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パーティシペイター  作者: 後出しジャンケン
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決意の物語

※この作品は文章の稚拙さや表現の都合上、読者様を不愉快にさせる可能性のある演出がございます。

お読みする場合はご注意してお読み下さいませ。

???

2014年4月23日X県Y市14:00頃Z小学校にて銃撃事件が起きる。その事件による犠牲者はおよそ30人にも及び多くの生徒、教員、そしてたった一人の犯人までも犠牲になった。その際の犯人の死因だが、公には自殺となっている。しかし犯人の死体は背中から心臓に向けて真っ直ぐに半径4cm程の大きさのもので貫かれており、自殺というより他殺に近い形になっている。それからも日本中で殺人事件は起きる訳だがその犯人の殆どが他殺のような自殺を行っている。また、ある日を境にして殺人事件そのものが行われなくなり、やがて日本国民全員から殺人の概念が薄れつつあった。

という記事を見つけたんだけどさぁ…何コレ?全然ファンタジーじゃないやん!日にちなんてどうでもいいからさ、もっと幻想的なことを書かない?例えばさ、

「悲劇がもたらすミステリ―はやがてみんなを幸福にするハッピーエンドだった」みたいな。あぁ、何度思い出しても素晴らしい!たとえどれだけ挫けてもめげずに挑み続けた物語。誰の敵になろうともたった一人で成し遂げる物語。今にも語りたいなぁ!みんなを守るためたったそれだけのために…自分の正義を貫いて結果、本当にみんなを守ったんだ!あぁ素晴らしい!素晴らしい!

its amazing!!

さぁ語り始めよう!僕の最も感動した、まさに英雄の物語を!!

第1話

決意の物語

「いってきまーす!」

「いってらっしゃーい」

ガタン!とドアがしまる。今日も元気に学校だ。真っ直ぐに進むと交差点に突き当たる。すると、そこに見慣れた影が

「おはよう!しぐれ」

「よう、ここで遭ったが百年目!覚悟しろ天草ァ!」

「いや待て待て!俺は天草四郎じゃねぇよ!ちょッ痛い痛い痛い痛い!」

こうやって髪の毛を引っ張られながら登校するのもいつしか習慣になってしまった。髪の毛を引っ張り、天草四郎を敵対視しているこいつは徳田しぐれ。幼馴染みだ。また、天草四郎を敵対視している理由は、基本授業中寝ているくせに何故か、社会の天草四郎の授業の時だけ起きており、その際に社会担当の先生の滑舌の悪さのせいで「徳川」を「徳田」と聞き間違え、天草四郎は徳田一家に反抗していると勘違いしてしまったというわけだ。この時にしぐれは、

「ははぁん!成る程そういうことか!天草は我々徳田家に()()()をやろうとしてたわけだな!」

と謎の解釈を大声で言い、先生に

「おぉ、げきょくじょうにゃんてこてょば、よう知っとるにゃあ。りゃあなんでぃぇ、あみゃくしゃはげきょくじょうをしたって言えるきゃあせちゅめぇいちてみぃ。(おぉ、下剋上なんて言葉よく知っとるなぁ。じゃあ何故、天草は下剋上をしたって言えるか説明してみ)」

と説明を求められたため、しぐれは

「はん!愚問だな先生!そんな理由言うまでもないだろう!理由はな!天草は我らが先祖()()()()()に対し、弱い立場でありながら、反抗しているからだ!」

と反論。そして先生は

「ひゃははは!ときゅでぃあとしよぉりぃ?でぃあれぇでぃぁしょりゃ(あははは!徳田年寄り?誰だそれは)?」

と、大笑いする始末。勿論クラス内大爆笑であった。

ということがあったのに関わらずまだ、天草四郎を敵対視しているということは、余程メンタルが頑丈なのだろう。因みに江戸幕府が終わりを迎える大政奉還の授業には、怪我をしたということでその授業の日、しぐれは休んだ。誠に残念であると、クラスのみんなも社会担当の先生もぼやいていた。

で、もう一つの疑問。何故俺が天草四郎として敵対視されているのか?単純に仲が良いからというのもあるかもしれないが、最大の理由は俺の名字が天種(あまぐさ)だからだ。種は芽生えると草になるという人間に通用するわけもない理論をぶちかまして俺を敵対視しており、俺の名前である禎流(さだる)も、天草四郎時貞の「さだ」の部分が一緒だとして、俺のことを天草四郎と見ているわけだ。ふざけた野郎だ全く。

そうこうしている内に遅刻ギリギリで登校することができた。急いで教室に行き、先生にドヤられながら席につく。毎日同じことを繰り返しているが、どうも緊張感が払えない。何故かいつも後、何分で遅刻するのかと考えてしまうのだ。

「はぁ〜しぐれ君も禎流君もいつになったら余裕をもって学校につけるのかな?」

毎朝のようにこの言葉を投げられる

「ふん!我々に余裕はない!常に此処が命を落とすかもしれない戦場なのだ!」

といつものように同じようなことで反論するしぐれ。

「またそれ?もういいや。えぇと今日はみんな知ってると思うけど………」

といった感じで朝の会は始まる。今日は先生達の多くが出張で4時間授業だという。まぁ時間割で知ってはいたが先生の口から話されると妙な安心感がある。

「はい。というわけで朝の会終わるけど、何か質問ある人いる?」

「「ないです。」」

生徒一同特に何もないようだ。

「じゃあ、終わりま―す」

「起立、気を付け、礼!」

「「ありがとうございました。」」

毎日こんな感じで朝の会は終わり、少し休憩を挟んだあと1時間目が始まる。

1時間目 理科

今日の理科は久しぶりに理科室での授業だ。何をするのかは分からないが、どうやら教卓の上にはビーカーとマッチがおいてあるようだ。「何か燃やすのかな?」「じゃあ、俺はお前を燃やしてやる」「そんなことしたら、火事だぞ」

などなど理科室内は楽しみにしていた生徒が複数いるようだ。そして、しぐれは安定のおねんねタイムである。

「はいはい、静かに静かに!あんまり騒ぐようだったら実験止めるからね!そしてしぐれ君!あなた何やってるの!起きなさい!」

理科室では静かにというのがこの学校のルールではあるが皆あまりの好奇心のためこのルールは破られがちだ。しぐれに関してはルールを守ってはいるが態度がなぁ…。そんなこんなで実験を始める際はだいたい理科の先生に怒られて始まる。

「今日は前の授業でやった気体の性質を掴むために実験をやります。はぁい、ところでしぐれ君空気中で一番多い気体って何かな?」

「Zzz…ッハ!?今この我に対しなんか質問があった気がするぞ!いや、気のせいか。よし寝よう!」

「しぐれ!質問に答えなさい!」

「ヒッ!?おぉ、理科の女神よ怒りをおさめたまえ…よし、ここからは真面目に答えましょう。えぇと空気中で一番多い気体?……空気と言えば酸素。酸素と言えばO₂。とはいえ、O₂は二番目だった気がするから、一番少ないのは酸素原子O。次がO₂。最後がO₃でオゾン。つまり一番多いのはオゾンだ!」

すると他の生徒が

「先生!オゾンってなんですか?」

すると先生は大きなため息をついて、

「しぐれ君にする質問じゃなかったかもね…えぇとオゾンっていうのはね………」

とオゾンについての説明を仕方なくやっていたようだった。で、説明の後

「しぐれ君のせいで実験の時間が少なくなったじゃない。えぇい!もうこうなったら、物凄く簡単な説明しかしないから、皆よく聞いて実験を、やってください!」

実験の内容は酸素の割合が多いビーカーと二酸化炭素の割合が多いビーカーがあり、その中に火をつけたマッチをつけたらどうなるかというものだ。すると本来なら寝ている筈のしぐれが珍しく起きており、

「今から面白いものを見せてやろう。」

と言いながらマッチを三本取り出し、それぞれに火をつけていくではないか!

