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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第一部 乳幼児期 『5歳編』
38/938

ブリランテ 1

 去っていく後ろ姿。

 離れていく息子。

 去年は小さな猪でさえやっとだったのに。

 こどもの成長ってすごいわ。

 私はフェリスから意識を村の中に沢山いる猪たちへ向ける。

 

 フェリスは『異世界転生者』だった。

 怪しいと思い始めたのは本に興味を持ち、読み始めたあたりから。

 食事の前に手を合わせるおかしな仕草や、教えてもないのに頭を下げる癖。

 『樹皮紙』と言う、彼が作り出した紙。

 自身の身体に施す、異常な鍛錬。

 身なりに気を遣う姿。

 サティスへの異常な執着。

 見れば見るほどに不思議な子だった。

 

 実は、別の世界の夢を見る事がある。

 幼い頃に突然夢に見るようになった。

 硬い地面や、大きな建物。

 綺麗な花に、落ち着いた色の髪。

 見たことのない料理に、本や『魔術』のような何か。

 この世界じゃありえない黒い髪の人々が笑っている世界。

 何が何かは全く分からないそんな世界。

 決まって最後はとっても早く動く箱の中、大切な人の隣で幸せな感覚のまま目が覚める。

 

 それを踏まえて兄に何度も相談した。

 王国では異世界召喚研究を進めている。

 私は夢の件もあって協力していたが、まさか私の息子がそうなるとは夢にも思ってなかった。

 でも、兄と話していくうちにそれは現実味を帯びていった。

 最初はもちろん戸惑ったし、信じられなかった。

 それでもこの5年間過ごしたのは間違いなく夫との愛の結晶。

 息子のフェリスだ。

 彼の中にいる人が異世界の人であったとしてもそれは変わらない。

 あの子の大切な物は多分。

 サティスと友達。

 それから私たち家族。

 多分、この村も好きでいてくれている。

 息子の好きな物くらいは分かる。

 去年の件以来、会話がぐっと減ってしまったが、それでも分かる。


 最近は、私に気を使ってか『フェリス』であろうとしていることも。

 『サティス』を大切に思うばかりに過保護気味になってしまっていたことも。


 正直、私はまだ彼との距離感を測りかねている。

 あの子が大切な存在であるとともに、別の世界の人間なのだ。

 どうしたら良いのかわからない。

 でも、今、やるべきことは分かる。

 彼の間違いを止める事は出来た。


 後は、あの子の大切な物を一緒に守る。


 私は腰の真剣を抜く。

 どこにでもある真剣。

 だけど、夫が私の為に選んでくれた大切な剣。

 これで守ってみせる。

 小瓶を腰の鞄から取り出す。

 『カルマ』とトルベジーノが、ブエンと協力して『ディナステーア』に売りに出している物のひとつ。

 『魔物』用の興奮瓶。

 床に叩きつける。

 小瓶が割れて桃色の靄が広がり、甘い匂いが立ち込めた。

 「カリマ!デスペハード!ここは任せなさい!プランターじいさんの方、人手不足よ!」

 「「わかりました!」」

 仲良く戦場離脱したのを見送って腰を低く構える。

 興奮瓶の副作用で空腹感に襲われる。

 ちょっとお腹がすいているくらいが丁度いいのだ。

 興奮瓶の効果で私の方に誘引される『魔獣』たち。

 やがて、四方八方から私の元に突進してきた。

 総数36ね。


 「敵じゃないわね」


 整息。


 「『剣舞術』『修型』」


 繰り出すは剣舞術集団戦特化の最強型。


 「『ワルツ』」


 フェリス。

 頑張りなさい。

 私は貴方を応援しているわ。

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