カウントダウン・トゥ・キャプチャー
「それじゃあ難しいな、日光に紛れるなら簡単だけど、オレの力は人工的な光には溶け込めないと思う」
確か学校だったし、それなりに広いからさすがに日光は奥まで届かないか。
「まじか、じゃあ仕方ねぇな」
そう言ってノブは眉を上げながら落胆したような表情で頷く。
「何か悪いな」
「いや、良いんだ、呼び出して悪かったな、戻って良いぜ」
ヒロヤが遠くのテーブルに戻ると、ノブは再び考え込むような表情で天井を見上げる。
「何かもっと無ぇかなぁ、見えなくなる方法」
「じゃあ逆は?」
ノブの独り言のような発言にシンジが応えるように口を開くと、ノブは理解が出来てないような表情でシンジを見る。
「逆?何の?」
「光がだめなら、闇に溶け込めば良いんじゃないの?どこにだって影ぐらいあるでしょ」
なるほど、日光とは逆に影が満たされてる所なら、日光と同じように影に溶け込める力があれば良いってことか。
「おおっ良いねぇ、冴えてんじゃんお前」
でも、問題なのは誰がやるかだな。
「でもノブさん、オレ闇の力を持つ人なんて見たことないよ」
「んー、そうだよなぁ」
腕を組み始めたノブは小さく唸りながらテーブルを見つめると、先程よりもより深刻そうな表情で動かなくなった。
「無いなら作れば?」
眉をすくめたノブと冷静な表情のシンジがこちらに顔を向けたとき、前のテーブルのミサもこちらに顔を向けたのが目に入った。
「鉱石使って、その力を手に入れれば?」
「鉱石か・・・オレはもう使ったしなぁ。チームで使ってない奴は・・・」
そういえばノブのチームの人数は増えたりしたのかな?
「あいつも使ったし・・・あ、いや、アイリもこの前使ったしな・・・」
呟き始めてから知らない名前が出た辺りで、ノブがゆっくりとこちらに目線を戻してくる。
「ダメだな、チームん中で、鉱石使ってない奴はもう居ねぇよ」
「そうか」
もう1つ使ったらどうなるのかな?
「あれ?シンジは?」
「あ、そうだよ、お前自然に覚醒してんだから、鉱石使ってねぇよな?」
シンジに指を差しながらノブがそう聞くが、シンジは少し困ったように眉をすくめて頭を掻き始めた。
「オレ、無駄遣いしたく、ないんだ・・・けど」
そういえばシンジは拳だけで貫くっていつも言ってたな。
「まぁ、そう言うんなら、仕方ねぇか」
ん、今何か後ろから風が吹いたような・・・誰か通ったかな?
後ろを振り返るが近くに人の姿は無い。
まいいや。
光や闇以外で何か、透明人間になれるような力の使い方はあるかな?
「誰かに鉱石を使わせてチームにスカウトでもすれば?」
「あぁ?まぁ、それしかねぇかなぁ」
「でもそのためだけに鉱石使う人なんて居るかな」
「分かんねぇなぁ。心当たりもねぇしな」
シンジに応えながら立ち上がったノブが飲み物を持って席に戻り小さくため息をつくと、シンジもこの妙な静けさに気を落としたような顔色をしていた。
しばらくしてレンとミサと共に廊下に出て、レンが階段を上がるのを見送ってからミサと部屋に入る。
ソファーに座るとミサも向かいのソファーに座りながらテレビのリモコンを手に取った。
「ねぇ、貴方って、霊感ある?」
テレビを点けずにリモコンを握ったまま、ミサはこちらに顔を向けながらふとそんな質問を投げ掛けてくる。
霊感・・・。
「いや、無いと思うよ」
「あらそう、あたしも無いんだけどね、さっき会議してるとき、何か妙な気配を感じたのよね」
小さく微笑みながらそう言った後にミサはテレビを点けた。
「そうか、そういえばさっき、違和感を感じるような風が背後に吹いたような気がしたんだ」
「あらそうなの?貴方達、透明人間の話、してたじゃない?もしかしたら、この組織にほんとに居たりしてね、透明人間」
だとしたらノブに力を貸してくれないか説得した方が良いかもな。
暇だし、捜してみようかな。
「でも、それじゃあ手がかり少な過ぎない?」
「まぁ・・・そうね」
言葉に詰まったミサは困ったように眉をすくめ、テレビに目を逸らす。
他に誰かミサみたいに気配を感じたって人とか居ないかな?