「総員退避ッ!」

しぐれは班の皆を離れさせ酸素の多いビーカーにマッチ全てを入れ込んだ。当然先生も青筋を浮かべながら来るわけだが時すでに遅し。凄い爆発音と共にビーカーはひびだらけになってしまった。

「この馬鹿!なにをやってるの!?これで皆が怪我したら、どう責任とるつもりだったの!?しぐれ!」

しぐれの度を過ぎだ行動に流石の先生も大激怒。そんな中しぐれは

「まぁ、責任は取りきらんから、先に皆を逃がした訳だ。あとは、先生の簡潔な説明の中にこの危険性を示すようなことはなかった。だから、これを我が身を以て実行したまでよ。」

そんな言い訳が通用するわけもなく、しぐれは先生に外に連れ出され、説教の時間だ。そんな中代わりの理科の先生に来てもらい、無事にしぐれを除いたクラスメイト全員は実験を終えることができた。とはいえ、火をつけたマッチを酸素のビーカーに入れた時はどの班もしぐれまでとはいかないが少なからず爆発音はしていた気がする。なら、強ちしぐれのやっていたことは実験としてはあっていたのだろうか。

キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

しぐれはムスッとしながら、教室に帰って来た。

そんなしぐれを見て俺はしぐれに話し掛けた。

「全く馬鹿だなお前。いくら奇想天外なことをしているとはいえ、あれはやり過ぎだって考えてみれば分かることだろ?」

「…………うるせぇ。オメェ人を労る気持ちはねぇのか?」

「お前あれで被害者面すんのかよ…。あれは先生が正しかったろ。」

「ハッ!オメェと話してても埒があかねぇ!次の時間なんだ?」

「えっと…外国語みたいだぞ。」

そう言うと俺達二人は外国語の準備に取り掛かり始めた。

2時間目 外国語

「Good morning everyone How about you?」

「Good」「Happy」「Tired」

などなど先生の質問に対して生徒が答える感じで外国語は始まる。因みに俺は「Fun」と返した。小学6年生でFunを知ってるのはおそらく俺ぐらいだと思ってる。そんな俺がマウントを取っている中しぐれは安定のSleepingtimeだ。勿論外国語の先生からも

「Oh!? There are sleeping boy!You must't sleep!」

と英語の意味は分からないが、なんとなく言っていることが分かりそうなことを言われている。それでも起きないしぐれに対し先生はある呪文を口にする。

「Are you ready?」

「「WAKEUP!!!」」

それでも起きないので……

「「WAKE UP!WAKE UP!WAKE UP!…………」」

とクラス中でしぐれに対してのみ言い続ける。すると流石のしぐれも、

「OHHHHH!?very rowdy!!」

そして先生はしぐれの言葉を訳してくれる。

「おおおおお!?とても騒々しい!!って、しぐれが寝てるのが悪いだろ!」

至極当然の回答。しかししぐれは

「Why?What is evidence?

Maybe it's caused by AMAKUSA!」

「なぜ我が悪いの?証拠は何?きっとこれは天草によって引き起こされた!また禎流のせいにするのかよ!お前これでわけのわからん言い訳したの何回目だ!」

「Don't remember」

「覚えてないって…そういう話じゃなくてだな………もういい!とりあえず授業受ける時は起きておきなさい!」

という風に無理矢理やり込められ、しぐれは渋々起き出す。

「は〜い、授業始めるぞ。open your textbox page 32」

やっと平常運転に戻り授業が開始される。にも関わらずしぐれは既にうと寝状態。もうこれ以上はきりがないと思ったのか先生も注意することなく授業に移った。

「Look at this picture what is it」

教科書を見るとそこには卒業式らしい写真があり、写真の近くに英語が書いてある。どうやら先生はこの絵が何なのかということを聞いているようだが殆どの生徒は英語が理解できないため、暫く沈黙が続く。すると突然

「Graduation festival!」

しぐれが起立して言い出したではないか!?先生もそれに驚いた様子だったが、

「何が卒業祭だアホ!どう考えても卒業式!graduation ceremonyだろ!」

と的確な突っ込みを入れる。しかししぐれはやはり寝ており先生の話を聞いていない。青筋を浮かべながら呆れる先生は授業に戻り、

「はい、というわけで今回は卒業式がテーマです。皆はまだまだ先だって思ってるかもだけど割とすぐに卒業式って来ます。なので今回は卒業式をテーマに小学校5年間で思い出に残ったことや、将来何を目指すかなんかを英語で表現できるようになるのが今日のめあてです。」

おぉ、何たる高難易度か。あんまり英語を知らん俺達に対する課題にしては大きすぎるだろ。とか考えてるうちにプリントが配布される。プリントには①小学校5年間の思い出(日本語)と書いてあり、その下に英語に直してみようとある。そんな形式で②中学校でしたいこと③中学校を終えて将来したいこと、というように書いてある。

「もし、分からんことあったら先生に遠慮なく聞いて下さい。」

うん、遠慮してでも聞くわ、こんなの。そして案の定先生の周りには女子が集まっていく。では男子は何処に集まるのか?勿論しぐれだ。男子はしぐれを囲むようにして包囲し、次から次へ分からない英語を質問することでしぐれを嫌でも寝かせないようにしている。

「まずお前ら日本語考えてから聞けよ!次から次に質問ばっかじゃねぇか!我が寝れんだろう!」

「いや、寝ちゃだめだろ」「寝かせるわけねぇだろ」「お前に寝る権利は無い」等しぐれに対し辛辣な皆。

「おい天草この状況どうにかしたらどうだ!」

「俺に振られてもなぁ、皆が言ってることの方が正しいから言う事聞いたらどうだ?」

「やはり天草お前はダメだ。ったく、日本語出来たやつから我に聞きに来い!」

とぐだぐだぐだぐだしながらもクラスの中の大真面目、軌条大智が一番最初に日本語を書き終えた。

「流石は大智だ。よぉし、お前の奴を英語に直してやろう。どれどれ…よし!①の英語はなMy best memory is sports festivalって書いとけ。」

「いや、どう書くか分かんないんだが……。」

「クソが、お前らスペルも分かんねぇのか!」

「「当たり前だよなぁ!」」

「その当たり前を変えていける人に育って欲しいよお前らには…」

そう言いながらもしぐれは大智の日本語を英語で書いている。そして、

「ほい!これで脱稿だ!①はさっき言っただろ、②はI will join soccer club、そして③はI want to be pro soccer playerだ。」

「おぉ有難うしぐれ。」

大智は大真面目なのでこんな奴にすらお礼を言っている。するとしぐれは照れ臭そうに

「お、おう、感謝を忘れるなよ!」

素直にどういたしましてと言えばいいのに。まぁそれが出来ないのがしぐれの人間性だろう。とはいいつつしぐれは次から次に来る男子の日本語を英語に変えている。ようやく男子の半分の日本語を英語に変えてやったところで

