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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第一部 乳幼児期 『6歳編』
73/938

6歳 8

 俺は、木に背中を預けて座っていた。

 隣では、いつの間にか泣き止んでいたサティスが遠くを見ている。

 彼女の力無い、冷たい手を握ることしか出来ない。


 唐突に、隣のサティスが話し始めた。


 「私、人を殺してしまったわ」


 「・・・それは」

 言いかけて、言葉がつまる。

 正当防衛。

 殺らなきゃ殺られていた。

 どれも意味をなさない。


 サティスが、人を殺したのは事実だ。


 「人を殺しちゃいけないって言うのは何となく分かってた。『勇者伝説』でも、『天人青春』でも、誰かが死んだら皆が悲しんでた。人を殺すは酷いことだって知っていたわ」

 何も言えず、静かにサティスの言葉を聞く。

 「でも、私は殺してしまった。それも大切な友達を。私が弱いばかりに殺すしか出来なかった」

 感情の消え去った顔。

 ボソボソと話す声。

 今まで見たことの無いサティスの姿に悔しくて涙が出てくる。

 「ジュビアは努力の人。私とフェリスみたいに勝ちたい人に勝つために努力し続けてた・・・私はその努力を奪ってしまった・・・」

 「サティス」

 止まらないサティスの自責の言葉に思わず名前を呼んでしまう。

 もう、いい。

 止めてくれ。

 「許されない事をしたのよ・・・なのに、どうしてかしら?悲しいのにもう涙が出ないのよ・・・反省しなきゃならないのに、何も考えられないのよ・・・」

 サティスは多分強いストレスを感じているのだろう。

 独り言のように話すことで、なんとか平静であろうとしているのだろう。

 「私・・・弱いわ・・・友達1人だって守れやしない・・・それどころか殺してしまったんだもの・・・」

 彼女の美しい『深紅』の瞳から光が失われている。


 「お母様は『魔族』が悪いって言っていたけれど・・・悪いのは私よ・・・弱い私・・・弱いのはとっても悪いことだわ」


 自責を呟き続けるサティス。

 その、あまりの痛々しさはもう、見てられなかった。

 「何が『無敵』よ・・・何がフェリスと一緒に『無敵』になろうよ・・・こんな私・・・ジュビアじゃなくて、私が死ねばよかった!!私みたいな人は、必要な」

 


 「サティス!!」

 


 俺はサティスの言葉を大声で遮り立ち上がる。

 それ以上はいけない。


 自分のことを必要ないなんて思っては絶対にいけない。


 「フェリス?」

 少しだけ、驚いた顔をして俺を見上げる。


 「それ以上は許さない!!俺にはお前が必要だ!セドロも俺達には期待してくれている!まだ始まったばっかりなんだ!!・・・弱くて、当たり前だろ・・・?」


 俺の視界は、涙で歪んでいる。

 今の言葉も半分自分に言い聞かせていた。

 

 「だから・・・だから自分が死ねばよかったなんて2度と言わないでくれ・・・」


 俺だって弱い。

 実力はサティスとジュビアより下。

 ベンディスカにだって1人じゃ勝てなかった。

 サティスをこの罪から守る事は出来なかった。


 「サティス・・・ジュビアを殺させてしまってごめん」


 「どうして謝るのよ・・・殺したのは・・・わっ・・・わだじでじょ?」


 サティスの声が震え始める。

 また涙が出てくる。

 「俺だって間に合わなかった!だから・・・だから一緒に背負って行こう。一緒に強くなって、2度と同じことにならないようにしよう・・・っ」

 

 ぽろぽろと涙が溢れる。


 「だから、絶対に自分は必要ないなんて思わないでくれ!」


 それは、絶対に思っちゃいけない。

 それは、心を壊す。

 酷い言葉だ。


 人は、誰かに理由は様々あれど必要とされているのだ。


 少なくとも、サティスの存在は。

 俺にとって絶対に必要なものなんだ。


 「フェリス・・・フェリスぅ」


 サティスが泣きながら抱き着いてきた。

 俺も抱きしめ返す。


 「わがっだぁ・・・フェリスと一緒に強くなるぅ・・・いっじょにがんばるぅう」


 しばらく2人で泣いた。

 声を出して。

 一緒に。


 泣いて、泣いて、泣いて。

 やがて、泣き止んで立ち上がる。


 「行こう」

 「・・・うん」


 俺は、ジュビアの胸から曲剣を引き抜く。

 それをサティスに渡す。

 サティスは、悲しそうな顔でそれを受け取って腰の鞘に収める。

 並んで向かうのは、セドロが向かった先。


 今は、これ以上何も考えてはならない。

 考えても自責に溺れて戻れなくなるだけだ。


 とにかく、母達の姿を見に行こう。

 2人の笑顔を見て安心するのだ。

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