第4話・CHECK!異世界でお仕事決めました
「こんなもんかな」
エントリーシートを書き終わった俺達は受付嬢に提出をする。
「お疲れ様です!拝見しますね……はい、オッケーです!では次にこちらの魔導具で適正検査をしまーす!」
カウンターの上に、分厚い本が置かれる。
ずいぶん古びた本だ。
革表紙に金色の紋章があしらわれていて、高級感を醸し出している。
受付嬢が俺が書いたエントリーシートを本に挟む。
「こちらに手をかざして頂いて……そうです。目を閉じて念じてください!」
いよいよファンタジーだこれ……!
かっこいい職業もしくはチートスキルおなしゃす!!
本にそっと手をかざすと、本がふわりと光り、パラパラとページが開き始める。
止まったかと思うと、新たなページが作られ始め、そのページ中に文字が浮かび上がる。
青白い光が文字を縁取り、次第に金色の文字へと変化する。
「ソータさんの適正は……料理系ですね……」
受付嬢が少し気まずそうに微笑む。
な、なんだ?料理はハズレなのか?
そんな俺の表情を見てか、受付嬢が口を開く。
「その人の資質もありますが、料理系というのは、そのぅ……誰でも持てるスキルの1つでして……」
………………。
お、俺の中ではしっくりきたし?
べ、別に構わないし?
てか異世界召喚=チートスキルが標準装備じゃないのかよ!
「で、でもでも!それを極めて三ツ星レストランを経営してる方とかもいますしっ!」
……それって元々料理人だったっていうだけなんじゃ……。
「兄さん」
「なんだよ」
「兄さんには合ってるわよ」
肩を震わせながらの華蓮のフォロー。
笑ってんじゃねーか。
「でもホントよ」
ボソリとそう言って受付嬢の元へいく華蓮。
敵わねーな。
「えーと、ではカレンさんですね。ソータさんと同じようにお願いします!」
華蓮がさっきと同じように本を手をかざす。
さっきのパラパラとは違い、
バラララッと音を立ててページがめくられ始める。
「な、なんだなんだ!?」
思わず声をあけてしまう俺。
そしてゆっくりと新たなページが作られ、文字が浮かび上がり始める。
文字は消えたり浮かんだり、赤や緑、黄色、虹色に変化しながら光が踊る。
まるで本自身が「迷っている」かのようだった。
「なんか俺の時とだいぶ違うな……」
「こ、これ大丈夫なの……!?」
珍しく華蓮も動揺し、俺の服を掴む。
俺からすれば、『レア演出キター!』なんだけど。
異世界物を知らない華蓮からしてみれば、この一連の流れすら不思議で不安で仕方ないんだろう。
「……わ、私もこんなの初めてみました……!」
受付嬢も息を飲む。
俺は職業ガチャはずれで、華蓮はSSレアかよ!
くっそー、同じ双子だってのに……。
「えぇと……。剣、占い、癒し、調合……。こんなに沢山出るなんて……」
「に、兄さん、どうすればいいのこれ……」
「お、俺に聞かれても……。てか調合?
