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フール君が箱を開いたとたん、光が奔流となってあふれ出た。
白、黒、赤、翠、茶、青、銀。七色の光は空へと昇り、そこで渦を巻くと、それぞれに形をとった。
「なんだ、あれ」
「鳥……鳳凰、か?」
「あれは……レーヴ像の」
空を見上げるプレイヤー達がどよめく。
光は、精霊の姿になっていた。
朱の鳳凰と銀の鳳凰。レーヴとデュラハン。巨大な狼は、フェンリルだろうか。そして亀のような茶色の精霊に、リヴァイアサン。
七体の精霊は、一度咆哮を放つと、巨人達に向かっていった。
東と西と北に、二体づつ。この南門の巨人には、デュラハン一体が突撃した。
空中を疾駆して巨人に突撃したデュラハンは、頭を抱いていない方の腕に持つ槍で巨人の胴体を貫いた。
「ガァアァアアア!!」
巨人の苦しげな叫び声が上がる。ただの一撃で、半分以上残っていた巨人のHPバーは、レッドゾーン近くまで削られていた。
デュラハン、凄い!!
「冒険者達よ。後はそなたらに任せる」
デュラハンは空を駆けながら私達に笑いかけると、再び光になって消えていった。
「今、ギルドチャットで連絡がきたよ! 他の門の巨人には、それぞれ二体づつの精霊が攻撃したんだって!」
私がまだ空を見上げていると、露草が興奮した様子で言った。
「それで、どうなったの?」
「巨人は、三体とも倒されたそうですー。後は、ここだけですねー」
私が気になって尋ねると、ユノが答えてくれた。
その言葉を聞き、周囲のプレイヤー達が活気づく。
「聞いたか? 後はこいつだけだってよ!」
「よし、後一息だ! 皆頑張ろうぜ!」
「そうね、あんなやつ皆でやっつけちゃいましょう!」
皆の気合いにつられ、私も流水を手に駆け出そうとした。そこへ、静かな声がかかる。
「リンお姉さん、待って」
呼び止められて振り向くと、フール君がグリフォンにまたがり、私に向かって悪戯っぽく微笑んでいた。
「僕と一緒に、ヘラクレスになりに行かない?」
巨人殺しの英雄の名を出され、私は大きくうなずくと、フール君の手を取った。
グリフォンで空を駆ける。
イリスさん達も再び空を飛び、巨人に攻撃を加えていた。
「お姉さん。ギリギリまで近づくから、頑張ってね」
「う、うん」
フール君の言葉にうなずき、私は巨人を見た。巨人も私を見る。黄色い眼と視線が合った。
「グルガァアアアア!!」
巨人が怒りだした!!
「お姉さん……巨人に相当恨まれてるね。何やったの?」
棍棒を振り回し、他のプレイヤーを無視して私達だけを狙う巨人に、フール君が苦笑しながら私を見る。
「う……ち、ちょっと足首を切ったくらいなんだけど……」
なのに、片目を潰したイリスさんよりも恨まれている気がする。あ、もしかしてスキル【誘き寄せ】の効果だろうか。
こういう時は不便だなあ。
「ふぅん? まあ、いいや。しっかりつかまっていてね。行くよ」
「うわっ」
いきなりグリフォンのスピードが上がった。めちゃくちゃに振り回される棍棒を掻い潜り、巨人に近づく。
「今だよ、リンお姉さん!」
「うん!」
私はグリフォンから飛び降りると、巨人の肩に乗り、流水を目一杯伸ばした。
そして、巨人の喉を切り裂く。
「ウギャアアァアアア……!!」
巨人の断末魔が響き、巨大なその身体が光の粒子となって消えていく。
足場を無くして落下する私を、旋回してきたフール君が拾ってくれた。
「巨人倒し、ご苦労様。リンお姉さん」
フール君の、いつもとは違う優しい微笑。なんだか照れくさくて視線をうつむけると、笑顔で手を振るプレイヤー達の姿が見えた。
トオル達も手を振ってくれている。
私が皆に手を振り返すと、歓声がさらに大きくなった。
「お姉さん、人見知りは直ったの?」
「え?」
フール君の言葉に私は目を瞬く。そういえば、それほどドキドキしてない……かも。
「わからない、けど」
「けど?」
「今は、大丈夫かも」
興奮しているからかもしれないし、緊張が解けて安堵しているからかもしれない。
どちらにしても、今この瞬間を皆と笑って迎えられたのが、凄く嬉しいと思った。
フール君がもう一度大きく旋回する。
「リンお姉さん、空を見て」
フール君に促されて空を見上げると、まだ赤く染まっている。
だけど、先ほどまでの毒々しいまでの赤ではなく、綺麗なグラデーションを描いた夕焼けの空だった。
「終わったんだね」
「うん、そうみたいだね」
私は辺りを照らす夕日に目を細めた。
茜色の空の下、プレイヤー達がNPC達と一緒になって騒いでいる。
大規模戦闘が終わり、今からは宴の始まりなのだ。
そして、とうとう自分が獲得したクラス(職業)が発表される。
――いったい、私のクラスは何になるのだろう。
何故か多大なる不安を抱えながら、私は喜びにわく《白の都》を眺め続けたのだった。




