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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第一部 乳幼児期 『5歳編』
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5歳 12

 まだまだ暑い9月の後半。

 『プランター村』『東の山』『麓』。


 『城下町』『ディナスティーア』から村に戻ってきてから数日が経った頃。

 俺達『アルコ・イーリス』のメンバーが全員、セドロに集められていた。

 「フェリス、サティス、おはよう!早いな!」

 そう言って話しかけてきたのはデスペハード。

 朱色のツンツン頭が、太陽のようで眩しい。

 「あぁ、おはよう。朝から走ってたからな!」

 俺はデスペハードに元気よく挨拶を返す。

 隣では大きなあくびをするサティス。

 今日はいつもより早い時間に集まるように言われたため、普段より早起きして体力づくりをしていたのだ。

 だから、サティスは睡眠時間が足りていないらしい。

 「むぅ・・・おはよぉ」

 涙目を擦りながらデスペハードに手を振るサティス。

 その様子に快活な笑顔で返すデスペハード。

 この世界に生を受けて早5年。

 『アルコ・イーリス』のメンバーも大きく成長している。

 デスペハードは11歳になり、手足がすらっと長くスタイルが良い快活なお兄さんに成長している。

 まだまだ成長期、これからもっと背が伸び、イケメンになっていくのだろう。

 「あ!みんな早いね!」

 言いながら駆けてくるのはブリッサ。

 今日は桃色ポニーテール。

 腰上まで落ちるポニーテールが足で地面を蹴ると一緒に揺れていて目で追ってしまう。

 そんな彼女は12歳。

 前世で言えば中学生、この世界で言う半成人である。

 母親ゆずりなのだろう、スタイルがとても良い。

 豊満な胸に彼女の彼氏は、くっつかれるたびに顔を真っ赤にしてる。

 「あ!ブリッサ!おはよう!」

 サティスは笑顔で手を振る。

 ブリッサはサティスに駆け寄って抱きしめる。

 そのままよしよしと頭を撫でる。

 アルコメンバーの女子は最近、より一層仲が良くなった。

 俺は、この間の件からサティスとの距離を考えるようにしており、以前より一緒にいる時間を減らしている。

 サティスもセドロから話を聞いていたのだろう、少しずつではあるが外の世界へと足を踏み出し始めている。

 その第一歩としてサティスは、以前に増して『喫茶店トールトロス』に通うようになったのだ。

 その結果として、よく居合わせるアルコメンバーの女子との仲をより一層深めることになった。

 最近は、一緒にお茶をしながら色々な話に花を咲かせているらしい。

 内容までは教えてくれないが、最近妊娠が発覚したソシエゴが、そう教えてくれたのだ。

 ソシエゴも旦那であるセミリャと関係が良好そうで何よりである。

 『喫茶店トールトロス』にいる人は、皆優しいからサティスにとっても居心地が良いのだろう。

 自立に向けていい事だと思う。

 俺自身はちょっと寂しいが・・・。

 まぁ、『転生者』である俺は、サティスの人生をもっと考えるべきだから、俺の感情は関係ない。

 「おはよう」

 サティスに抱き着いたブリッサの後ろには、自身の彼女を見ながら眼鏡を直す、空色サラサラヘアーの眼鏡美男子、ベンタロンがいた。

 「おう、おはよう!」

 俺は挨拶を返す。

 12歳を来月に控えたベンタロンは、ますます父親であるエスタシオナールに似てきている。

 眼鏡をくいっとなおす癖は相変わらずだ。

 「あぁ、フェリス。暫くだね。また強くなって帰って来たんだろう?手合わせ願いたい」

 眼鏡をくいっと上げながら俺に言ってくる。

 ベンタロンは、半成人になるにあたって、父親から『自警団』に入るように言われている。

 昨日まで『自警団』に体験入団していた事に加え、その入団期間と俺達がコルザの家に行く期間が重なってしまったため、しばらく会えていなかった。

