決意の物語7
先生の質問にも答えず男性は無言で背中から銃らしきものを取り出す。
「えっ?いや、なにして…」
先生が何かを言おうとしたところで
「総員!退避!早く窓から飛び降りるんだ!」
としぐれが大声で言い放つ。当たり前だが、誰1人として動こうとはしない。みんな困惑してるのだ。
しかし、そんな中でもたった今1人だけが窓の方へ避難した。大智である。
「いや、しぐれも一体何を言って…」
バシュンと大きな音がなったと思ったら先生の頭を何かが貫いたようで血を吹きながら地面にドスンと倒れ込む。
「「キャーーーーー!!」」
クラス内は悲鳴で溢れかえった。全員が混乱し、もはや何をしたらよいのか分からなくなっている。こんな状態の中でもしぐれは逃げろと言い続ける。そのおかげなのか、一部の生徒は窓の方へ避難し始めた。
「大智!お前に全責任がかかってる!頼む!みんなを連れて窓から飛び降りてくれ!大丈夫死にはしない!」
大智はこれを聞いて心が決まったようで周りにいた生徒の何人かを無理矢理連れて窓から飛び降りた。連れ去られた生徒は絶叫をあげながら落ちていった。彼らがどうなったのかは今は分からない。そして、遂に男性の銃口が俺達に向いた。
「お前も逃げな。天草。ここは俺しか引き受けられねぇ。」
そんなこと言われてもここで俺が逃げたらしぐれが死んでしまうじゃないか。
友を見殺しにすることなんて出来ない。それは間違った行いだ。俺は首を横に振った。丁度そのタイミングでこの事態をどうにかするために先生たちが駆けつけた。
すると俺達に向いていた銃口が先生達の方へ変わり長い銃筒から連続して弾丸が発射される。
今ならしぐれを連れて逃げれると思った矢先、俺の先生達を見捨てるという間違った思考に罰を下すかのように2丁目の銃が取り出され乱射が始まる。
俺はとっさに身をかがめ、机を盾にするような体勢を取った。てっきり、しぐれもそうしているのだろうと思っていたが、なんとしぐれはまだ逃げれてない生徒を守る為に体を大の字にして銃弾からみんなを守っているではないか。
しかしそんな人の盾は乱射に耐える筈もなく、たった一発、しぐれの頭にヘッドショットを決めるだけで、崩壊した。先生よりも距離が近かった為か、しぐれの頭は完全に弾け散った。
顔のないしぐれの身体はすぐに地面へと倒れてしまった。この光景を見た生徒は思考に異常をきたし、叫び続けるだけの生徒や急に発狂しながら男性に殴り掛かろうとする生徒が一気に増えた。
勿論そんなことをしても全くの意味がなく、そういった生徒は1人残らず撃ち殺されてしまう。先生や友達が死に続けている中俺は何もできずにただ机を盾にして隠れているだけだった。
正しいと思ったことを力ずくで否定された今の状況下、何をしたらよいか分からないのだ。しぐれを助ける判断は友として正しい判断だったに決まっている。しかし、そんな友すら殺されてしまった。
「こんな、状況自体が間違ってんだ。本来あんな人を殺しまくる狂人がいていいわけがない。俺は正しいことをしたんだ。何も間違ってなんかいない。間違ってないんだ!」
なのに、なんで、なんで!俺だけじゃない。みんな正しいことをした。それなのに、それを全部否定された。どうして間違った奴が正しい奴を否定するんだ。
「どうして!どうしてなんだよ!間違っておきながらなんでお前が認められてんだよ!」
おかしい。おかしすぎる。あの狂人は排除されるべき奴だろ!
「君がその役割をやってみないかい?天種禎流君。」
「え?」
突然聞こえた謎の声の主は目の前に堂々と立っていた。道化の様な仮面を被り首には大きなマフラーのようなものを巻いている。服装は黒と赤を基本として、所々に白や金色の線が入っている。
「君は今のこの状況は間違ってると思ってるんだろう?」
「う、うん。こんなのはおかしいって思ってる。」
「変える力があったらこんな状況を正しい方へ変えたいかい?」
そんなの決まってる。
「当然だ。変えたいなんてものじゃない。是非変えてやる。そんな力があるのなら、どんなことでも正しい方へかえてやるさ!」
「そう。それは君の覚悟と受け取っていいんだね。」
「どうとでも受け取ればいい。お前が俺にそんな力を渡せるというのなら。」
こいつは、ただの人間じゃない。それぐらいは理解した。であれば、もしかするとこいつは俺を変えてくれるのかもしれない。そういう期待を俺はしていた。
「感づいたか。なら、もう何て質問するのかわかるね?」
「あぁ!お前の質問に対する答えはYESだ!よこすんだ、俺にその力を!」
「いいよ。諸々の説明は君の敵を倒した後でいいよね?」
「そうしてくれると助かる。俺は一刻も早くあいつを排除したいんだ。これ以上犠牲を出さない為に!」
すると腕に6cmほどの黒い物体が現れた。見ると引くタイプのつまみがあった。
「それを自分の方へ引いてごらん。君は望んでいたとおりの力を得れるよ。」
言われるがままにそのつまみを引く。
『翻訳』
いきなり俺の周りを黒い霧が覆う。その霧は俺の身体に侵蝕しながら、形をどんどん形成していく。やがて霧は霧散し、俺の形成された身体が露わになった。
「今や君の身体はなんでもできる。頭の中でどうやってあいつを倒すのかイメージしてごらん。」
あいつもどうやら俺に気づいたようで3丁目の銃を取り出し始める。
こちらも何か武器を用意しなくてはと思い、必死に想像して出来た武器は先が鋭くなっている短い槍のようなものだった。
俺が武器を手に入れると同時にあいつの発砲が始まった。
弾が当たるよりも速くというのを意識し続けながらあいつの後ろに回り込もうとする。しかしあいつも4丁、5丁といった具合で次から次に銃を出し続ける。
逃げ続けても犠牲が増えるだけではと考えた俺は覚悟を決めて弾幕の雨に飛び込むことにした。すると完全に俺に意識を向けることにしたのか全ての銃口を俺の方へ向けた。
そして放たれる多くの弾丸。それらを避けながら勢いよく相手の背後へ飛び込みそのまま手に持っていた槍で相手が振り向くより速く背中から心臓を貫いた。あとは一気にその武器を抜く。赤い血が溢れそれは次第に黒く変色していった。
「やったのか。」
やったという実感はないが相手が倒れて動かなくなったのを見てただやったのではと思った。
「おめでとう。これは間違いなく君の勝ちだ。これで間違いは正された。君の思った通りになったんだ。」
それを聞いて俺はようやく勝ちを確信する。
「やったんだ。俺はやって退けた。俺は正しいことを貫き通せたんだ。」
やっぱり正しいことをした奴が勝つんだ。そう改めて思えた。
「その通り。君は正しかった。君のお陰でこの正しい結果がもたらされたんだ。では、そろそろ説明の方へ入ろうか。」




