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主殿、我だけを見よ~異世界で助けた奴隷少女は元・魔王軍幹部!?独占欲と戦闘力が規格外な娘と遺跡探索スローライフ~  作者: 猫村りんご


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【第118話】居場所になった村

【第118話】居場所になった村


遺跡では、その後無事にみんなと合流できた。


途中で思わぬ転移トラップやら温泉やら色々あったものの、大きな怪我人もなく、俺たちはその日のうちに大樹の村へ戻ることができた。



そして――そこから数日後。



「よいしょ……っと」


「主殿、そんな持ち方では危なっかしいのじゃ。貸してみよ」


俺が抱えていた棚を、ナヴィがひょいと持ち上げる。

いや、ひょいどころか、ほとんど片手だった。


「いや、さすがにそれは俺の仕事というか……」


「ふふん。ならば我より早く運んでみせるがよい」


そう言って、ナヴィは勝ち誇った顔でずんずん先へ進んでいく。パワフルだなぁ。



遺跡から戻った後、クレイ、ノイラ、リズベルの三人は、今後もしばらく遺跡調査を手伝ってくれることになった。

そのため、三人もしばらくこの村に滞在するらしい。


村長へそのことを報告したところ、空き家を一つ手配してもらうことができ、今はその修復や掃除、家具の搬入を皆で手伝っているところだ。


「ほ、埃っぽいですね……でも、この棚、古い割に作りがしっかりしているので、本を入れるのに丁度良いです」


そんなことを呟きながら棚の設置と本の整理を始めていたノイラだったが、気がつけば棚の前に座り込み本を読み耽っていた。


「ノイラ、そういうのは後にしたまえ。今日は住める状態にするのが先だよ」


「は、はい……」


クレイはクレイで手際が良い。

あれこれ指示を出しながら、自分でも器用に窓枠を拭いたり、壊れた椅子を簡単に直したりしている。

テキパキと動く姿はさすがギルド長だと感心する。


ちなみに、クレイが長期の間村に滞在するとなると当然ギルドは長い間不在となるため、一応本人にそのことを聞いてみたところ、一瞬視線を泳がせたと思ったら上手くはぐらかされてしまった。

あの感じは多分、誰かに仕事を押し付けてきたな……?



一方でリズベルはというと。


「はぁ……なんでアタシが、こんな地味な肉体労働まで……」


文句を言いながらも、ちゃんと荷物を運んでいる。

しかも意外と真面目だ。



最初は“遺跡の調査のために集まっただけ”の面子だったはずが、こうして同じ村で、同じ空き家を直している姿を見ていると、妙に不思議な感じがした。


診療所を開いて、村の人と関わるようになって。

ナヴィと一緒に働いて、遺跡に潜って。

そこへさらに三人が加わって、気づけば毎日が少しずつ賑やかになっている。


最初はただの滞在先だったはずだ。


けれど今は、この村で朝を迎えて、この村で仕事をして、この村で一日を終えるのが当たり前になりつつあった。


「アキオくん、その棚はそちらに置いてくれ」


「あ、はい」


クレイに声をかけられ、棚を所定の位置へ置く。


「あとは注文しておいた大きな家具が届けば、一通りは住めそうですね」


「うむ。これでしばらくは快適に過ごせそうじゃな」


ふう、と一息入れた俺の隣でナヴィは満足そうに腕を組んでいた。

たぶん暇な時に入り浸るつもりなのだろう。


その後も皆で掃除や荷物運びを続け、日が傾き始めた頃、ようやく一段落ついた。



「ふぅ……さすがに疲れたな」


家の外へ出て、俺は大きく伸びをする。

慣れない力仕事が続いたせいで、腕も腰もじんわり重い。


村の空は茜色に染まり始めていた。

大樹の葉の隙間から差し込む夕日が、地面にまだらな影を落としている。


「お疲れじゃ、主殿」


声と共に、ナヴィが隣へとやってくる。


「ナヴィも手伝ってくれてありがとう。助かったよ」


「ふふん、あれくらい我にかかれば朝飯前なのじゃ」


「家具を担いで壁にぶつけそうになってたけど?」


「……あれは、ちょっと狭かっただけじゃ」


少しだけむくれるナヴィに、思わず笑ってしまう。

離れたところからは、まだ家の中で何やら話している三人の声が聞こえてきた。

クレイが何か言って、リズベルが文句を返し、ノイラが慌てているようだ。


「賑やかだねえ」


ぽつりと呟くと、ナヴィがふふんと小さく鼻を鳴らした。


「よいことではないか」


「そうだね。明日からも、きっと退屈しなさそうだ」



ふと、隣からこつん、と軽く重みがかかった。


見ると、ナヴィがこちらへ寄りかかっている。


夕暮れの中、茜色の光に照らされる横顔はどこか穏やかで。

遺跡の中で暴れ回っている時とも、村人相手にドヤ顔をしている時とも違う、柔らかい表情だった。


「……この村に来てよかったなぁ」


自然と口をついて出た言葉に、ナヴィは一瞬だけ目を丸くしたあと、ふっと笑った。


「主殿がおるなら、どんな場所でも悪くないのじゃ」


その言葉は、あまりにも自然で。

けれど不思議と胸の奥にすとんと落ちた。


どこにいるかじゃない。

誰といるか。


そんな当たり前のことを、改めて言葉にされた気がした。


俺は少しだけ笑って、夕暮れの村を見渡す。


最初はただの滞在先だったこの場所も、気づけばもう、仮の宿ではなくなっていた。


診療所があって。

村の人たちがいて。

新しく滞在する仲間たちがいて。

そして、その隣には当然のようにナヴィがいる。


この村での暮らしも――案外、悪くない。


そうして俺たちは、茜色に染まる大樹の村で、少しずつ“居場所”になっていく日々を過ごしていくのだった。



第一部 完結


今回の118話で第一部完結となります。


まだ書きたい話はあるのですが、ここ数か月ほどはストックのない状況で連載をしていたため、まとまった原稿を用意でき次第、第二部として連載再開する予定となります。

また、一部外伝なども後日掲載を予定しております。


ここまで長いお付き合いをいただき、誠にありがとうございました。

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