか、あれもこれもとどんどん追加され……。
空腹に負け面倒になった華蓮の一言。
「全部下さい。」
その時の店の主人の目の輝きは忘れない。
「調理場も貸してもらえたし、早速作るか!」
「ね、何作るの?」
「今日のとこは簡単に鶏肉のソテー!」
「ね、早く早く!」
借りた調理場は、宿の裏手にある小さな共同厨房だった。
石造りの調理台に、魔導コンロ。
スイッチを押して火を近付けると、調節された炎が出るらしい。
まずは鶏肉をまな板に置き、余分な脂を落とす。
さらに包丁の先でプスプスと刺す。
これで火の通りも味の染みも良くなる。
あとは鶏肉に塩を振り、軽く擦り込むだけ。
火にかけたフライパンに、油をひき皮目を下にして焼く。
鶏肉の上に大きめの鍋を乗せると、押し潰された鶏肉から、じゅわわっと良い音がする。
「これで良し……と。しばらくはこのままだな」
「潰すの?」
「こうして重しを乗せると、皮がパリッと焼けるんだよ」
「ふーん……」
──さて、次はソースだ。
調合素材の袋から取り出したのは、
鮮やかな緑色のバジリカ草。
「それ、活力薬の材料よね?」
「まーな。だけど試したいことがあってさ」
「《素材解析》!」
するとウィンドウが表示され──
────────────────
バジリカ草/バジル
活力効果のある草。
活力薬の材料。
どこにでも生えている。
────────────────
「やっぱりこれバジルだ!」
「へぇ……!確かに匂いは似てるかも?」
「買った時にこの匂いに覚えがあるなーって思ったんだよ。よっしゃ、これ使おう!」
バジリカ草を洗い、ざくざくと刻む。
そして同じく屋台で買ったガルニクという、ニンニクに似た物も刻む。
「華蓮!さっき調合用で乳鉢買ったろ?それでこれをすり潰してくれ!」
「分かった」
乳鉢に移し、塩をひとつまみ。
そこに果実油を少しずつ垂らしながら、すり潰す。
ごり、ごり、と鈍い音。
刻んだだけの時とは違う、青臭い中に少し甘い香りが立ち始めた。
「これくらいでどう?」
ペースト状になったところで、味を見る。
苦みはなく、むしろ爽やか。
そこにガルニクのガツンとした風味も加わる。
「よし、美味い!」
ソースが出来たところで、放置していた鶏肉をひっくり返すと──
鶏肉特有の香ばしい匂いが一気に広がる。
表面がこんがりと色づき、パリッと仕上がっていた。
「あとはもう少し焼いて──」
「……お腹空いた」
「あとちょっとだから!んじゃパン切っておいてくれ!」
「分かった」
華蓮がパンを切ってる間に、俺は生で食えそうな野菜をちぎる。
多分、レタス。
木皿にレタスもどきを盛り付け、焼き上がった鶏肉を乗せる。
その上にバジルソースを掛け、パンを添える。
「出来たぞー!」
~鶏肉のソテー・バジルソースを添えて~
「いただきます」
待ちきれなかったのか、華蓮は即食べ始める。
「…………!」
「ど、どうだ……?」
「美味ひい!」
華蓮は目を見開いたまま、もぐもぐと咀嚼を続ける。
言葉を探しているのか、ただ夢中なのか分からない。
「皮がパリパリで……もぐもぐ」
「だろ?」
「この世界に来て初めてこんな柔らかいお肉……もぐもぐ」
「肉はほぼ固かったもんなー」
「バジルソースも……ゴクン……美味しい」
「ははっ!華蓮、バジル好きだもんな!」
そう言って、今度はパンで皿に残ったソースを拭い取る。
行儀なんて気にしない。
「……これ、薬草なのよね?」
「そうみたいだなー。もったいねぇよな、こんな美味いのに」
食文化が違うせいで戸惑ってたけど、
代わりになる食材があると分かったのは大収穫だった。
「ご馳走様でした!」
「はぁ……ホント美味しかった」
「喜んでもらえてなにより」
「…………。明日からもよろしくね?」
「え。…………ま、まかせろ!」
美味しいものを食べて、腹が満たされる。
それだけで、こんなにも安心するなんて思わなかった。
──この世界の食材、まだまだ探しがいがありそうだ。
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次回更新・2月10日