 現在、俺に次ぐ4位の実力者であるベンタロンは、早く俺と『順位戦』をやりたいのだろう。

 望むところではあるが・・・。

 「良いけど、お互いに落ち着いたらな」

 今はお互いに忙しいからな。

 落ち着いた状態で正々堂々戦いたい。

 「分かった。次は勝って見せる」

 言って腕を組むベンタロン。

 本当に『アルコ・イーリス』の皆って、負けず嫌いだよなぁ。

 「「やっほー」」

 気の抜けた綺麗なユニゾン。

 黄緑色のマッシュルームヘアーが特徴的な双子のビエントとアイレだった。

 10歳の2人は、大分小柄である。

 仲良く手を振っている様子に微笑ましさすら感じる。

 俺も手を振り返していると、2人の更に後ろを歩く2人組が見えた。

 ジュビアとベンディスカである。

 ジュビアはまた背が伸びたらしい、現在、14歳である彼は成長期なのだろう。

 同い年のベンディスカが小柄なためにさらに目立つ。

 ベンディスカは、いつも通りの目元まで隠れるフードを被っている。

 2人とも来年には成人だ。

 『自警団』に入団希望らしい。

 この村の守りが更に協力になるに違いない。

 村の未来は安泰だな。

 ・・・さて、後はカリマだけだが。

 

 「よーし!全員揃ってるな!」


 言いながらいつの間にか俺達の元にやって来ていたセドロが大きな声で言い放った。

 何時も突然出てくる。

 それもタイミングよく。

 「おいおい、カリマが来てないぞ!」

 デスペハードがセドロに言う。

 「カリマならもう来てるぞ?」

 何言ってんだお前?

 とでも言いたげな顔で言うが、どこにも見当たらない。

 「どこにいるんですか?」

 ベンタロンが周囲を見渡しながら言う。


 「そこにいるじゃない」


 サティスが再びあくびをしたのだろう、瞼を擦りながら指を指す。

 デスペハードのすぐ隣。

 全員視線を向ける。


 「くっ」


 そこに、悔しそうな顔のカリマがいた。


 「うおっいつから!?」

 驚くデスペハード。

 「あんたが家出てからすぐよ」

 スレンダーな体から伸びる、長い手足。

 両脚は開かれ、左手は腰に、右手でセドロに憧れて伸ばしている綺麗なこげ茶色の長髪を払い答える。

 「まじか・・・また気づけなかったぜ」

 肩を落とすデスペハード。

 ふんっと鼻で笑うカリマ。

 まるで、いつもの事ですみたいに話すデスペハードとカリマ。

 「え、何がおこったんだ?」

 そんな2人の様子に俺は首を傾げる。

 突然カリマが現れたぞ?

 まるでセドロみたいだったぞ?

 「あぁ、フェリスがしばらく特訓してなかった時だもんな、カリマの『魔術覚醒』」

 デスペハードが教えてくれた

 なん・・・だと?

 「いつの間に・・・」

 カリマが答える。

 「・・・いろいろあってね、『魔術覚醒』したのよ、私の『限定魔術』」

 『魔術覚醒』。

 『天魔族』の血が流れるものなら誰でも使える『魔術』。

 また、『魔術』は全員が使えるようになる『基本魔術』と、人によって異なる『限定魔術』に分けられている。

 それらを使用できるようになるためには、それぞれの条件を満たし『覚醒』する必要がある。

 その条件は、『魔素』に触れる事だったり、気持ちの面や誰かとの接触等々、『覚醒条件』は様々である。

 そして、そんな『覚醒条件』を満たして使えるようになることを『魔術覚醒』と言う。

 つまり、カリマはなんらかの『覚醒条件』を満たして、自身の『限定魔術』を『魔術覚醒』させることが出来たのだ。

 「・・・一体何したんだ?」

 純粋な疑問である。

 「・・・秘密よ」

 そっぽを向く。

 頬が赤くなっていた。

 隣のデスペハードも耳まで真っ赤にしながら明後日の方向を見ていた。

 ・・・こいつら、なにしやがった?

 「・・・フェリス、深く聞いてはだめよ?」

 サティスがじとっとした目で言ってきた。

 ・・・サティスは知っているのか?

 くそう!一体何したらできるようになったんだよ!

