第3話・JOIN!異世界の扉を開けろ
──ギィィ…
重たい扉を押し開けると、ひんやりとした空気。
そして人、人、人!
「うおぉ、すげぇ人……」
漫画でよく見るような冒険者達がめっちゃいる。
辺りを見回すと、掲示板を吟味する人、カウンターに並ぶ人、そこらのテーブルで作戦会議をしているチームなどで溢れかえっていた。
「兄さん、恥ずかしいからキョロキョロしないで」
「いやだって、こんなの漫画の世界でしか見た事ねーよ! 見るなって言うほうが無理!」
「よそ見してっと危ねーぞ。ほら、あっちのカウンターま」
ルーグさんに促されカウンターへ向かう。
受付嬢さんは忙しそうに、何かを書いたり読んだりしている。
……てか、受付嬢さんとか萌える。
「よう、ちょっといいか?」
「はぁい! 」
ルーグさんの声掛けに、書類をチェックしていた受付嬢が顔を上げる。
「ルーグさん、お疲れ様です!今日はどのような……その方達は??」
ルーグさんの後ろにいる俺達に対して疑問を投げ掛ける。
……まぁ見るからに異世界人だしな。
「その件で来たんだ。こいつら、異世界からやってきたみたいでな」
「…………。えええぇッッ!!?」
目をぱちくりさせたかと思うと、カウンターから身を乗り出すように驚く受付嬢。
周囲もなんだなんだと視線を向ける。
視線がちょっぴり恥ずかしい。
「あ、失礼しました! 私はギルド職員のモニカと申します! 当ギルドへようこそ!」
本来の職務を思い出したかのように、礼儀正しく挨拶をする受付嬢モニカ。
「異世界へ召喚されたのは初めてですかぁ?」
「へ。あ、はい。」
受付嬢のまぬけな質問に、まぬけな返答をしてしまう俺。
何度もあってたまるか。
「私、異世界人の方にお会いするの初めてなんです! なんだかワクワクしちゃいますねぇ!」
「とりあえず保護希望で連れてきたから、あと頼むな」
「お任せください!」
そう言って受付嬢は胸に拳を当てる。
俺より年上だろうけど、なんか可愛いぞこの人。
「えっとですねぇ、まずは冒険者登録をして頂きます! それが身分証代わりになりますので、嘘偽りなしでお願いしますね!」
「嘘偽りした場合はどーなるんすか?」
興味本位で聞いてみる。
「うぇ!?……した場合は、えーと、あの、良くて罰金か禁固刑、最悪処刑されちゃいますので!」
しどろもどろしつつ、笑顔で言い切られた。
こえーよう……。
「……すんません、冗談です」
「兄がすみません」
華蓮が頭を下げながら、俺の頭を押さえ付け謝罪する。
……ごめんてば。
「いえいえ! 戸惑うことも多いでしょうし、何でも聞いてくださいねっ!」
天使か?
「ではこちらの用紙に分かる範囲で構いませんので、ご記入お願いします!」
「……あの、私たちこちらの世界の読み書き出来ないのですが……」
不安そうに華蓮が切り出す。
そりゃそうだ。
でも幾多の異世界物を読んできた俺に不安はない!
「ふっふっふっ、ご安心ください!」
待ってましたとばかりに得意気な受付嬢。
「こちらの特殊なインクで書いて頂くと自動で翻訳されちゃいます! なのでご自身の文字で大丈夫ですよ!」
おおおっ!
これこれ、こういうの待ってました!!
「登録用紙にもこのインクが使用されているんです。まずはここにお名前書いて頂けますか?」
俺達はそれぞれの用紙に名前を書く。
──宮代 創太
──宮代 華蓮
すると書いた文字がぼんやりと光る。
それに呼応するかのように周りの文字が光って──
「うおおお! 読める! 読めた! すげーー!!!」
「気持ちは分かるけど声抑えて。」
「お前、なんでそんなテンション低いんだよ!?」
「私が低いんじゃなくて、兄さんが高いのよ」
「ふふっ。ではそれぞれご記入お願いします! 分からない事があれば聞いてくださいね!」
優しすぎる。
「えーと、なになに……」
エントリーシートの項目は、
年齢、性別、出身地、職業、特技、戦闘経験。
「16歳、男……と」
「……この出身地は日本でいいのかしら?」
「とりあえずそう書いとくか」
「職業は高校生……戦闘経験なし、っと」
「いやまて華蓮! 異世界で職業と言ったら剣士とか神官とか魔法使いとか!」
「バカなの?」
「バカって言うな!」
「兄さん魔法使えるの?……ぷっ、ファイヤーソードだっけ?」
「……えーと、高校生、と」
いらんこと蒸し返すんじゃねーよ!
つーか、忘れろ!
「特技ねぇ……勉強かしら」
「いやもっと他にあるだろ? お前、剣道部じゃん!」
「趣味でやってるだけで特技じゃないわよ。私より強い人なんていくらでもいるし……」
「立派な特技だと思うけどなぁ。てか俺の特技……」
俺たちが小学生の頃、じいちゃんに半ば強制的にやらされた剣道。
練習がキツくて俺は辞めちまったけど、華蓮はずっと続けてる。
そこそこ強いみたいだ。
やると決めたらやり切る華蓮を、実は尊敬してたりする。
悔しいから言わねーけど。
「……兄さんの特技、料理じゃない?」
「勉強とか剣道と比べて、なんかパッとしないな俺の特技……!」
「そう?」
「へ?」
「私からすれば羨ましいし凄いと思ってるわよ?」
「そ、そーか?」
ニコリと笑顔を浮かべて褒める華蓮。
不覚にも照れてしまった俺は、素っ気なく返事をした。
小さい頃、両親が居なくなってしまった俺たちは祖父母に引き取られた。
落ち込んでる俺らを元気付けるために、剣道をやらせたじいちゃん。
俺は剣道から逃げるため、ばあちゃんの家事手伝いをしてた。
その甲斐あってか、俺は料理が好きになった。
だからまぁ、特技って言われたらそれくらいしか思い浮かばない。
でももっとかっこいいの書きたいじゃん!
剣道続けときゃ良かった……!
他に何かないかと考えていると、華蓮が俺をちらりと見て、静かに言う。
「立派な特技よ。ちゃんと書きなさいよね」
「……さんきゅ」
少し照れくさくて、視線を逸らしながら礼を言う。
俺は特技の欄に“料理”と書き込んだ。
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