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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第五章

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横たわっているものは

気持ちを抑えながらアキに頷いて見せた後、フウマと名乗った男性の目の前まで歩み寄り男性を真っ直ぐ睨みつけると、そのフウマと名乗った男性は小さく後ずさりする。

ここは落ち着いて話さないとダメね。

「何してたの?怒らないから正直に言いなさい」

すると不安げに少しだけ首が下がっていたフウマと名乗った男性は、すぐにまた胸を張り、澄ますような表情を決め込んだ。

「拙者、影に紛れ、影のある場所ならば、いかなる所へも行けるのでござります」

「もうっ仕組みはいいから何をしてたかって聞いてるのよっ」

するとフウマと名乗った男性の澄ますような表情は一瞬にして怯えたような表情へと崩れ去った。

「ミサさん」

ユウジに宥めるように呼びかけられたのでユウジを見てから小さく息を吐き、改めてフウマと名乗った男性に顔を向ける。

「す・・・あの、ただ、会議ってどんな話、してるのかなぁって」

「普通に喋れるのなら最初からそうしなさいよね、全く」

キャラ設定が甘すぎよ。

フウマと名乗った男性は目を逸らし、気まずそうに頭を掻き始める。

「ほんとに何もしてない?」

「あ、はい」

「なら、もう良いわ」

誰かが入ったときに一緒に入ったのかしら?