 とても気になる。

 ・・・気になるが。

 サティスにあんな目で見られてしまってはもうなにも言えない。

 悔しいが引き下がろう。

 「くっ・・・わかったよ。ちなみに俺たちがカリマに気づけなかったのはなんでだ?それくらいは聞いても良いだろ?」

 俺の問いにカリマはまだ赤い頬で、むすっとした顔で答える。

 「『気配魔術』よ。わたしの『限定魔術』」


 『気配魔術』。

 『魔術辞典』で読んだことがある。

 気配操作が出来る『魔術』。

 鍛えれば国一つの存在を隠せるようになるらしい。

 ロマンのある『魔術』だ。


 「そうか、すごいな!」

 俺は思わず拳を握ってしまう。

 『魔術』・・・いいなぁ。

 すごいなぁ・・・。

 俺も早く使いたいなぁ・・・。

 「ま・・・まぁね」

 俺の姿に得意げに腕を組んで胸を張るカリマ。

 「さて、そろそろいいか?」

 俺たちの会話を待ってくれていたセドロが割り込んだ。

 「あ。すみません!どうぞ!」

 ちゃんとした言葉づかいでカリマが先を進めた。

 セドロに対しては敬意を表するのだ。

 「よし、では」

 ゴホンと咳払い。

 後に胸を張る。


 「今日は、みんなで『かくれんぼ』をしようと思う!」


 「『かくれんぼ』?」


 サティス以外のアルコメンバーの声が揃った。

 「鬼はサティス。サティスが見つけたらここに連れてくる。範囲は山の中まで含めた『プランター村』全域。最後まで見つからなかったやつか、全員見つけたサティスのどちらかには、『喫茶店トールトロス』での飲食一回無料券だ!」

 これ見よがしに木の板を見せるセドロ。

 「おぉお!」

 アルコメンバーが盛り上がる。

 飲食一回無料券は嬉しい。

 暇があれば行くのだ。

 1回分の小遣いが浮くだけではなく、好きな物を頼める。

 飲食一回と聞いて期限が設けられてないからと居座るような奴がいないからできる事だ。

 ・・・やる気がさらに出てきたぞ!

 俺は拳を握る。

 「師匠。景品は魅力的で、『かくれんぼ』も楽しいのでやるのは良いのですが、『かくれんぼ』にはどういった意味があるのですか?」

 カリマが手を挙げて問う。

 後ろのベンタロンも続ける。

 「あぁ、それは俺も気になっていた。『かくれんぼ』は遊びだと思う」

 2人は、頭脳派だ。

 特訓1つの意味を考えながら自分の糧にするタイプ。

 感覚派のサティスやデスペハードなど、考える前に動いて感覚を掴むタイプとは違うのだ。

 「よくぞ聞いてくれた!カリマとベンタロンは何時も欲しい質問をくれるから好きだ!」

 「あ、い、いえ」

 「ありがとうございます」

 真っ直ぐな好意で返されて照れるカリマとベンタロン。

 ベンタロンの隣で彼の姿を微笑みながら見つめるブリッサ。

 セドロもサティス同様、嬉しい事をさらっと言ってくれる。

 親子だ。

 あと、弟子が可愛いのだろう、すぐに好き好き言う。

 最近はさらに増えた気がする。

 「では、説明しよう!この『かくれんぼ』には2つの意味がある!」

 セドロが指を2本立たせて俺達に見せる。

 「1つはお前たちの隠密行動を鍛えさせる意味。もう1つは団結力の増強だ!」

 「お~」

 アルコメンバーの感嘆の声。

 「『かくれんぼ』で団結力?」

 俺は首を傾げる。

 『かくれんぼ』って個人戦じゃ?

 「鬼はサティス一人。見つかってもここに連れてこられなければ何をしても良し。協力して逃げ切れ」

 俺は戦慄した。

 共通の敵を作って叩こうってか!?

 サティスを!?


 「戸惑うなよ?サティスには説明済みだ。サティスは『かくれんぼ』、かなり強いぞ?おまけにここ最近のランキング1位はずっとサティスだ。舐めてかかるとやられるのは自分たちだって賢いお前らならわかるよな?」


 セドロがにやりと笑ってうとうとし始めていたサティスの元に行き、頭を撫でた。

 はっと、目を覚ましたサティスがきょろきょろして、周りが自分を見る目に気づく。

 それは、永遠のトップに対する対抗心。

 サティスはその目に獰猛な笑みを浮かべた。


 「ふふっ。いい目ね!ワクワクするわ!」


 バッと立ち上がってうずうずし始めているサティス。

 ・・・本気でやらなきゃやられるのはこっちか!

 「それじゃあ、質問ないなら始めるがいいか?」

 アルコメンバーが頷く。

 「あ、フェリスとカリマ、これはサティスの特訓でもあるんだ。遠慮せず、本気でやってくれ」

 あえて俺とカリマに向けて言う。

 つまり、家族って事で手を抜くなって事か。

 カリマは『気配魔術』大歓迎って事だろう。

 俺は気合を入れる。

 「分かった」

 隣でカリマも頷いていた。


 「では、期間は日没まで!開始10分前だ!思う存分隠れろ!!」


 セドロの号令と共にアルコメンバーは散り散りに・・・って団結力はどうした!!

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