「そういや天草よ、お前まだ出来てねぇの?早くしないと疲れて寝てしまうぞ?」

「おっ、そうだな、じゃあ、見てもらおうか。」

当たり前のようにプリントをしぐれの元へ差し出すと、しぐれは嫌そうな顔をして、

「もうちょと、感謝の意を添えたらどうだ、感謝の意をよぉ……。」

「何を言っているんだか。お前が言い出したことだろうに。」

「よし、お前には二度と救いの手を差し出さんからな、覚悟しとけ天草!」

と言いつつも、俺の日本語に目を向けながら、英語に変えていくしぐれ。そしてしぐれは何を発見したのか一人でクスクス笑い始めた。すると当然周りの男子も俺の日本語に何かあるのだろうと思い、俺のプリントを見るわけだが、見た男子の殆どは何が面白いのか分かっておらず見たごく一部の男子だけ理解が出来ているのか笑っている。俺も何が面白いのか分からず

「おい、何が可笑しいんだこの野郎。笑ってないで英語に直す作業をしたらどうだ?」

と思った通りの疑問と要求を訴える。しかし、しぐれ達の笑いは中々おさまらず、ついにしぐれが口を開くと

「お前将来の夢が裁判官って、少しは現実を見たらどうなんだ?ははは!」 

「はぁ!?そ、それの何が可笑しいんだ!お、俺の夢だ!笑うことはないだろう!」

「まぁまぁそうイキリ立つなって。そういうとこだぜお前が笑われるのは。」

言っている意味がさっぱり分からない。どうしても納得のいく理由が欲しいと思い、

「そんなアバウトな理屈じゃ分からねぇだろ!もっと具体的に理由を、話したらどうだ!」

と問いただす。しぐれはこのことに対し、

「あ、理屈だぁ?裁判官になるにはその理屈を自分で納得いくようにしないといけねぇんだぜ?そんなのを人に求めてる時点でお前が裁判官になるのは不適当なんだよ。」

「ますます意味が分からないぞ!裁判官の何処に理屈を自分なりに納得させる要素があるっていうんだ!」

「まぁまぁ落ち着けってお前ら、そんなギャーギャーいがみ合ってても仕方がないだろ。要は禎流に納得のいく理屈を話してやればいいんだろ?じゃあわざわざしぐれもまわりくどい言い方しないでストレートに言えばいいじゃんか。」

俺たちの口論に呆れたのか、一人口を挟む奴がいた。クラスで中立の立場を保っている(自称)という覇山智気(はやまとしき)だ。すると納得したのかしぐれは

「そうだな。それもいいかもな。じゃあ、率直に言うとお前には裁判官になるに於いて必要な心持ちを備えていないんだ。」

いや、だからそれはなんなんだと聞こうと思い口を開こうとする前に

「まだ、分かりにくいなしぐれ。簡単な話、禎流には人の心を理解する能力が不足し過ぎているわけだ。お前は善悪だけで物事を判断する傾向がある気がする。でも禎流が判断する善悪って何を基準にしてるんだ?多分お前の価値観だろう。裁判官の基準は法か己の良心だ。禎流の価値観は裁判官に必要な良心として相応しいのか?いや、悪いやつをただ間違った人間としか見ることが出来ない禎流には相応しいものじゃない。」

おお、成る程。俺には確かに善悪で判断したがる癖がある。その際に悪は悪として処理しているのも事実だ。これをしぐれの言っていた理屈云々に当てはめると俺は有罪判決が出た人間を裁くときにそいつが犯行した理由を考えずに判決を下すだろう。そのことを裁判官の理屈付けと解釈できるわけだ。

「成る程ね。しぐれのより納得できる理由だな。やっぱしっかりとした理由が言える智気はすげぇや。」

としぐれをけなし智気を褒めるようなことを言うとしぐれはムスッとなって

「ふん!我が言葉を理解できんだけの低能が、何をほざくか!」

といいながら、将来の夢の欄を英語に変えようとした時だった

「………………えぇと………裁判官って、英語でなんやったっけ?………」

としぐれから驚愕の一言が。

「お前が分からんなら先生しか分からんやろ」

当然の一言を入れる智気。

「いや、待て……確かジャッジメントが審判みたいな名詞だったから、それにerを付けてジャッジメンター。スペルはjudgementerか?」

お、なんか格好いいやん。

「っとこれでいいか。はい次!」

キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

「は〜いおしまい。プリント集めて挨拶。」

おい、男子終わってないぞ。どうすんだこれ?そんなことはお構いなしにプリントが回収されていく。男子の半分近くが、終わっていないことを先生が確認した後、

「は〜い、挨拶して終わっていいぞ。しぐれは残っとけ。」

挨拶が終わりしぐれ以外で教室に戻り2分程雑談や次の授業の準備をしているとしぐれがブルブル震えて帰ってきた。

「おいおい、お前どうした!」

そう声を掛けてやると、

「まさか裁判官の英語がjudgeだったとは……。ははは…。」

「いやいやお前そんなことで怒られたのか!?」

「あれは怒りじゃない。明確な殺意だ。本気で我を殺そうとしたんだあの先生…。」

「いや嘘つけ!お前ほんとに何があったんだ!」

「授業中に寝るなだとさ………」

絶句。思っていたよりも浅いことだった。

「それは怒られて当然のことだろうに……」

「次何?」

「体育」

そして体育の準備に取り掛かる。運動場に行く途中で聞いた話だが、しぐれの書いたジャッジメンタ―は、英語の教室の前に創作英語として飾られたらしい。

3時間目 体育

「「いっち、にー、さん、しー、ごー、ろく、しち、はち」」

体育は準備体操から始まる。勿論ちゃんとやらなければ1からやり直しだ。そうなるのが面倒さく、皆に迷惑を本格的にかけるからか、流石のしぐれも準備体操はきちんとやっている。そして、準備体操が終わると

先生が、

「今日もサッカーやるぞぉ。チームごとに並べぇ。」

と言っているなかしぐれは身長の高いやつの後ろに隠れて軽く寝ているようだ。皆がチームごとに並び始めるとしぐれも起きて並び始める。こいつは何故か体育の時間はやや真面目なのだ。チームごとに並ぶと先生は

「う〜ん…禎流と大智が一緒のチームってのがなぁ…。サッカー経験者だろお前ら。また前みたいなことにはしたくねぇなぁ」

前みたいなこととは、俺と大智で他のチームをフルボッコにしてしまったことだろう。それ故にその時間からサッカーの授業は先生からも面白くない、と思われてしまったのだ。それを感じとったのか大智は

「じゃあ、僕が他のチームに行きますよ。」

流石大智だ。偉いな。そうして大智は他のチームに行き、ボールの蹴り合いを終え、ゲームが始まるのだった。

「挨拶ぅ!」

「「よろしくお願いします!」」

先生の合図と共にゲームが始まる。チームはAとBの7人ずつに分かれており、俺はA、大智はBにはいっている。Aの方が運動神経がいいやつが多く、Bの方は運動神経がめっちゃいいやつが1人いるだけで、他はそこまでといった感じだ。しかし、チームAにはしぐれがいるという致命的な欠点がある。あいつは何をしでかすか分からないうえに自分からボールを取りにいくようなこともしない。さらには自分から率先してキーパーをしたがるのに来たボールを無視するのだ。本人はルールは分かっていると言ってはいるが実のところ本当に分かっているのか、分かったうえでふざけてるのかは不明である。