なんでそんなのが唐突に……?」
受付嬢も少し困った表情を浮かべる。
「ご本人の素質や資質から導き出されているものなので、私には……」
「調合ってことは、錬金術師ってことっすか?」
「そう、ですね……」
そこで俺は思いついた。
「なぁ、華蓮。お前の得意科目ってなんだっけ?」
「化学と数学、よ」
「だよな、納得」
俺が頷くと、華蓮も落ち付いてきたのかページをじっと見つめる。
受付嬢は「???」という表情で、俺達を交互に見ている。
「華蓮はさ。小さい頃から剣道やってて、巫女としてじいちゃんの手伝いしてるだろ。」
「巫女って言っても大したことなんて……」
華蓮は昔から、じいちゃんの神社で巫女として手伝いをしていたことがある。
境内の掃き掃除や草取り、参拝者にお守りを渡すとかの雑務は俺も手伝っていた。
ただ華蓮は手伝いとはいえ、巫女として神具に触れたり鈴を鳴らしたりすることもあった。
そんな体験が、占いや癒しの素養につながっているのかもしれない。
「調合に関しては、たぶん化学の知識のおかげだろうな。」
「そうなの?」
錬金術といえばゲームの定番だけど、華蓮に知識はない。
「錬金術って分かるか?」
「一般的な知識くらいなら……」
「錬金術の要って『調合』なんだよ」
「化学の実験に通じる、ってこと?」
「そそ!華蓮は実験が1番好きだったろ?」
「そうね、どうしてこうなるかとか考えるの好きかも」
「特に実験の時は邪悪な笑顔してたもんな!」
「誰が邪悪よ」
「あのーう……」
二人で盛り上がっていると、申し訳なさそうに口を挟む受付嬢。
「あっ、すんません!えーと、要はそれらを活かした職業になれるってことで合ってます?」
「はい、そうです!でもこれだけあると迷っちゃいますよねぇ。普通は1つ、多くて2つですし……」
「……華蓮、お前すげーな」
「何が凄いのかよく分からないけれど……」
「向いてる職業は剣士、占い師、神官、錬金術師ってとこだな」
「ソータさん、お詳しいんですねぇ……!」
「ふふ、それほどでも……」
こんなことで役立つ知識になるとは……。
「で、だ。華蓮は何になりたいんだ?」
「突然何にって言われても……」
「そりゃそうか」
「それでは私がご説明致します!」
出番を待ってたかのように声を張る受付嬢。
「まず剣士。こちらはパーティの花形とも言われる職業です!前線に出て戦ったり、パーティを守るタンクなど、誰でも一度は憧れちゃう職業なのですっ!」
「……なるほど」
テンション高めの受付嬢と違い、華蓮は冷静に頷く。
「そして占い師と神官!こちらは素質が大きく関わりますので、鍛錬だけではなれない特殊な職業となっております!こちらもパーティでは引っ張りだこの職業なんですよお!」
「……なるほど」
更に興奮を増した受付嬢をものともせず、変わらず頷くだけの華蓮。
他に感想ねーのかよ、受付嬢さん可哀想だろ!
「最後は錬金術師です……」
ほらみろ、少し落ち込んでるじゃねーか!
「こちらは料理人に近く、資質が大きく関わっておりまして……」
おや?はずれに近いってことか?
「一般的なポーションはありふれておりますし、上級ともなればお抱えのお誘いなどもありますが……」
要約すると、初心者錬金術師はハズレ枠、ってことか。
「……なるほど。兄さんはどう思う?」
「んー、せっかくなら剣士とか神官とか、パーティで活躍出来るような職業がいんじゃね?」
「そうね……」
そう言って考え込む華蓮。
「あの、今決めてしまわなくとも……」
そう受付嬢が言いかけると。
「いえ、決めました」
はやっ!
「錬金術師になります」
「「ええええッッ!!!」」
俺と受付嬢の声が揃う。
「い、いいんですかぁ……?」
不安そうに見つめる受付嬢。
「ちょ、待てって華蓮!」
「なによ?」
「せっかくならもっと良さそうなのあるだろ!」
「あら、それは錬金術師の方達に失礼じゃない?」
「それはごめん!けど!」
「私達、双子でしょ?」
「あ?あぁ、そうだけど……」
「片方だけ引っ張りだこになっても、意味ないでしょ?」
「…………。」
「ね。だからこれでいいの」
そう言って、笑顔を見せる華蓮。
普段は俺をバカにしたり、からかったりばかりの華蓮だ。
それでも、ここぞという時はちゃんと考えてくれる。
……ちょっと、泣きそうになった。
「……お前、ねるねるねるね好きだもんな」
「ねればねるほど色が変わるなんて面白いじゃない?」
ふふん、と笑うように華蓮が言う。
「まーな!」
……ほんと、敵わない妹だ。
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