しかしかわされてしまった
しかしヒロヤはすぐにまた作り出した光の剣を振り下ろしてきたので、とっさに腕で受け止め、ブースターを噴き出しながら光の剣を押し退ける。
すると後ずさりしながらも今度はナイフほどの光の剣を作り出し、素早く投げ込んできた。
上体を少し反らせてとっさにかわしたが、ヒロヤはまたすぐに光のナイフを何本も投げつけてくる。
小さい方が扱いやすいのかな?
ギリギリでかわしたり手で弾いたりして後ずさりしていたとき、そのままの流れで今度は光の剣が素早く投げつけられる。
おっと・・・。
刀身が長いせいか、かわす間も無く光の剣先は胸元に真っ直ぐ突き当たり、ブースターで反動を相殺している間にも、すでにヒロヤはまた何かを投げる体勢になる。
「ドラゴンファイア」
後ろからショウタの声が聞こえると同時に、ヒロヤの手に光の剣が現れる。
挟み撃ちか。
ブースター全開で急旋回しながら胸元に刺さっている光の剣を殴り飛ばし、そして目の前に迫っている大きく口を開けた炎の竜巻がこちらに届く前に素早く横に飛び出す。
「速っ」
危なかったな。
「おいっ」
ヒロヤはとっさに地面に光の剣を壁になるように突き立てると、炎の竜巻は光の剣に当たりながら轟音を上げていく。
「あ、ごめん」
ショウタが手を天井に向ける同時に、炎の竜巻はまるで龍のように天へと昇っていく。
あの炎の竜巻は結構厄介だな。
方向転換した炎の竜巻はこちらの方に向かってきたので、ブースターを噴き出して逃げていく。
凍らせるしかないかな。
炎の竜巻をかわしながら天高く飛び上がって大きく距離を取り、炎の竜巻を待ち構える。
5つのブースターを消して滞空していると、炎の竜巻が昇るように追ってきたので紋章を5つ、花のように重ねて掌の前に出す。
「蒼月光」
青白いレーザービームが炎の竜巻の口の中に注ぎ込まれていくと、瞬く間に炎の竜巻は気化するようにすぼんで消えていく。
炎の竜巻が消えてショウタの近くに降り立つと、ショウタは困ったように頭に手を乗せた。
「えー?・・・消しちゃったよ。てか氷牙もまだ大技隠してたんだな」
「まあ、ね」
「すごいねぇ、氷牙」
集中力が散漫になっちゃってるわ、仕方ないわね。
「そうね」
あんなに強いと、何だか遠い存在みたいに思えちゃうわ。
シンジとノブに交代したときにオーナーのアナウンスが会場に響くと、すぐにヒロヤとショウタが闘技場から出て来て、舞台へと向かっていった。
「ふぅ」
小さく息を吐いたユウコは再び教科書に目を向けて宿題を再開する。
何となく氷牙の戦いを観ながら過ごしていると、ユウコはまたモニターに釘付けになっていた。
「ユウコ、お昼までに終わらせるんでしょ?」
「あ、うん」
慌てて教科書とプリントに目を向けたユウコを見ながら、ティーカップを口に運ぶ。
しばらくしてユウコが宿題を終え、教科書をしまうの見てからテーブルの鐘を鳴らしてランチを頼む。
まだ氷牙は戻りそうにないわね。
「ミサちゃん、明日から学校だね」
「そうねぇ」
食事しながらふと舞台に目を向けてみると、ヒロヤ達が会議室から出て来るのが目に入った。
日曜だからテロも休みって訳じゃないみたいね。
「あら氷牙、遅かったわね」
「まあね」
せっかくランチ誘おうと思ったのに、まぁいいわ。
氷牙が前に座ったとき、お皿を下げに来たウェイトレスを呼び止める。
「ランチメニュー貰えるかしら?」
「あ、はい、少々お待ち下さい」
頼んだ料理が運ばれると、氷牙は全く表情を変えずに料理に手をつけ始める。
こんな時間帯にしかも1人で焼き鳥なんて、ちょっと不思議な光景かも。
お皿がオシャレだからかしら、更に違和感感じちゃうわ。
「氷牙、焼き鳥、好きなの?」
「何となくね」
ニヤつきながら話しかけたユウコに、氷牙は真顔で応えながら串を持ち、焼き鳥を口に入れる。
ラザニアと焼き鳥ね。
ノブは鉱石を使う方を選ぶみたいだし、透明人間はもう捜す必要無いかな。
まぁでも暇だし、今日はそれなりに捜してみようかな。
お皿を下げて貰って少しすると、ヒカルコがユウコの隣に座る。
「ヒカルコ、この組織に透明人間が居るって聞いたことある?」
ヒカルコは目線を上げると、首を傾げながら真顔でこちらに顔を向ける。
「ん、無い、けど」
「そうか」
聞き方を変えた方が良いのかな。
「じゃあ、自分の姿を消せる力を持った人とか知ってる?」
「え・・・んー、私、出来るけど」
まぁそうか。
「何の話?誰か捜してるの?」
「まぁ、ノブの作戦に必要らしいからちょっとね」
「ふーん」
氷牙ったら、昨日からずっと捜してたのかしら?