ゲーム開始時ボールはチームAが取れた。俺にかかれば、多少運動神経がいい奴等ぐらいならボールを取られずにゴールにシュートできる。ただ大智と運動神経がめっちゃいいやつ原熊永理久(はらくまえりく)にはボールが取られないという保証はない。特に大智はやばい。そのため大智を警戒しながら相手のゴールを目指しているのだが、中々大智が見当たらない。大智が攻撃してこず、楽々とシュートが入る距離までくると、永理久が急に攻撃を仕掛けてきた。ずっと俺の右足ばかりを狙ってくる永理久。そのせいで中々シュートするチャンスが作れない。さらには運動神経がそこそこいいチームBの奴らに囲まれ最終的には永理久にボールを取られてしまった。すぐに思考を切り替え永理久からボールを取ろうとしたが既に永理久のもとにボールは無くチームAのゴールの近くにいる大智のもとへ渡っていた。成る程、大智はそうやって待機していたのか。このピンチを救えるのは最早キーパーのしぐれしかいない。

「しぐれ!なんとしても死守しろ!」

そう呼び掛けたが、まさかのしぐれはゴール前で寝ていた。しかし大智は気付かずにシュートしてしまい、大智の蹴ったボールはちょうどしぐれの顔面にぶち当たる軌道を描いている。大智も蹴った後に事態を察し、慌てて自分の蹴ったボールを止めようと走り出したが勿論間に合う訳もなく、そのまま……

バコン!

しぐれにヘッドショットを決められた。

「おい!どうした!?」

鳴り響く先生の声。体育の時間は男子と女子で分かれて行動しており先生はちょうど女子の方を見ていたため何があったのか分からず、人が倒れている様子を見てやってきたのだろう。

「僕がやりました。」

正直すぎる大智。

「いや、やったって何を!?」

先生の疑問。

「僕がしぐれを殺したんです。」

大智の変な思い込みで先生は困惑したような顔をみせている。そんなことよりも、しぐれを早く起こさないと大智が責任を取って警察に自首しかねない。それぐらい大智は責任感が強いのだ。それをクラス内全員知っている為何が何でもしぐれを叩き起こさなければならないのである。

「脈はあるぞ!」

クラスの中の誰かがしぐれの生存を確認する。しかし、しぐれを蹴ってもしぐれの隣で大声を上げてもしぐれは起きようとしない。これはマジで気を失っているようだ。先生も大急ぎでしぐれを保健室に連れて行こうとしている。だが、俺は知っているそんなことをしなくてもしぐれを起こす方法があることを。俺はしぐれの隣へ行き

「しぐれ、お前は大智に攻撃されたんだぞ。」

と一言。すると、しぐれは目を開眼させ、すぐに意識を取り戻した。そして

「大智!お前は何も悪くないからな!気にすんなよ!絶対に!」

と大声で叫んだ。俺の一言のおかげだろう。俺が放った一言はおそらくしぐれだけでなく、大智と同じクラスの者なら、誰でも意識を復活させることができる。それぐらい大智のことを皆骨の髄まで意識しているのだ。大智は過去にしぐれがやったことを自分の責任不足として、先生に自首したこともあるため、しぐれはもう二度とそんなことをさせないように誰よりも大智のことを心掛けている。だから、しぐれには暴力や大声よりもこの言葉のほう効くのだ。そしてしぐれは

「我は大丈夫だ…。早くゲームを続けようじゃないか。」

と格好をつけるような事を言う。まぁ実際は大智に気を遣わせないためだろう。しかし、ここで先生のストップが

「いや、お前頭にボールが当たってんだからまずは保健室にいかないとだろ。」

「寝てたんだ。寝てる時は頭への被ダメが軽減されるんだぜ。最近大学で言ってたぞ。だから我は大丈夫なのだ。」

「嘘つけ。いいから行くぞ。」

するとしぐれは急に小声で

「後から行く。別に頭が痛いわけじゃないから、どうせキーパーだしゲームくらいは続行させれるんだ。もし、無理だったら自分で先生に言うよ。先生だって生徒の意志を尊重しなきゃならないだろう。」

「そこまで言うならやるだけやってみろ。ただ絶対に無理をしてはいかんぞ。」

「任せとけ。」

先生とのやり取りを終えたあとゲームを続行すべくキーパーの位置についた。すると大智がしぐれのとこに来て

「大変申し訳ない。ちゃんと僕が出来てたらこんなことにはならなかった。もし何かあったら言ってくれ。絶対に責任は取る。」

これに対ししぐれは焦りを感じたのか

「いやいやお前は本当に何も責任取ることないから!もとはといえば審判とボールを取られた天草が悪いんだ。あいつらがちゃんとやっとけば我もお前もこうならずに済んだんだ。だから責任を取るのはお前じゃなくてあいつらの方だぜ。」

唐突に悪者にされる俺と審判、智気。これはただの言いがかりなので反論せざるを得ない。

「俺と智気よりお前が寝てるのが一番の原因だろうが!そもそもなんで体育中に寝ようって思えんだ!」

これに便乗し

「そうだ!お前の睡眠が一番の原因だ!中立の俺が言うんだ!間違いない!」

「お前はそこまでいくと、中立という立場の悪用だぞ。片方に味方してんじゃねぇか!」

「片方に味方したからって、中立を崩したわけじゃないぜ。しぐれ。俺はな中立の立場として考えた結果お前を悪いと考えたわけだ。たとえ俺と禎流が悪いとしても、俺たちの能力の問題だからこの時点ではどうすることもできない。しかしお前はなんだ?お前は起きていればただそれだけでこの事故を防ぐことができたんだ。さらに言えば授業中に寝るということ自体がモラルやマナーとして大きな間違いだぜ。」

するとしぐれは急に自分には関係ないというような顔をして

「お前らさ、なんかわけわかんないこと言ってるけどサッカー続けたくないんか?」

「「お前が言うなや!!」」

俺と智気は呆れながらも反論するしかなかった。理由は分からない。ただ、反論するしかなかったのだった。そして何もなかったようにサッカーは再開される。とはいえ残り半分くらいしか授業時間もなく、思う存分サッカーができるわけではない。まぁ、やらないよりはましだが。ゲームが始まるとボールは今回チームBに渡った。勿論大智が攻めて来るわけだがどうも勢いがない。取りにいけそうなので取りに行くと割と呆気なくボールを取ることができた。そのまま相手のゴールを目指すと変わらず、永理久が邪魔をしてくる。こいつは変わらず元気だ。しかし俺とて同じ相手に二度も取られるほど弱くない。また大智のことを念頭に入れなくて良い為、目の前の状況に集中できる。そうしている内に相手のゴールにボールをシュートできる寸前になって背後からボールを取られた。何が起きたのか分からず後ろをみると、まさかの大智が動いていた。あいつは切り替えが遅い男だ。本来なら明日くらいに切り替えてる筈なのだが今回はどういうわけかもう切り替えている。何が原因なのかと周囲を見回しているとゴール前でしぐれが得意そうな顔をしている。おそらくあいつが原因だ。あいつが何らかの発破をかけ大智を切り替えさせたのだ。証拠はないがあいつならしそうな気がする。チームAのやつらは一生懸命に大智のボールを取ろうとするが中々上手くいってない。俺も合流して取ろうとしたがそれより早く大智はボールを蹴りゴールにシュートを決めた。これでBは2点決めていることになる。残り時間も約5分せめて1点は取りたい。ここは守りは2人くらいであとは攻める役にまわらなければ点を取れる可能性が低い。このことをチームAに伝え、俺達は攻めるほうに意識をむける。初動パスをまわしながら相手チームのゴールの方へ攻める。その際俺は永理久と大智の妨害を徹底する。とはいえ、1人で2人も相手できるわけないため、最低でも大智を動かすことだけは避けたい。この状態を維持しながら攻めていると、遂にチームAから相手のゴールへシュートする奴が現れた。が、相手の運がいいのか、そのシュートはキーパーによって防がれ、キーパーの靴に当たったボールは跳ね返った。この機を見て永理久は動くがボールが跳ね返った先にはチームAのメンバーがおり、そのメンバーによりシュートが決められた。どうにか1点を取ったところで、笛がなりゲーム終了の合図がなされた。その後は挨拶を終えて授業も終了となり、しぐれはトイレに行くと言ってその場から去った。感のいい奴らならしぐれがこの時にとった行動の真意が理解できるだろう。そう、あいつは今から保健室に行くのだ。確信している。というか、先生には後で行くって言ってたな。そして、教室に戻り次の授業が何かを確認しているとしぐれは氷を頭に抱えて帰ってきた。自分でせっかく保健室という単語を隠したのにこれではバレバレだ。流石に大智も察したようですぐに大丈夫かと声をかけにいっている。感のいい奴らと俺は、ため息をつき駄目だこりゃと言わざるを得なかった。そうこうしながら、本日最後の授業への準備を始めるのだった。

