第8話・SEARCH!異世界ではじめてのおつかい。
俺達はギルドの掲示板の前で悩んでいた。
「うーん、そもそも依頼があんま残ってねぇな」
昼過ぎともなれば、おつかい程度の物しか残ってないのは当然か。
「薬草採取とかドブさらいみたいなのしかねーな」
「それでいいんじゃない?どの道、何も知らない私達にとっては、薬草採取ですら難しいと思うけど」
「確かになー」
モンスター討伐でも誰かの護衛でもない、薬草を集めるだけの依頼。
報酬も控えめで、派手さは皆無。
せっかくなら冒頭ぽいことをしたい!
が、俺達は戦えない。
必然的に現状では雑用しか手が出せないわけで。
「私、野草取り得意よ?」
「知ってるけどさ。もっとかっこいいのやりたいよなー」
「何も知らないのに、無茶なんて出来ないわよ」
俺が色んな依頼書を見ている横で、華蓮は一枚の依頼書をじっと見ている。
「これなんかいいんじゃないかしら」
「Fランクのミンミン草の採取。定番の回復薬に使うやつかな」
報酬は銀貨2枚……しょっぱい金額。
でも何もしないよりマシだし、俺らのレベル的にも仕方ないんだろう。
「でもどこに生えてるのかしら?」
「こんだけ安いとなると、どこにでもあるんじゃないか?」
「そうね……。聞いてみましょう」
カウンターにいる受付嬢に話しかけ、掲示板を指指しながら聞いてみる。
「すんません、あのミンミン草ってどこで採取出来るんですか?」
「ミンミン草を始め、薬草類は比較的どこでも採取出来ますよ!」
「例えば、街を出たすぐの草原でもですか?」
「はい!もちろん薬草によっては、特定の場所にしか生えないとかもありますが……」
「なるほど」
「Fランクの採取依頼に関しては、難しいことはないと思いますよ!」
初心者用のクエストってことなんだろうな。
「街のすぐそばの草原なら危険度はほぼないよな」
「ルーグさんがいたとはいえ、街まで危険なモンスターもいなかったわ」
「決まりだな!」
壁に貼られた依頼書を取り、受付嬢へ渡す。
いよいよ冒頭が始まる。
ここまで長かったなぁ……。
「こちらですね!ではミンミン草10本を採取して、こちらにお持ちください」
「ちなみになんすけど……。多く採取して買い取ってもらったりとかは出来るんすか?」
「おっ、抜け目ないですねぇ~!」
「へへっ!」
「でも残念ですが、それは出来ません!」
なにぃ!?
「ミンミン草自体、在庫は豊富にあるんです。なので依頼以外の買取は不可、または買い叩かれちゃうんです」
「ちぇ、そんな上手くはいかないか……」
「ふふっ。でもカレンさんは錬金術師になったんですから、その分を確保しておくのもいいと思います!」
そーいやそうだった。
それなら多めに採取しておくに越したことないな。
「頑張って下さいね!それではいくつかの注意点を」
受付嬢は、依頼書に何かを書きながら続ける。
「基本的には依頼終了報告をしたのち、報酬をお渡しして終了となります。
依頼によっては完了後に聞き取りなどをしますけどね」
そう言うとペンを置き、こっちを真っ直ぐみて受付嬢が口を開く。
「それと……大事なことですが、期日は必ず守ってください」
「了解っす!」
「理由はどうであれ、期日を守れないと信用問題に関わります。
冒険者にとって、信用は命の次に大事なものとなりますからね。
依頼を斡旋出来なくなったり、最悪登録抹消なども有り得ます。
何かありましたら、必ず相談してくださいね」
異世界人の俺らは、信用をなくすわけにはいかない。
例え薬草採取でも気を抜かないようしなければ。
「もちろん命一番ですので、ご無理だけはしないでくださいね!」
俺と華蓮は顔を見合せ、小さく頷く。
「分かりました!」
そう答えると、受付嬢がにっこりと笑ってくれた。
「よっし、準備万端!」
「私も大丈夫。行きましょうか」
あの後、ポーションやナイフを購入。
念には念を入れたってわけだ。