ならあたしも捜してあげようかな。
「じゃああたし、会議室行くわね」
「うん」
笑顔で小さく手を振るユウコを見ながら席を立ち、会議室に入ると、マナミとライムがテレビを見ていて、扉を閉める音に気づいた2人はゆっくりとこちらに顔を向けた。
「あらミントは?」
マナミがテレビに目線を戻すと、ライムはホールの方を見てからこちらに目を向けた。
「ホールだと思うよ」
「そう」
ライムと微笑み合ってから椅子に座ると、マナミはテレビからテーブルに目を向けて飲み物を一口飲んでからふとこちらに顔を向けた。
「ミサちゃん家ってペット飼ってるの?」
トラップでも仕掛けてみようかしら。
「え、えぇ、猫が居るわよ?」
するとマナミは少し嬉しそうに微笑み出した。
「へぇー、何て名前なの?」
「キャロットよ」
くるぶしくらいの位置で良いかしら。
「可愛い名前だね」
「あらそう?マナミは何か飼ってるの?」
マナミは照れ臭そうに微笑むと何やら目線を上げてからこちらを見る。
「ヘビだよ」
「あら、そう、珍しいのね」
ヘビを飼うなんて、マナミって意外と気丈なのね。
「よく言われるよ」
「ヘビって何?」
ライムが不思議そうに聞くと、マナミは微笑みながら携帯電話をライムに見せる。
「このにょろっとしたのがヘビだよ」
「ふぇー、ちょっと可愛いかも」
ヘビより携帯の方に興味を持っちゃうんじゃないかしら?
しばらくしてライムが会議室を出て少し経つとアキとユウジが会議室に入ってきた。
みんな揃ったし、そろそろ仕掛けちゃおうかしら。
片足に小さいファーを出し、足から目に見えないほど細い糸を数本、椅子の下から通らせて放射状に壁まで張り巡らせる。
これで誰かがあたしの周りを歩けば、たとえ見えなくても糸が切れた場所で居場所が分かるわ。
「んじゃあ、会議始めようかぁ」
ユウジはホワイトボードに目を向けると、悩むように小さく唸り出す。
大まかに世間の問題を書き留めてみると、意外と今すぐやるべきことって無いのよね。
組織の行動方針もあるからかしら?
「マナミ、何か気になったニュースとかある?」
「マナ、代々木公園の動物が心配かも」
「それなら大丈夫よ、明日氷牙とマイが行くみたいだし」
心配そうな表情のマナミはこちらに顔を向けると、頷きながら安心するように微笑みを浮かべる。
「そっかぁ、なら安心かもね」
「それってさ、警察と仲が悪くなったりしないかな?」
すると今度はアキが少し心配そうな口調で喋り出した。
「んー、そうならないとは、言えないわね」
まぁ氷牙はケンカするような人じゃないから、大丈夫だと思うけど。
「今回は氷牙に任せるとして、まぁテロ関係はノブさんに任せれば良いし、まだ日本じゃそんなに大きな問題も起きてないしな」
そういえばテイラー達、海賊が出るって言うし大丈夫かしら?