4時間目 道徳

本日最後の授業は道徳だ。これが終われば帰れるということで一部の生徒たちは浮かれている。そのせいか授業始めの挨拶の声がやや大きかった気がする。

「朝の会で伝え忘れてたけど今日はこの時間が終わったら掃除なしで帰りの会なので間違えないように。」

おぉ。つまりこれで今日は学校が終わりなわけだ。帰って誰かとゲーセンにでも行きたいな。と思いながら道徳の教科書をめくっていると、今黒板に書いてあるタイトルと一致するページを見つけた。道徳の授業は基本教室で先生は変わらない。因みに俺達の担任の先生は音楽の担当だ。

「はーい、教科書の34ぺージを開いて下さい。」

先に開いていた俺は優越感に浸ることができた。優越感に浸りながら、黒板を見ているとめあてが書かれ始める。チョークが黒板に当たる音は中々に耳心地がいいなと思いながらめあてを道徳のノートに書き写す。すると

「キュキィー!」

と耳障りな音が鳴り響いた。黒板に先生の爪が触れたのだろう。なんとなく隣を見ると睡眠を邪魔されたのか不機嫌そうなしぐれがいる。確かにあの音は気持ち悪くなる音である。そんなこんなでめあてを写し音読に入る。今回は珍しく一列目の後ろからスタートだ。

「間違えることの正しさ。作 ごま じょうゆ。ある日………」

と音読が始まる。見た時も思ったのだが、タイトルといい作者といい、絶対突っ込みが入りそうな作品だ。音読で俺が当たるのは何処になるだろうかと文を先読みしているとこのストーリーに妙な違和感を覚えた。その時に音読の順番がまわってきた。読み終えると俺が感じた違和感を共有すべく隣のしぐれを起こし感じた違和感を話した。するとしぐれは

「お前らしい感じ方だな。まぁ、皆も殆どがそう感じてるだろうし、お前の感覚も間違ってはいないんだろうな。天草。」

「それじゃあ、俺の感じてることは正しいってことだよな?」

「そこだよ、天草。お前の感覚は間違ってないだけで大正解かといわれるとそうじゃないんだ。感覚が正しいか正しくないかなんて二者択一じゃないんだぜ。」

俺の癖を注意したと言う事以外何が言いたいのかいまいち分からない。

「ちょっとしぐれたち!何を話してるの!他の人が音読してるでしょ!」

怒られてしまった。しぐれが何か反論するかなと思ったがそういったこともなく俺としぐれは先生が目を放すまで警戒し、目を放してから俺はノートに目を向け、しぐれは寝始めた。しばらくすると音読が終わり先生は登場人物の確認とどういう話であるのかを黒板に板書する。内容はある小学校の話で、3人の生徒が1人の生徒をいじめ、自殺に追い込む。そして、その3人は人殺しとしてクラス内から除け者にされその3人すらも自殺を選ぶ。この状況を知った先生はクラスに対しお前たちが人を殺したんだ、と説教し、あの3人は間違ったが少なくともお前たちよりは正しいことをしていた者達だ、と生徒たちに言い聞かせて話は終わった。ざっとこんな内容だ。何か腑に落ちない内容だなと思っていると、先生は黒板に板書を終え、

「正直、先生もこの内容はおかしいと思ってるけど、1つ共感できるところがあって、間違えた人を皆で除け者にするのは間違ってると思います。皆はどう思う?班にしてこの物語で共感できるところを話し合って下さい。」

と指示した。このクラスはだいたい4人か5人の班になる。俺の場合は4人班だ。俺、しぐれ、栗蔵 愛妹(くりぐらいとめ)疾殻 友美(はやがらともみ)の男子2人女子2人メンバーになる。早速俺は

「共感できるとこなんて無くね?なんか全部おかしい気がする。」

と率直な感想を述べる。すると愛妹は、

「そんなことないよ。先生がさっき言ったことは共感できるでしょ。」

とのこと。友美もそれに頷いている。これはしぐれにも意見を求めた方が良いのかもしれないと思いしぐれを起こす。

「なぁ、しぐれ。この物語の共感できるところって何かあるか?」

起きたしぐれは

「無いことは無いだろう。例えば自殺するなら高い所に行くとかな。」

「お前それは、共感しちゃいかんだろ。そもそもお前自殺とは程遠い存在だろうが。」 

俺達の会話に女子達が付いてこれていない。当然だな。

「あんまり、自殺、自殺言わない方がいいよ。縁起が悪い。」

普段は無口な友美が珍しく口を開いた。

「わ、悪ぃ。不快にさせちまったか。反省、反省。」

しぐれも珍しく反抗せずに謝っている。いつもは男女関係無く口ごたえをするもんなんだが。

「それで、しぐれ君はこれのどんなところに共感したの?」

愛妹は興味があるのかしぐれの感想を聞こうとしている。

「どんなところ?まぁ、全員の行動理念?そこには共感できるなって思ったな。」

しぐれなら共感してもおかしくないな。確かにこの物語はどことなく奇想天外ぶりが目立っていた気がする。

「それで、全員の意見を聞いたわけだけど、禎流君はなんで共感できないの?」

おっと、振られてしまった。理由?そんなの単純。

「間違いを無理矢理正しいって言ってるだけの物語だから。」

「お前……。まぁいいや、具体的に何処が間違いで何が正当化されてんだ?」

しぐれは呆れつつも簡略化された理由の真意を聞きただす。

「簡単な話。人を自殺に追い込むことはどう考えても間違ったことだ。それをこの物語の先生は正しいと言う風に言っている。さらには自殺に追い込んだ奴らを悪く言ったことに対して先生は間違いだと言った。これは逆に正しいことを間違いだと言っている。この不可解なことが成り立ってるから俺は共感出来ないんだ。」