明日にでも聞いてみようかな。
しばらくしてドラマが終わるとニュースが始まったので、何となくテレビに集中していく。
「森林や公園で規格外の大きさの野生動物が多く目撃されている件で、警視庁は今朝、東京都渋谷区にある代々木公園で目撃された巨大動物2体を捕獲するために、特別捕獲調査隊を派遣させることを発表しました」
捕獲?調査?
確か前にレベッカ達と一緒に公園に行ったとき、警察が調査に来てたな。
その結果がこれか。
「早くにも明後日に公園に入場規制がかかり、警察による巨大動物の捕獲作業が始まる訳ですが、このような大規模な規制、及び調査は日本で初の試みであり、この調査をきっかけに、調査範囲を随時全国に広げていく予定だということです」
捕獲って言っても、保健所行きか解剖されるかだし、結局は殺すんだろう。
「しかし、巨大動物による目立った被害や苦情があまり確認されていない中での発表により、一部では警察の対応に批判の声が高まっている所もあります」
テレビの画面は街頭インタビューに切り替わり、警察に対しての街の意見が述べられている。
マイが動物を説得しても意味は無かったということになるのかな。
「確か貴方、マイとヒカルコとで代々木公園に行ったのよね」
「あぁ」
テレビに目を向けたミサはゆっくりと席を立ちながらこちらを見る。
「その、動物との交渉は上手く行ったんじゃなかったの?」
「カラスとは上手く行ったと思うけど、猫とは分からないな」
まぁ仮に猫が人間を襲ったなら、警察もそれなりの対応をするかもしれないけど。
「あらそうなの」
暖房を点けながらリモコンの前で小さく返事をしたミサは、足早に脱衣所に向かっていった。
「おはよ」
「えぇおはようユウコ」
「ミサちゃん知ってる?外国で恐竜が出たんだよ」
「あらまあ大変ねぇ」
イグアナか何かが鉱石で巨大化でもしたんだろう。
「ユウコ、この組織に透明人間が居るって聞いたことある?」
お椀を口から離しながら眉をすくめたユウコはテーブルにお椀を置き、小さく唸りながら斜め上を見た。
「透明・・・人間、んー、分かんないなぁ」
「そうか」
「え、居るの?」
こちらに顔を向けたユウコは、そう言いながら興味を示すかのように小さくニヤつき出す。
「まだ分からないよ」
「なんだぁ」
噂にはヒカルコの方が詳しいかもな。
料理が下げられてしばらくすると、クロルを肩に乗せたマイが少し慌てた様子で近づいて来て、マイが隣に座るとクロルがテーブルに降り立った。
「わぁ」
ユウコが驚きと嬉しさと混ざったような声を出すと、ミサは身構えるように黙ってクロルを見る。
「氷牙、どうしよう代々木公園に来ちゃうよ警察」
マイの緊迫感が伝わってくるようなその表情に、ミサやユウコもすぐにマイの深刻さを感じ取るように表情を曇らせる。
「ニュースは2体って言ってたけど、それってカラスと猫かな?」
「う、うん多分、どうしよう、きっと殺されちゃうよ、せっかく話し合えたのに」
別の森に逃がしたとしても、都内なら警察は逃がさないだろうな。
「じゃあこの事、動物達に伝えに行かなくちゃいけないんじゃない?」
「あ、そうだよね」
マイの緊迫感を感じられる表情は緩み、小さく笑みを浮かべたが何やらすぐに困ったように眉をすくめて見せる。
「でもマイね、これから習い事行かなきゃいけないから」
「じゃあ明日行けば?」
「でも明日から学校じゃん」
横から話し掛けてきたユウコに顔を向けたマイは、すぐに落ち着いた微笑みをユウコに返した。
「マイの学校、明日休みだから大丈夫だよ」
「なんだそっか」
「うん、明日ならギリギリで間に合うよね?」
そう言いながらマイが笑顔をこちらに向ける。
「あぁ」
まぁ警察と鉢合わせはすると思うけど。
すると腰を落としていたクロルが立ち上がり、小さく跳ねながら体をマイに向けた。
「・・・うん・・・ほんと?分かった」
何やらクロルと話をしたマイは微笑みながらこちらに顔を向ける。
「クロルも一緒に来るって」
「そうか、明日はなるべく早く公園に行った方が良いね」
「うん・・・じゃあマイ行くね」
マイは笑顔で応えながら立ち上がると、クロルを指に乗せながら廊下に続く扉に向かっていった。
動物を逃がすより警察を説得しないと解決しそうにないかな。
飲み物を持って席に戻ったユウコはカバンからノートと円筒の形をした筆箱を取り出した。
宿題でもやるのかな?