椅子に戻り、フウマと名乗った男性が安心したように小さくため息をつくと、ユウジ達3人も同じように小さくため息をついた。

「何よ、あなた達まで」

マナミを見ると、マナミは照れ臭そうに微笑みながら小さく首を横に振る。

「ううん、それより、何でそんな格好してるの?コスプレか何か?」

そう言いながらマナミがフウマと名乗った男性に目を向けたので、改めてフウマと名乗った男性の服装をまじまじと見てみる。

「いや、これは何となく動きやすいかなぁって」

いくら見えなくなるからって、上が甚平で下がスエットなんて・・・

「ねぇ、それって、弓道のよね?」

こちらに顔を向けたフウマと名乗った男性は一瞬だけ怯えるような眼差しを見せる。

「あ、はい」

「何で両腕に?」

「あの・・・一応、甚平がズレないようにで、す」

よく見ると指無し手袋もしてるのね。

まぁ色は全部黒だし、統一感はあるけど。

ふと床を見ると広がった網がそのままにしてあったので、網を拾い上げ、たたんでバッグに入れる。

「あ、それより、どうしてあたしの網を避けれたのよ?」

フウマと名乗った男性はこちらの顔を見た後、こちらの足元へと目線を向けていく。

「足元の糸が切れたのに気づいたときに、ちょうど手の中に網が見えたんで、とっさに」

直前にバレたって訳ね。

それなら仕方ないわ。

「そう」

それより、まさかほんとに透明人間が居たなんて。

あ、それなら氷牙に言ってあげないと。

「フウマ君っていつから居たの?」

すでにそのフウマという男性に慣れたかのようにいつもの口調でマナミが問いかけると、フウマは澄まし顔で背筋を伸ばし、胸を張った。

「拙者は、皆のものがお揃いになられたのを見計らい、そちらのガラスから入ったのでござります」

フウマの目線の先のガラスに目を向けるが、ガラス張りの壁は天井から床まで隙間無く建てられている。

「ガラスって言ったって壁じゃないのよ」

「光が入る所、また同じく影も入るというもの、でごさります」

なるほど、透明なら壁でもすり抜けられるのね。

見た感じ10代かしら。

コスプレじゃないって言ってるけど、とりあえず忍者にはなりたいみたいね。

警戒心を若干持ちながらも、しばらくマナミ達の質問に応えるフウマを見て過ごす。



「あたしもみんなと一緒に戦ってみたいな」

「ライムとミントがたまにノブ達について行ってるみたいだし、レンも一緒に行ってみると良いよ」

「うん」

初めて会ったときより、だいぶ口角を上げる回数が増えたな。

「そういえば、銃だけじゃなく剣も扱えるの?」

「一応色んな種類の剣は本で見たけど、でも剣って、振って切るだけだから、簡単でしょ?」

「まあそうだね」

剣術の良し悪しは形を変えることで弱点を無くせるってことかな。

「外に出たら、人にはむやみに武器を見せたらだめだよ?」

落ち着いた眼差しのレンは一瞬目線を上げると、こちらに顔を向けながらゆっくりと首を傾げた。

「みんなが怖がるから?」

「それもあるけど、法律って分かる?」

「・・・あんまり」

するとレンは不安げに少し眉をすくめるが、ふと見せたその眼差しには以前に見たほどの寂しさは伺えなかった。

「簡単に言えば、武器を持ってるだけで警察の人達に捕まっちゃうんだ」

「・・・捕まったらどうなるの?」

「武器を没収された上に、牢屋に閉じ込められるんだよ」

うっすらと表情が青ざめたレンはゆっくりと目線を下げていき、テーブルに目線が行ったときにそのまま固まった。

「ちょっと氷牙、怖がらせちゃダメじゃない」

ミサの声がしたと思ったときにミサが隣の椅子に座ると、レンが顔を上げて不安げにミサを見る。

「ケイサツっていう人達って、良い人達なんじゃなかっの?」

「法律を破る人達を捕まえるのが仕事だから、そういう人達にはすごい厳しいんだよ」

こちらに顔を向けたレンはゆっくりと頷きながら小さくため息をつく。

「そうなんだぁ」

どうやら落ち着いたみたいだな。



夕食の途中、携帯のバイブの音が聞こえたので、ナイフとフォークを置いてポケットから携帯を取り出し、画面を見る。

あら、メールだわ。

・・・またこの人。

そういえば告白の返事まだしてなかったっけ。

明日言わないと。

「何?それ」

レンに顔を向けると、レンは不思議そうに首を傾げて携帯電話を見ていた。

「んー、これで、すごい遠くに離れた人とお話し出来るのよ」

「遠くって、どれくらい?」

「すごい遠い外国とでもよ」

「へぇ」

表情は変わらないけど、やっぱり女の子なのね、そんなに携帯が気になるみたい。

「氷牙も持ってるの?」

「僕は持ってないよ」

真顔で応えながら氷牙がレンに顔を向けると、レンは小さく頷きながら料理に目線を戻した。

携帯も持てないほど貧乏なのかしら?

本人は働いてないって言ってたし、確かにそれなら料金は払えないけど。

氷牙を見ていると、氷牙がゆっくりとこちらに顔を向けてくる。

「ん?」

「ううん、あ、そうだ氷牙、透明人間、居たわよ?ほんとに」

「・・・そうか」

応えた後に氷牙は目線を上に向けたが、すぐに料理に目線を戻した。

驚かないのかしら?

あれだけ捜しておいて?

でも一瞬だけ間があったし、驚いたってことなのかしら?

お皿が下げられて少しするとユウジが会議室から出て来たが、ユウジはそのまま舞台を降り、舞台の脇のトイレに向かった。

今日は挨拶しないみたいね。



そうだ、ノブに透明人間のこと話さないとな。

ノブが居るテーブルを見つけ、何やら話をしているノブとセイシロウの前の席に座る。

「おお、どうした?珍しいな」

「まあちょっとね、2つ目の鉱石を使うこと、ユウジにもう話したの?」

一瞬眉を上げたノブは舞台に目を向けてからこちらを見る。

「いや、まあこれから行こうと思ってたんだが、何か別の案でもあんのか?」

「そういう訳じゃないんだけど、何か透明人間がほんとに居るんだって」

セイシロウは驚いたような表情でこちらを見るが、ノブは眉間にシワを寄せながらも落ち着いたようにゆっくり頷いた。

「どうやってそいつを確認したんだ?透明なのに」

「僕はミサから聞いたんだ」

ノブはミサの方に目を向けてから再び小さく頷き、コップを口に運んだ。

「どこに居たんだ?」

そういえば詳しいことは全く聞かなかったな。

「詳しいことを聞くの忘れてた」

「何だよ・・・じゃあ、あー・・・ほら、聞いてこいよ」

ノブは頭を掻きながら気まずそうにそう言って遠くを見る。

「あぁ」

そんなに自分からは言いづらいのかな。

ミサの居るテーブルに戻ると、こちらに気づいたミサはすぐにその微笑みを深くして見せる。

「もう終わったの?」

「いや、ノブが透明人間のこと知りたいって」

「あら、そう」

少し眉をすくめてノブの方を見たミサだが、こちらに目線を戻すと共にその表情にも微笑みを甦らせる。

「じゃあ行きましょ?」

そう言ってミサは立ち上がりながらレンに微笑みかける。

「ちょっと待っててね」

「うん」

ミサを連れて再びノブの前に座ると、ノブが一瞬少しだけ緊張したような表情になった気がした。

「んで、透明人間が居たんだって?」

「えぇ、会議室でたまたま会ったのよ。捜してたんでしょ?」

「ああ、まあ、な」

どうやって捕まえたんだろ?