「つまり禎流はやられたやり返すは正しいことだって思ってるってこと?」

ウゲッ。先生に聞かれていたようだ。急に先生から質問されてしまった。

「はい。悪いやつに悪いと言っているだけなので、正しいことだと思います。」

「それを繰り返して結果的に負の連鎖になったとしても、やられたらやり返すは正しいと思う?」

出た。あまりにも定番すぎるこの疑問。悪を糾弾し続けた結果が負の連鎖になる。何度も言われてきたことだ。故に答えも決まっている。

「たとえ負の連鎖が起きたとしてもそれは正しいことをし続けた結果なのでそれは当人たちにとっては間違ったことじゃないんだと思います。だから俺はやられたらやり返すは正当なことだと思います。」

これを聞いた先生は納得したように頷いている。

「禎流の言ってることは間違いじゃないかもだけど、正しいとも言えないね。例えばの話だけどこの物語であの3人がいじめじゃなくて注意であの子を圧迫して死に追いやったとしたら?この結果は禎流の言った間違ったことにならないかな?」

「………そう……かも?」

なんか無理矢理言いくるめられた気がするけど先生が言ったことも一理ある。つまり

「正しい行いが必ずしも正しい結果をもたらすとは限らない。だろ先生。」

しぐれが急に話しだした。なんだこいつさっきまで黙ってた癖に。

「そう。先生が言いたいのはそういうこと。正しいとか間違ってるとかで考えるのはいいけどあんまり強く意識しないようにね。」

「アッ、ハイ。」

と素っ気ない返事をすると先生は他の俺の考えに興味が移ったようで

「それで、禎流の考えは変わった?」

と聞いてきた。

「いや、加害者の方に多様な見方があるのを分かっただけで、俺の考えは変わらないです。」

「そっか。変らないか。あはは。」

と先生は笑って去って行った。

「先生と禎流君の会話、難しすぎて分からなかったな。」

愛妹は疑問を口にする。これに対ししぐれは

「なら、例え話で考えようぜ。もしお前に妹が出来たとして、その妹が友達の物をふざけて壊したとしたらお前はどうする?」

「そんなの怒るよ。だって、ちゃんと良い子に育って欲しいもん。」

しぐれは得意気になってさらに質問を仕掛ける。

「じゃあ、何か正当な理由があって妹が人の物を壊したとしても、お前は怒るか?」

「正当な理由?まぁ、私が納得できる理由なら注意するくらいで別に厳しく怒りはしないかな。」

「その理由がお前の為だったとしてもか?」

「え?私の為?」

「そう。妹がそれをしないとお前が何か不利益を受けるんだ。そうならない為に妹は物を壊した。こんなにお前の為を思ってるのに、それでもお前は注意するのか?」

愛妹はう〜んと悩み、ふと顔を上げて

「わからないや。私どうするんだろう?」

これを聞いてしぐれはより自慢気になり

「そうだな。まぁ、お前が『注意しない』っていう選択肢が出しきらないのは分かってたし、ここで悩むのも想定済みだ。そう。お前は妹が行った理由が分かっていればそうやって悩むんだ。しかし、妹が理由を話さなかったら、お前はただ壊したってことだけで妹を注意する。たとえ、それがお前の為にやったことでもな。」

と得意気に述べた。愛妹は納得したような顔をして

「あぁ成る程ぉ。こんなことみたいなのを正しい行いが必ず正しい結果になるとは限らないって言ってたわけね!」

と分かったことを述べた。そしてにっこりと笑い

「でも私が妹好きだってのを利用したのは許せないけどね!」

と笑顔のまま言った。そうだった。愛妹は妹好き。というより幼女?自分より年の低い子。特に女子が大好きなのだ。理由は可愛いから。そのため、いつも小学校低学年とよく話しており、低学年の生徒から先輩と呼ばれている。その時の愛妹の表情なのだが楽しそうと言うだけでは圧倒的に足りてない。楽しんではいるのだが愛妹の何かはこの時に満ち足りているようなのだ。なんか今なら死んでもいい。という表情をしているのだ。そしてそんな自分が愛して止まない者が家に欲しい。そう切に思い続けているため自分は妹好きだと名乗っているのだ。俺から言わせれば常軌を逸したロリコンとショタコンを合わせ持つヤバいやつとしか言いようがないのだが。

「悪ぃ。こんなんしか例え話が出なくてな。許せ。」

としぐれが上から目線で許しを請うが

「何言ってるの?無理だよ。」

しぐれは急に萎縮した。隣で友美は笑っている。そうこうしていると

「はい。話し合い終わり。話して出た意見とかをノートに纏めて下さい。終わった人は一番下の感想を書いて下さい。」

と先生から指示が出た。そういえば、これが終われば下校だったな。パッパと書いて持ち帰る教科書でも整理しよう。と思いながら感想を書き終え、教科書を整理しようとしていた時に

キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

「はい、挨拶。」

「起立、気を付け、礼。」

「「ありがとうございました。」」

あとはいつものように帰る準備を済まして出来た人から着席しておく。つもりだったが、ちょっとばかり今日の道徳の感想を聞きたい奴らがいるため、準備を終わらせそいつらの席に向かった。

「なぁ、智気、大智。お前ら今日の道徳どうやった?」

席につくや否やそいつら、智気と大智に質問する。

「どうやった。って、感想を聞きたいのかお前は。」

智気は絶対分かってる癖にわざわざ俺に確認を取る。

「そうそう。お前分かってて聞いたろ。」

「まぁまぁ、そう言うなって。それで?何の為にわざわざ俺達に聞きに来たわけ?」

「あんま、いじらずに答えてやろうぜ。智気。」

智気が俺の真意を聞きただそうとしたところで大智のストップが入った。智気はつまらなそうな顔をしたが大智は素直に感想を述べ始める。

「僕は授業中に禎流が言ってたような感じだ。悪い奴に悪いと言う事自体は正しいと思う。でも悪いと言う事をエスカレートさせてそれを悪口にしたら駄目だと思う。」

すると笑いながら智気が

「何を言ってんだお前。ちゃんと文を読んでみろ。どこにも悪口を言ったなんて書いてねぇよ。」

「うん。書いてないけど、自殺するくらいだったんだから、ただ悪いって言っただけじゃなく、エスカレートして悪口を言い始めたんじゃないかなって読み取ったんだ。」

大智はきっといい文豪になりそうだ。成る程そんな読み取り方があったのか。

「だから、僕としては悪いと言うまでなら正しいことだけどこの後のことをちゃんと責任を持って考えた上でやっていかないといけない。そういう風に考えたよ。共感できるかって言われると、半分はできて半分はできない。ってことになるね。あと、悪いことをした人をそのまま悪い扱いするんじゃなくてその人が反省したのなら仲間として彼らを支えていく必要もあるんだと思った。」

想像以上の答えだった。俺と同様に智気も驚いた様子だ。

「それで、智気はどうなんだ?」

智気は大智の感想を越えれる気がしないのかウジウジしながら答えて始める。

「言っとくけど俺の感想はあくまで教科書に書いてあったことをそのまま読み取ってるからな。書いてないことを独自に解釈してるわけじゃないから反論する場合はそこんとこ履き違えんなよ。」

必死に大智の感想に負けないように前置きで自分の意見に正当性をもたせてやがる。

「中立の俺から言わせてもらうとあの状況下で悪いのはあの3人の方だ。何故か。理由は至極単純。比率だな。3人で1人をいじめた場合1人あたりの比率はおよそ0.34だな。そして作中のクラス全員はイラストの人数を数えたところ30人。すると30人で3人をいじめたことになるから1人あたりの比率は0.3。したがってどちらがいじめた人数が多いかとなると不等号は3人の方に開く。また、いじめた数が多いと言う事は常識的に考えて悪い事だとすることができる。よって今回は悪いのは3人で1人をいじめた方である。Q.E.D」

