表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/80

67

 フール君が箱を開いたとたん、光が奔流となってあふれ出た。

 白、黒、赤、翠、茶、青、銀。七色の光は空へと昇り、そこで渦を巻くと、それぞれに形をとった。


「なんだ、あれ」

「鳥……鳳凰、か?」

「あれは……レーヴ像の」


 空を見上げるプレイヤー達がどよめく。

 光は、精霊の姿になっていた。

 朱の鳳凰と銀の鳳凰。レーヴとデュラハン。巨大な狼は、フェンリルだろうか。そして亀のような茶色の精霊に、リヴァイアサン。

 七体の精霊は、一度咆哮を放つと、巨人達に向かっていった。

 東と西と北に、二体づつ。この南門の巨人には、デュラハン一体が突撃した。


 空中を疾駆して巨人に突撃したデュラハンは、頭を抱いていない方の腕に持つ槍で巨人の胴体を貫いた。


「ガァアァアアア!!」


 巨人の苦しげな叫び声が上がる。ただの一撃で、半分以上残っていた巨人のHPバーは、レッドゾーン近くまで削られていた。

 デュラハン、凄い!!


「冒険者達よ。後はそなたらに任せる」


 デュラハンは空を駆けながら私達に笑いかけると、再び光になって消えていった。


「今、ギルドチャットで連絡がきたよ! 他の門の巨人には、それぞれ二体づつの精霊が攻撃したんだって!」


 私がまだ空を見上げていると、露草が興奮した様子で言った。


「それで、どうなったの?」

「巨人は、三体とも倒されたそうですー。後は、ここだけですねー」


 私が気になって尋ねると、ユノが答えてくれた。

 その言葉を聞き、周囲のプレイヤー達が活気づく。


「聞いたか? 後はこいつだけだってよ!」

「よし、後一息だ! 皆頑張ろうぜ!」

「そうね、あんなやつ皆でやっつけちゃいましょう!」


 皆の気合いにつられ、私も流水を手に駆け出そうとした。そこへ、静かな声がかかる。


「リンお姉さん、待って」


 呼び止められて振り向くと、フール君がグリフォンにまたがり、私に向かって悪戯っぽく微笑んでいた。


「僕と一緒に、ヘラクレスになりに行かない?」


 巨人殺しの英雄の名を出され、私は大きくうなずくと、フール君の手を取った。




 グリフォンで空を駆ける。

 イリスさん達も再び空を飛び、巨人に攻撃を加えていた。


「お姉さん。ギリギリまで近づくから、頑張ってね」

「う、うん」


 フール君の言葉にうなずき、私は巨人を見た。巨人も私を見る。黄色い眼と視線が合った。


「グルガァアアアア!!」


 巨人が怒りだした!!


「お姉さん……巨人に相当恨まれてるね。何やったの?」


 棍棒を振り回し、他のプレイヤーを無視して私達だけを狙う巨人に、フール君が苦笑しながら私を見る。


「う……ち、ちょっと足首を切ったくらいなんだけど……」


 なのに、片目を潰したイリスさんよりも恨まれている気がする。あ、もしかしてスキル【誘き寄せ】の効果だろうか。

 こういう時は不便だなあ。


「ふぅん? まあ、いいや。しっかりつかまっていてね。行くよ」

「うわっ」


 いきなりグリフォンのスピードが上がった。めちゃくちゃに振り回される棍棒を掻い潜り、巨人に近づく。


「今だよ、リンお姉さん!」

「うん!」


 私はグリフォンから飛び降りると、巨人の肩に乗り、流水を目一杯伸ばした。

 そして、巨人の喉を切り裂く。


「ウギャアアァアアア……!!」


 巨人の断末魔が響き、巨大なその身体が光の粒子となって消えていく。

 足場を無くして落下する私を、旋回してきたフール君が拾ってくれた。


「巨人倒し、ご苦労様。リンお姉さん」


 フール君の、いつもとは違う優しい微笑。なんだか照れくさくて視線をうつむけると、笑顔で手を振るプレイヤー達の姿が見えた。

 トオル達も手を振ってくれている。

 私が皆に手を振り返すと、歓声がさらに大きくなった。


「お姉さん、人見知りは直ったの?」

「え?」


 フール君の言葉に私は目を瞬く。そういえば、それほどドキドキしてない……かも。


「わからない、けど」

「けど?」

「今は、大丈夫かも」


 興奮しているからかもしれないし、緊張が解けて安堵しているからかもしれない。

 どちらにしても、今この瞬間を皆と笑って迎えられたのが、凄く嬉しいと思った。

 フール君がもう一度大きく旋回する。


「リンお姉さん、空を見て」


 フール君に促されて空を見上げると、まだ赤く染まっている。

 だけど、先ほどまでの毒々しいまでの赤ではなく、綺麗なグラデーションを描いた夕焼けの空だった。


「終わったんだね」

「うん、そうみたいだね」


 私は辺りを照らす夕日に目を細めた。

 茜色の空の下、プレイヤー達がNPC達と一緒になって騒いでいる。

 大規模戦闘が終わり、今からは宴の始まりなのだ。

 そして、とうとう自分が獲得したクラス(職業)が発表される。

 ――いったい、私のクラスは何になるのだろう。

 何故か多大なる不安を抱えながら、私は喜びにわく《白の都》を眺め続けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