ミサなら網でも作れば捕まえられるかもな。

「捜したいなら、アキに頼んだ方が良いわよ?アキなら現在地が分かるから」

「そうか、そういう力だったっけか」

アキの力・・・確か・・・何だっけ。

「えぇ、ほら氷牙、行くわよ?」

「あ、あぁ」

ミサと共にテーブルに戻ったときにレンの姿が無かったが、あまり気にせずにホットミルクを注いで再び席に戻る。

「そろそろ部屋に戻りましょ?」

ミサに顔を向けたときにふと目に入った向こうのテーブルに居るユウコの隣に、レンが見えた。

「あぁ」

ホットミルクを持ちながらミサと共に部屋に戻り、リビングのソファーに座りながらテーブルにホットミルクを置く。

「ねぇ氷牙、またすぐに異世界に行ったりしないわよね?」

喋りながら向かいのソファーにミサが座ったので、口から放したコップをテーブルに置く。

「一応、ミサとの約束の後に行くつもりだけど」

「あらそう?」

嬉しそうに微笑みを浮かべたミサは深く背もたれながらテレビを点ける。

ライブってあと何日くらいだっけ?

まぁその日が来るまで待てば良いか。

ミサがシャワーを浴びに行った頃にホットミルクも無くなったので、シンクにコップを置いてソファーに戻るとちょうどニュースが始まる。

「今日、日本時間午前5時頃、世界的にも有名な平和のシンボルとも言える自由の女神像が、何者かによって破壊された事件で、犯人のものと思われる犯行声明文が書かれた手紙が、ホワイトハウスの敷地内に投げ込まれていたことが分かりました」

時期としては、平和のシンボル的なものを破壊するテロも起きてもおかしくないかもな。

「手紙には、自由の女神を破壊した。これは始まりだ、と書かれていて、アメリカ政府は能力者の仕業との見解を示していますが、今回のテロで死傷者は出なかったものの、テロ史上9・11以来の衝撃と悲しみがアメリカ全土に広まっています」

シンボルか。

物によっては人の死よりも強い衝撃を与えることが出来るかもな。

組織的なテロか、単独犯か、まだ分からないな。

ニュースが終わった頃にミサが戻って来て、ストレッチを始めたミサを横目に見ながらテレビを消し、ベッドに向かう。

壁にもたれて夜景を眺めていると、ストレッチを終えたミサが銀色の棒状の物を頬の上で転がしながら前のベッドに座ってこちらを見る。

「今日は気になるニュースはあったかしら?」

「ちょっと気になったのはアメリカのテロかな」

一瞬斜め上に目を向けた後にミサは小さく頷く。

「あら、それって自由の女神の?」

「あぁ」

有名なニュースなのか。

すると銀色の棒状の物の転がす場所を変えながら、ミサはどことなく嬉しそうな微笑みを見せる。

「貴方も、みんなと同じように悲しいのね」

悲しいか・・・。

「僕はただ、単独犯かどうか気になっただけだよ」



「あら、そう」

確かに日本人だから、そこまで自由の女神に思い入れが無いって言ったって、何も感じないなんて。

無愛想っていう次元じゃないわよ。

心まで仮死状態なのかしら?

美顔ローラーをポーチに戻し、髪を縛っていたタオルを解いて洗面所で髪を乾かす。

ドライヤーをしまってベッドに戻ると、氷牙はまるで死んだかのようにベッドに横たわっていた。

いつも見るけど、やっぱり胸が上下してないわね。

呼吸しないってことは、酸素が無くても良いってことかしら?

でも、それじゃ細胞が死んじゃうし、仮死状態って言っても心臓は動いてるんだから、やっぱり酸素は必要よね。

ミサとノブの距離感は微妙ですね。笑

ありがとうございました。

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