こいつはきっと数学博士になるだろう。小学生が理解できるわけないことを坦々と得意気に述べてやがる。しかし俺には分かることが1つだけある。

「お前何を証明してんだ?俺は何も命題なんて出してねぇぞ。俺は感想が聞きたいんだ。」

そう。最後のQ.E.Dは証明終了を意味する言葉だ。てっきりクラス内では俺しか知らないと思ってたのだが知ってるやつがいたとは。

「お前なんで言葉の意味分かってんだよ!」

智気も俺と同じことを思ってたらしい。因みに俺は図書館で何かの数学の本を読んでたら出てきて、カッコ良かったから覚えたわけだが、

「てっきりパソコン持ってる俺だけが知ってる言葉かなって思ってたけど意外と禎流も物知りなんだな。」

この、糞マウント野郎め。本来なら俺が自慢できるところを糞マウントで自慢できなくしてやがる。

「お前達さっきから何を話てんだよ。分かるように説明してくれ。」

大智はかなり悲しくなったのかどうしても話しの輪に入りたいらしい。

「まぁ、俺の話が理解できないのは無理もない。ただ3人で1人をいじめたら1人あたり約0.34人いじめてて、それが全員で3人をいじめるのより多いから3人で1人をいじめた方が悪いってことを言いたかったんだ。」

大智はいまいち納得出来てない様子。俺も最初の説明だと理解できないか今のなら少しは分かった。でも俺が聞きたいのはこの先。

「お前の説明は感覚的に分かるやつにしか分からないから置いとくとして結局お前は共感することはできるのか?」

「共感か。うん。全体的にできるな。てか、中立の立場で考えるならどちらかの立場片方のみ共感できるってのは変だと思うから全体的にできるか、できないかで考えるしかないんだけどな。」

「お前もしぐれと同じなのか。」

「あいつもか。まぁ、考えれば当然の結果か。あいつなら全部共感しそうだもんな。俺の理由としてはどちらも理由がちゃんとしていたし人間としてこうなっちゃうのは仕方ないことだから共感できるってわけだ。」

大智は困ったような顔をして

「人間として仕方がないことっていうなら、人をいじめるのは人間が本来とる行動だって言いたいのか。お前は。」

と問いかける。確かに、智気の言ってることが本当ならいじめは人間の本能と言っているようなものだ。

「そんな考え方もあるってことだ、大智。いじめであってもそれはいじめてる側にとっては自己防衛みたいなもんだからな。」

大智が遂に本気で混乱し始めた。

「いじめが自己防衛?」

それは確かに。いじめって自分を守るというより他人を攻撃してるから防衛よりは攻撃だよな?

「そう思うのも仕方ない。そもそもいじめって人の負の感情がもたらすものだろ。でもさ、人が負の感情を抱くのって仕方無いことなんだ。人間は日頃ストレスを抱えて生きている。ストレスってのは人間を死に至らせるぐらいヤバいやつなんだぜ。それを発散する為にいじめを起こすんだ。これって言い方を変えればストレスを発散して生きようとしている意思表示にならないか?」

確かにその通りだ。しかし智気の言っていることは無理矢理いじめを美化しているだけなんじゃないだろうか。その疑問を俺は智気に問う。

「あぁお前の言いたいことは分かる。でもストレス発散の為にいじめを起こすってのは生きようと自分を守ってるんじゃなくてただ他人をけなして陥れてるだけだよな?」

すると智気は頷いて、

「つまりお前はいじめを美化してあたかも正しいことのように語ってるって言ってんだな。確かにストレス発散の方法は何も人をいじめるってことだけじゃない。でもそれをする為には自分が目の前の奴をいじめたいって欲を我慢する必要がある。つまりさらにストレスを抱える必要があるんだ。それは死に近づいていることを意味する。また、自分の信じていたストレスの発散方法で思ったより発散した量が少ない、発散する時間が無い。こういったことが起きた場合何故あの時ストレスを発散したなかったんだと思うかもしれない。すると必然的に過去の反省として今度はこうなってもいいようにストレスを発散しておこうとなる筈だ。こう考える奴が一定数集まれば必然的にいじめは起きる。自分がストレスを抱える危険性を低くするためにな。」

と説明した。今度は大智も納得したのか

「成る程。自分を守る為にいじめるってのは分かった。お前が言う通り死の危険から自分を遠ざけることは悪くなんかないことだろう。この理由でお前はいじめを是認するのか?」

少しイラッときているのか、大智はやや不機嫌そうに言う。

「是認するも否認するもない。お前は大きな自然災害で人が亡くなるのを是認したり、否認したりするのか?」

大智は勿論といった顔つきで

「あぁ、当然否認する。たとえ仕方のないことでも人が死ぬのは認めたくない。」

きっぱりと言い切った。これを聞いて智気は

「お前はすげぇよ。仕方のないことでもことでも認めないんだな。お前みたいなやつがもう少し増えてくれれば世界からは戦争が消えて完全な平和が訪れるかもしれないな。」

と目を泣くように抑えながら言った。それに大智は驚いたのか

「か、感動する程のことだったのか?」

と純粋に自分の発言が相手を感動させたのだと思っている。ここでけなされてると考えないのが実に大智らしい。

「あぁ、そりゃあもう。俺じゃあどう考えても出てこない答えだった。お前は俺がさっき話した人間からかけ離れてるぜ。自分の欲が他人の幸福。根本は同じだが考え方が違う。相当理性が強いんだ。」

大智は急に困惑して

「理性?」

と問いかける。

「そうだ。人間の欲は基本理性ってやつで制御される。お前は理性が強すぎて自分の欲そのものが他人の幸福になっちまったんだ。」

大智はやや腑に落ちない様子だ。

「えぇと、つまりお前は俺が人外であるとでもいいたいのか?」

「違ぇよ。お前は人間の中でも特殊で、いわば例外ってやつなんだって言いたいんだ。英雄とか聖人に近い。」

聖人だ。大智は紛れもなく聖人だ。これは覆せない事実であると思ってる。この意見は俺も後押しをせねばなるまい。

「そうだぞ、大智。お前は紛れもない聖人そのものだ。自分よりも他人を優先するし、他人の不利益を自分の責任にして他人になるべく自分のせいだって思わせないようにしている。これを聖人と言わずしてなんと言えるだろうか。」

大智は嬉しそうでありながらも照れ臭そうに

「そ、それは言い過ぎだ。聖人なんてなぁ、と、とても柄じゃない…。」

俺と智気は笑顔で大智のはにかむ姿を見ていた。絶品じゃねぇか。

「コラ!禎流!何をほっつき歩いてるの!周り見なさい!皆座ってるよ!」

まずい。つい気を取られていた。急いで席につく。隣ではしぐれが必死に笑いをこらえている。しかし急に真面目な顔になり、()()()()()()()()()様子になった。

「はい!では帰りの会始めます。挨拶!」

「起立、気を付け、礼」

「「お願いします!」」

「はい。こういう日に限ってね、皆事故とか事件とか起こしがちになります。なのでちゃんと気をつけて帰ること。寄り道とかはもってのほかだからね。後は…明日は通常通り6時間授業です。以上です。他、何か伝えることがある人はいる?」