……しかし依頼とはいえ、ポーションの材料取りいくのに、ポーションを買うのは本末転倒な気がする。
草原に入り、草木が生い茂る方へ向かっていると、華蓮がふと疑問を口にした。
「そういえば、レベルを上げるためには何をすればいいの?」
「そうだなぁ。ゲームだと敵を倒す、アイテムを作る、クエスト完了すると経験値が貰える。その辺がレベル上げのほとんどだな」
「なるほど。この依頼も経験値が貰えるのかしら?」
「いやーどうだろうな。金もらえるのと、ギルド独自の冒険者ランクが上がるくらいじゃないか?」
「ふーん、そういうものなのね」
確かにその辺は曖昧だったなぁ。
「後で受付嬢さんに聞いてみっか。……と、この辺か?」
「探してみましょ」
ガサゴソ…………
草花をかき分けつつ探すこと数分。
薬草10本なんて簡単だろ!と思ってたけど、これがなかなかに見つからない。
「あった!これね!」
「それだー!!」
ついに華蓮が見つけ、珍しくテンション高めに草を掲げて叫ぶ。
俺も釣られて叫んでしまった。
「ね、なんかちょっと楽しいわね!」
「宝探しみてーだよな!」
1本見つかったおかげで、一気にモチベーションが上がりまくった俺達。
実物を見たおかげか、その後は時間も掛からず、依頼分の採取はあっさり終わった。
「っあー!腰がいてぇ!」
「ジジくさいわね……と言いたいところだけど、中腰キープは結構しんどいわね」
「だよなー。うーん、依頼の分は終わったし戻るか?」
「でも錬金術に使うかもしれないんでしょ?二度手間になるよりもう少し探しましょ」
「へーへー」
次の依頼もどうせ採取になるだろうし、やる気があるうちに余分に持っとくのも悪くない。
……とはいえ、正直俺はだいぶ飽きていた。
そして、ふと思い付く。
「そういや、俺のスキル……《ステータスオープン》!」
タグを握り、ステータス画面を開く。
華蓮が「どうしたの?」と言いながら、画面を覗き込んできた。
「いやさ、スキル詳細までは見てなかったんだけど……これ《素材解析》」
そのスキルを指差し、そのままタッチする。
するとスキル説明が書かれたウィンドウが新たに表示された。
「わ、すごい」
「な、すげーよな!じゃなくて!」
「???」
「これ!《素材解析》ってやつ」
─────────────────
《素材解析》
食材や調味料の成分、代替素材が分かる。
─────────────────
代替素材ってのが、いまいちピンとこねぇけど……。
「これ使えばさ、他の薬草も分かるんじゃないか?」
「あ、なるほどね」
「他に有用な薬草があっも、今の俺らじゃスルーしてる可能性あるだろ?」
「……一理あるわね」
「よし、とりあえず試しにこいつ解析してみっか!」
スキルの使い方は知らない。
しかし!数多の異世界物を見てきた俺に死角などない!
両手でミンミン草を持ち、スキル名を叫ぶ。
……叫ばなくてもいいとは思う。
「《素材解析》!」
────────────────
ミンミン草/ミント
癒し効果のスースーする草。
回復薬の材料。通称、回復草。
どこにでも生えている。
────────────────
「うおお!でたでた!」
「……これミントって書いてあるけど、これが代替素材ってことなのかしら?」
「あ、ホントだ」
華蓮がミンミン草の匂いを嗅ぐ。
「やっぱりミントっぽい匂いする」
「おぉ……ってことは、チョコミントアイスが作れるってことか?」
「そうだけど、もっといい例えなかったの?」
代替素材って、俺達の世界の素材の代わりになるってことか。
……けっこー便利じゃね?
「調合だけじゃなくてさ、料理にも使えるってことだよな?」
「……創太、もしかして楽しくなってきた?」
「……バレた?」
気付けば、さっきまでの退屈さは消えていて、
次は何を試そうかと、わくわくしてる俺がいた。
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