「あ、シンジにプリント貸したままだぁ」
小さく呟きながらユウコはカバンを椅子の下に置いてノートを開いた。
「よぉ」
後ろを振り返るとそこにはノブが立っていた。
「暇だろ?修業の相手でもしてくれよ」
「そうか」
あ、透明人間捜さないとな。
「ノブ、透明人間見つかった?」
席を立ちノブの後について歩き出しながら何となく話を切り出す。
「ああ、何だそれ?」
「え?作戦のために必要なんでしょ?」
「あぁ、そうだったな」
何となく上の空のような表情で応えているノブを見ながらふと扉の前で待つ人達に目を向ける。
まぁ捜してないということは確かみたいだな。
ヒロヤ、ショウタ、シンジと合流すると5人で闘技場に入り、闘技場の真ん中に着くとノブが少し真剣な表情になった。
何か多いな。
「ああそうだ、お前、透明人間が居りゃ作戦が上手く行くって話だったよな、そういや」
「あ、あぁ」
忘れてた訳じゃないみたいだ。
「それがさぁ、別に捜す必要も無ぇかなぁって思うんだよなぁ」
「そうか、でもチームの人は全員鉱石使えないんじゃなかったの?」
するとノブは何か考えがあるかのように小さくニヤつき出した。
「実際、鉱石を2つ使った奴はまだ居ない。つまり、2つ使ってもどうなるかまだ誰も分からないってことだな」
賭けに出るってことか。
「使うなら、一応ユウジに言った方が良いんじゃない?」
「そうか?まぁ・・・そうだな」
確か鉱石1個でもそこまで体に負担がかかった人は居なかったな。
「じゃあ、誰がやるんだ?」
ヒロヤが口を開くと、ノブは考え込む表情のままヒロヤに顔を向ける。
「お前はどう?」
「オレは・・・まぁ、やるならシンプルな力の奴が良いと思う。2つの力との相性も考えなきゃいけないだろうしな」
冷静な口調で応えたヒロヤを見ながらノブは再び考え込むように目線を落としていく。
「んー、まぁ急ぐことはねぇし、とりあえずユウジに話してからで良いか。んじゃ、始めるか」
このまま話し込む訳でもないみたいだな。
「5人って中途半端だね。どうするの?」
ショウタが聞くと、ノブはこちらに顔を向けた後にショウタを見た。
「まずオレらが2人ずつに分かれて、2対1で順番に氷牙と戦うってことで行こうぜ、さすがに4対1じゃきついだろ?」
最初からこっちは1人って決まってたみたいだな。
「そうだね」
「じゃあお前、第二覚醒して待っててくれ」
「分かった」
4人相手でも出来ないこともないと思うけど。
絶氷牙を纏いながら走り出し、4人と距離を取った辺りで極点氷牙を纏うと、ショウタとヒロヤが前に出て、残った2人は後ろに下がった。
自由自在系の2人か。
1人ずつ必殺技みたいなものがあるけど、それさえ防げば問題無いな。
「じゃあ始めようか」
5つの紋章をブースターに転換しながら2人に話しかける。
「あぁ」
小さく応えたヒロヤは自分の身長ほどの光の剣を1本出し、ショウタは右手を激しく燃え上がらせた。
「そっちから良いよ」
「援護頼む」
ヒロヤはショウタに顔を向け一言告げながら走り出すと、勢いよく光の剣を水平に振り抜いて来たのでその場で急旋回し、光の剣を思いっきり殴りつけると、厚いガラスが砕けるような音と共に、光の剣は激しく砕け散った。
「なっ」
声を出したヒロヤは驚きからか後ずさりしたが、すかさず半分欠けた光の剣を投げて来たので、素早くブースターを噴き出して難無くかわしていく。
ニュースの前にやってたドラマは、やっぱりアレですかね。笑
ありがとうございました。




