第40話・JUDGE!異世界の新メニューを評価せよ!
──ダンダンダンッ!
俺は魔獣肉をざく切りにしたあと、二本の包丁でリズミカルに叩き始める。
「ミンチにしちゃうの?」
「そ!」
俺の技量じゃ煮込みじゃ上手く使えない。
かといって普通に焼くと硬い。
なら挽肉にしちまえば?……という安易な考え。
焼いても煮ても、味自体は美味かったし!
「挽肉ってことは……ハンバーグ?」
「いえす!」
「やったぁ!」
「華蓮はハンバーグ好きだもんな!」
「うん!」
よしよし、機嫌良いぞ。
「玉ねぎみじん切りしたいから、これ変わってくんね?」
「……仕方ないわね」
「さんきゅ!」
ハンバーグで良かった。
よし! 魔獣肉のミンチは華蓮に任せて、俺は他の作業に取り掛かる。
玉ねぎはさくっとみじん切りにして、硬いパンをミルクで浸す。
トマトソースも使うからトマトも多めに用意して……と。
「はぁはぁ……これでいい?」
「おう、助かる! そしたらボウルに入れて捏ねてくれ」
「はーい」
華蓮が捏ね始めたミンチに少し塩をして粘り気を出やすくする。
「粘り気出てきたかも」
「そしたらパンと卵、玉ねぎを一気に入れて……よし、混ぜてくれ!」
「玉ねぎは炒めないの?」
「してもいいけど、今回は煮込みハンバーグにするから省略! 食堂なら簡略した方がいいだろうし」
「確かに。そもそも玉ねぎ炒めないハンバーグ好き」
ぺちぺちぺちぺち。
捏ね上がったタネを空気を抜きながら小判サイズに纏めたら、火をつけたフライパンにGO!
じゅあああっ。
「やっぱり匂いは良いよなぁ」
「ね、これ煮込まずそのまま食べない? 」
「確かに一つは煮込まずそのまま食いたいけどさ……待てないだけだろ」
「……そんなことないわよ?」
「焼く時間も煮る時間もそんな変わんねーから」
「ちぇ」
両面しっかり焼き色を付けたら、トマトを煮込んだ鍋に肉汁ごと移す。
ちなみに一つは焼きのみの味見用に残した。
……まぁ、俺も食ってみたいし?
「よし、後はしばらく煮込むとして……味見するか」
「ええ、味見は大事だもの」
大義名分を抱えた俺達は早速ハンバーグにかぶりつく。
そして顔を見合わせた。
「うっっっま……」
「なにこれ、おいひぃ……」
「おいおい、これ煮込む必要あるか?」
「ないかも……」
噛むと肉汁が溢れだし、パサつきも全くない。
ステーキで食べた時はあんなに硬かったのに、ミンチにしたお陰か硬さはなく肉肉しさがハンパない。
それに塩しか使ってないってのに、何だこの旨味!?
「トマトソース使うお題だから……トマトソース掛けてみるか?」
「んんっ、これもおいひい!」
「つーかどんなソースでも合うよな、これ」
「あとあと! ハンバーガーにしたら絶対美味しい」
「ぜってー美味いな、それ!!」
試食の一つはあっという間になくなり、空になった皿を無言で見続けた華蓮がぽつりと言う。
「……もう一個食べたい」
「煮込みの方も出来るから我慢しろって」
「もう火は通ってるしいいんじゃないかしら」
「もうちょい煮込みたいけど……ま、いーか」
ハンバーグを二つずつ皿に盛り付ける。
一応主食としてパンを添える。
いや、試食兼夕飯だから!
「んじゃ改めて……」
「いただきます」
もぐ……。
こくこくこくこくっ!
俺達は再び顔を見合わせ、高速で頷いた。
「焼きより少し柔らかくなってね!?」
「肉肉しさは減ったけど、すっごくジューシーで美味しい!」
「あとこのトマトスープがめっちゃ美味い!!」
「スープもコクが出て美味しくなってる。パンを浸して……うぅ、美味しい……」
「あっ、俺もやる!」
──とまぁ、そんなわけで
いよいよ新メニューのお披露目だ!
「魔獣肉のハンバーグっす!」
「ハンバーグ?」
「えーと、俺達の世界でハンバーグっていう肉料理があるんすよ。肉をミンチにして──まぁ作り方は追々!」
テーブルには三種類のハンバーグを並べた。
焼いただけのもの、トマトソースを掛けたもの、そしてトマトで煮込んだものだ。
おまけにレタスとトマトを挟んだハンバーガーも!
「こんなに作ったのか?」
「いやまぁ、ちょっと美味すぎたんで……ささ! 冷めないうちに食って下さい!」
「ああ、いただく」
マスター達の反応は、概ね俺達と一緒だった。
いや、俺達よりも感動していた。
ハンバーグを食べ慣れてる俺達ですら、感動モンの美味さだったからなぁ……。
全て綺麗に食べ尽くした後、途中から無言だったマスターが口を開いた。
「ちょっとした思い付きでお前に頼んだんだが……ここまでやってくれるとはな……」
「ええ、私もあんなに美味しい食事は初めてでした」
「へへ、そう言ってもらえてホッとしました……!」
「正直──」
マスターは腕を組んだまま唸る。
なんだなんだ。
さっきまで豪快に食ってたのに、急に歯切れが悪くなったな……?
「……これは食堂で出していいレベルの味じゃねぇ」
「私もそう……思ってしまいました」
「えーと……ダメってことっすか?」
「いや、そうじゃなくてな」
マスターと副マスターがアイコンタクトをしたのち頷く。
副マスターが俺の方に向き、メガネの縁を上げながら口を開く。
「これならソータさんがご自身のお店を持つ、あるいは──貴族や王族のお抱え料理人にもなれるでしょう」
「そういうことだ」
「へー……」
へっ!?
読んで頂きありがとうございます!
応援して頂けると励みになります。