ふぅ、とうとう終わりだ。勿論誰も手を挙げない。

「じゃあ、終わります。挨拶。」

「起立、気を付け、礼。」

「「ありがとうございました。さようなら。」」

「うん。さようなら。みんな気をつけてね。」

といつも通りに帰りの会は終わったが、

「え?あなた、どちら様?」

教室の入口に見知らぬ男性が立っていた。先生の質問にも答えず男性は無言で背中から銃らしきものを取り出す。

「えっ?いや、なにして…」

先生が何かを言おうとしたところで

「総員!退避!早く窓から飛び降りるんだ!」

としぐれが大声で言い放つ。当たり前だが、誰1人として動こうとはしない。みんな困惑してるのだ。しかし、そんな中でもたった今1人だけが窓の方へ避難した。大智である。

「いや、しぐれも一体何を言って…」

バシュンと大きな音がなったと思ったら先生の頭を何かが貫いたようで血を吹きながら地面にドスンと倒れ込む。

「「キャーーーーー!!」」

クラス内は悲鳴で溢れかえった。全員が混乱し、もはや何をしたらよいのか分からなくなっている。こんな状態の中でもしぐれは逃げろと言い続ける。そのおかげなのか、一部の生徒は窓の方へ避難し始めた。

「大智!お前に全責任がかかってる!頼む!みんなを連れて窓から飛び降りてくれ!大丈夫死にはしない!」

大智はこれを聞いて心が決まったようで周りにいた生徒の何人かを無理矢理連れて窓から飛び降りた。連れ去られた生徒は絶叫をあげながら落ちていった。彼らがどうなったのかは今は分からない。そして、遂に男性の銃口が俺達に向いた。

「お前も逃げな。天草。ここは俺しか引き受けられねぇ。」

そんなこと言われてもここで俺が逃げたらしぐれが死んでしまうじゃないか。そんな友を見殺しにすることなんて出来ない。それは間違った行いだ。俺は首を横に振った。丁度そのタイミングでこの事態をどうにかするために先生たちが駆けつけた。すると俺達に向いていた銃口が先生達の方へ変わり長い銃から連続して弾丸が発射される。今ならしぐれを連れて逃げれると思った矢先、俺の先生達を見捨てるという間違った思考に罰を下すかのように2丁目の銃が取り出され乱射が始まる。俺はとっさに身をかがめ、机を盾にするような体勢を取った。てっきり、しぐれもそうしているのだろうと思っていたが、なんとしぐれはまだ逃げれてない生徒を守る為に体を大の字にして銃弾からみんなを守っているではないか。しかしそんな人力の盾は乱射に耐える筈もなく、たった一発、しぐれの頭にヘッドショットを決めるだけで、崩壊した。先生よりも距離が近かった為か、しぐれの頭は完全に弾け散った。顔のないしぐれの身体はすぐに地面へと倒れてしまった。この光景を見た生徒は思考に異常をきたし、叫び続けるだけの生徒や急に発狂しながら男性に殴り掛かろうとする生徒が一気に増えた。勿論そんなことをしても全くの意味がなく、そういった生徒は1人残らず撃ち殺されてしまう。先生や友達が死に続けている中俺は何もできずにただ机を盾にして隠れているだけだった。正しいと思ったことを力ずくで否定された今の状況下、何をしたらよいか分からないのだ。しぐれを助ける判断は友として正しい判断だったに決まっている。しかし、そんな友すら殺されてしまった。

「こんな、状況自体が間違ってんだ。本来あんな人を殺しまくる狂人がいていいわけがない。俺は正しいことをしたんだ。何も間違ってなんかいない。間違ってないんだ!」

なのに、なんで、なんで!俺だけじゃない。みんな正しいことをした。それなのに、それを全部否定された。どうして間違った奴が正しい奴を否定するんだ。

「どうして!どうしてなんだよ!間違っておきながらなんでお前が認められてんだよ!」

おかしい。おかしすぎる。あの狂人は排除されるべき奴だろ!

「君がその役割をやってみないかい?天種禎流君。」

「え?」

突然聞こえた謎の声の主は目の前に堂々と立っていた。道化の様な仮面を被り首には大きなマフラーのようなものを巻いている。服装は黒と赤を基本として、所々に白や金色の線が入っている。

「君は今のこの状況は間違ってると思ってるんだろう?」

「う、うん。こんなのはおかしいって思ってる。」

「変える力があったらこんな状況を正しい方へ変えたいかい?」

そんなの決まってる。

「当然だ。変えたいなんてものじゃない。是非変えてやる。そんな力があるのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「そう。それは君の覚悟と受け取っていいんだね。」

「どうとでも受け取ればいい。お前が俺にそんな力を渡せるというのなら。」

こいつは、ただの人間じゃない。それぐらいは理解した。であれば、もしかするとこいつは俺を変えてくれるのかもしれない。そういう期待を俺はしていた。

「感づいたか。なら、もう何て質問するのかわかるね?」

「あぁ!お前の質問に対する答えはYESだ!よこすんだ、俺にその力を!」

「いいよ。諸々の説明は君の敵を倒した後でいいよね?」

「そうしてくれると助かる。俺は一刻も早くあいつを排除したいんだ。これ以上()()を出さない為に!」

すると腕に6cmほどの黒い物体が現れた。見ると引くタイプのつまみがあった。

「それを自分の方へ引いてごらん。君は望んでいたとおりの力を得れるよ。」

言われるがままにそのつまみを引く。

翻訳トランスレイト

いきなり俺の周りを黒い霧が覆う。その霧は俺の身体に侵蝕しながら、形をどんどん形成していく。やがて霧は霧散し、俺の形成された身体が露わになった。

「今や君の身体はなんでもできる。頭の中でどうやってあいつを倒すのかイメージしてごらん。」

あいつもどうやら俺に気づいたようで3丁目の銃を取り出し始める。こちらも何か武器を用意しなくてはと思い、必死に想像して出来た武器は先が鋭くなっている短い槍のようなものだった。俺が武器を手に入れると同時にあいつの発砲が始まった。弾が当たるよりも速くというのを意識し続けながらあいつの後ろに回り込もうとする。しかしあいつも4丁、5丁といった具合で次から次に銃を出し続ける。逃げ続けても犠牲が増えるだけではと考えた俺は覚悟を決めて弾幕の雨に飛び込むことにした。すると完全に俺に意識を向けることにしたのか全ての銃口を俺の方へ向けた。そして放たれる多くの弾丸。それらを避けながら勢いよく相手の背後へ飛び込みそのまま手に持っていた槍で相手が振り向くより速く背中から心臓を貫いた。あとは一気にその武器を抜く。赤い血が溢れそれは次第に黒く変色していった。

「やったのか。」

やったという実感はないが相手が倒れて動かなくなったのを見てただやったのではと思った。

「おめでとう。これは間違いなく君の勝ちだ。これで間違いは正された。君の思った通りになったんだ。」

それを聞いて俺はようやく勝ちを確信する。

「やったんだ。俺はやって退けた。俺は正しいことを貫き通せたんだ。」

やっぱり正しいことをした奴が勝つんだ。そう改めて思えた。

「その通り。君は正しかった。君のお陰でこの正しい結果がもたらされたんだ。では、そろそろ説明の方へ入ろうか。」

???

彼はやがて決意を決める。自分の正義を貫くために。彼の決意はやがて日本をいいや、世界を変えた。その決意は素晴らしいものだった。本当に。誰にも真似できない程のものだ。仮に真似できたとして貫き通すことはできない。あぁ!できる訳がない!さぁ!また続けよう!彼の彼による皆の為の!誰にも真似できない正義の英雄の物語を!

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