「いや、起きてないことはないよ、小さい事件だけど、全国で色々起こってるよ」
「それもそっか」
アキの冷静な反論に、ユウジは少し困ったように目を逸らして頷く。
あら、仕掛けた糸が切れたわ。
早速引っ掛かったわね。
「ミサさんは、気になるニュースはある?」
「あたし?・・・は、そうね、ならチームを増やしたらどうかしら?テロの数だけ守るための力も必要でしょ?」
「戦力増強ならまだ必要無いと思うよ?毎日テロと戦ってるみたいだけど、1日で死者はおろか、怪我人すら1人出るか出ないかだし」
ユウジが得意げに話しているときに、また別の仕掛けている糸が1本切れ、そのほんの小さな衝撃が足首に伝わる。
「あら、そうなの」
真後ろから右側に移動したみたいだわ。
「とりあえず今日も雑談だけで過ごせそうだけど、良いかな?」
網でも作ろうかしら。
「うん」
マナミが笑顔で頷きながらこちらに顔を向けたので、すぐに微笑み返す。
コミュニケーションは大切よね。
袖の中に隠すように小さく手首にファーを出し、糸を出しながら素早く網状に編む。
「ユウジ君、マナ今度、この部屋にアンガ連れて来て良いかな?」
「えぇ?まじで?」
ユウジは何なのか知ってるみたいだわ。
「何なの?それ」
「あ、さっき言った飼ってるヘビの名前だよ」
マナミが笑顔でこちらに応えると、マナミに顔を向けたアキが少し青ざめたように見えた。
「僕、ヘビ、ダメなんだよね」
「そっかぁ、可愛いのになぁ」
落胆するような口調だが微笑みを浮かべているマナミを見ていると、仕掛けた糸が切れたのですぐさまその方向に糸の網を撃ち出す。
えぃっ。
我ながら見事なノールックだわ。
みんな驚いてるみたいだけど仕方ないわね、それだけ不意打ちが上手く行ったってことだし。
真っ先にアキが鋭い眼差しでその方を見たので、募る嬉しさを堪えて網を見るが、網は何かを捕らえた様子もなくきれいに床に広がっていた。
まさか、外したの?
「あらら」
どうして?
タイミングはバッチリのはず。
「ミサちゃん何してるの?」
網を見た後にマナミは驚きながらも、少し楽しそうにニヤついてこちらに顔を向けた。
「んー、透明人間をね、捕まえようと思ったんだけど」
「えっ今居るの?」
するとマナミは少し怯えたような表情で辺りを見渡し始める。
足元の糸には引っ掛かったのに、おかしいわね。
「さすがに素早いね」
アキがユウジの後ろの方に顔を向けながら喋り出すと、ユウジはすぐに後ろに顔を向ける。
「まさか、アキは見えるの?」
「見えないけど、分かるよ」
こちらに顔を向けながら、アキは落ち着いた笑みを浮かべる。
分かる?
「どう」
「どうゆうことだ?」
喋った?・・・透明人間が・・・しかも男。
「忘れられてるみたいだけど、僕の力は索敵だよ。透明でもステルスでも、居場所は分かるんだ。機械的なジャミングも一切受けないしね」
そういえばそうだったわね。
「・・・不覚」
小さく呟いたような声が出た辺りにゆっくりと人間の輪郭のようなものが浮かび上がると、すぐにそこに鉢巻きと、両腕に篭手のようなものを着けた男性が現れた。
・・・変な、格好。
「誰ぇ?」
首を傾げながらマナミが口を開くと、男性は背筋を伸ばしながら腕を組み真っ直ぐマナミを見た。
「拙者は、フウマだ」
何この人、コスプレにしては完成度はゼロに近いけど。
「そ、そっかぁ」
「ねぇ、こんな所で何してるのよ。人の後ろでこそこそして、気味が悪いじゃないのよっ」
「まぁミサさん、落ち着いてよ」
アキの落ち着いた表情を見ると少し気分が落ち着いたので、改めてフウマと名乗った男性を睨みつける。
「僕ずっと見てたけど、別にミサさんに何かをしようとはしてなかったよ」
宥めるようにこちらに話しかけてきたみたいなので怒りを抑えながらゆっくりとアキに顔を向ける。
「見てたって・・・じゃあ、何してたって言うのよ」
アキがたまにちらっとこっちを見たのは、あたしのことを見てた訳じゃなかった訳ね。
「僕は居場所が分かるだけで、詳細な行動まではちょっと」
「何かをしてるかどうかまで分かるんじゃなかったのかしら?」
「これくらい近距離だと、輪郭ってゆうか、フレームだけ動いてるってゆうか、分かるかな?」
サブタイトルはミサ目線ですかね。笑
ありがとうございました。




