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『俺が適当に作った秘密結社が、本当に世界を支配し始めていた』  作者: Toi
第1章

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22/22

2-22 『第七王への借り』

第22話 第七王への借り


「私が死なずに済んだのは、第七王のおかげだ」


リゼの言葉に。


レオンは少しだけ黙った。


それから。


「……助けてもらったってこと?」


「ああ」


「いつ?」


リゼは左腕の傷を見る。


「十八年前」


レオンの目がそこへ向く。


能力が暴走し。


自分の左腕を焼いた。


あの時。


「第七王が止めた?」


「正確には、暴走を止めたわけではない」


「じゃあ?」


「私を殺さなかった」


レオンが眉を寄せる。


「どういう意味?」


リゼは少しだけ考えた。


「七王会では、制御できない力は危険と判断される」


「子どもでも?」


「ああ」


「十八年前って」


「私はまだ子どもだった」


レオンの表情が変わる。


「能力が暴走して」


「ああ」


「七王会に殺されそうになった?」


「そうだ」


空気が少し重くなる。


セラも黙っている。


ガレスも。


ヴァルドだけは、いつもの軽い笑みを消していた。


「その時」


リゼが続ける。


「第七王だけが反対した」


「なんて?」


「覚えている」


リゼの目が少し遠くなる。


「『まだ、この王を終わらせるな』」


レオンの眉が動く。


王を。


終わらせるな。


「それで助かった?」


「第七王が保証した」


「誰に?」


「第一王に」


レオンは思わず顔をしかめる。


「またあいつか」


セラが横を見る。


「何?」


「いや、管理好きそうだなって」


「そこは否定しない」


リゼが少し笑う。


「だから」


レオンは腕を組む。


「第七王が来たら戦えない?」


「戦えないとは言っていない」


「じゃあ?」


「迷う」


短い答え。


でも。


それで十分だった。


リゼは七王会が嫌い。


王という役割も嫌い。


それでも。


七王全員を同じように憎んでいるわけではない。


「なんか」


レオンが呟く。


「俺の設定より人間っぽいな」


リゼの目が細くなる。


「どういう意味だ」


「俺が書いた第三王って、もっと単純だった」


「単純?」


「自由が好き。束縛嫌い。七王会嫌い」


レオンは指を折る。


「以上」


「浅いな」


「十三歳だから」


「便利だな、その言葉」


「最近みんな使うな」


ヴァルドが笑う。


「便利だからだろ」


ガレスが話を戻す。


「第七王がお前を助けた理由は?」


「知らない」


「聞かなかったのか」


「聞いた」


「答えは」


リゼが少し嫌そうな顔をする。


「『まだ早い』」


レオンが止まった。


「それだけ?」


「ああ」


「何が早い?」


「知らん」


「意味深すぎるだろ」


「昔からああいう奴だ」


「第七王って何歳?」


「知らない」


レオンが眉を上げる。


「七王同士でも?」


「年齢も出自も、本名も知らない」


「本名も?」


「ああ」


それは少し意外だった。


第三王にはリゼという名前がある。


第一王にも当然あるはず。


でも。


第七王だけ。


誰も知らない。


「謎キャラ徹底してるな」


「お前が言うと腹が立つ」


「俺の設定みたいだから?」


「そうだ」


少しだけ。


レオンは笑った。


その時。


ガレスが口を開く。


「話を戻す」


「まだ何かある?」


「ある」


ガレスはリゼを見る。


「七王会を抜けるなら、その情報はどこまで共有されている」


「まだ誰にも」


「なら今も七王会は、お前を第三王として扱っている」


「ああ」


「お前がここにいると知られれば」


「ノクスが私を引き抜いたと思うだろうな」


セラの表情が少し険しくなる。


「面倒ですね」


「かなり」


レオンが聞く。


「じゃあリゼ、ここにいない方がいい?」


「そうなる」


ガレスが答える。


リゼも異論はないらしい。


「でもレオンの近くにはいたい」


セラが言う。


「そうだ」


「両立しないじゃない」


「工夫する」


「ざっくりしてるな」


レオンが笑う。


リゼがこちらを見る。


「お前も他人事ではない」


「え?」


「黒の王がノクスと行動していると広まれば」


一拍。


「七王会全体が動く」


レオンの笑みが少し消える。


「……それは嫌だな」


「今さら?」


セラが言う。


「七人全員来るとかある?」


「ない」


リゼが即答する。


「なんで?」


「七人が協力するくらいなら、世界が先に終わる」


「仲悪すぎない?」


「だから七王会は面倒なんだ」


ヴァルドが笑う。


「そこは助かってるけどな」


「そうなの?」


「七人まとめて来られたら、さすがにしんどい」


レオンはヴァルドを見る。


「お前でも?」


「俺を何だと思ってる?」


「七王と三日戦う変な人」


「だいたい合ってる」


セラがため息をつく。


「ただ」


ヴァルドの顔から少し笑みが消える。


「一人ずつなら話は別だ」


空気が変わった。


「ノクスには、七王ごとの対策がある」


「第一王の時みたいな?」


「あれも一つ」


「じゃあリゼ用も?」


「当然」


リゼが笑う。


「私の前で言うか?」


「もう知ってるだろ」


「全部は知らない」


「教えないよ」


「残念だ」


軽いやり取り。


でも。


その裏に。


長年の戦いがある。


レオンは少しだけ考える。


「ヴァルド」


「ん?」


「ノクスで、お前くらい強い奴って他にもいる?」


ガレスがすぐに見る。


「答えるな」


「まだ何も言ってない」


「お前は言う」


「信用ないな」


「実績がある」


レオンは笑う。


「いるんだな」


「……」


ガレスが黙る。


「今ので分かった」


「余計なことを」


ヴァルドが楽しそうに笑う。


「まあ安心しろよ」


レオンを見る。


「七王会だけが化け物を抱えてるわけじゃない」


「それ聞けただけで十分」


レオンは少しだけ肩の力を抜いた。


七王。


一人で軍を崩せる存在。


そんなものが七人。


でも。


ノクスにも。


同じ舞台に立てる人間がいる。


そして。


それだけじゃない。


研究。


道具。


情報。


何世代にもわたる対策。


ようやく。


両者が三百年以上争っているという話に。


実感が湧いてきた。


「それで」


レオンがリゼを見る。


「これからどうする?」


「まず七王会を離れる」


「どうやって?」


「第三王として持っているものを捨てる」


「家とか?」


「拠点。部下。権限。情報網」


レオンが目を丸くする。


「全部?」


「ああ」


「もったいなくない?」


「必要ない」


即答。


本気だ。


「それから」


リゼはレオンを見る。


「お前の近くにいる」


「そこは変わらないんだ」


「変わらない」


セラが眉を寄せる。


「監視はさせてもらう」


「好きにしろ」


「ノクスに危害を加えたら」


「分かっている」


「レオンにも」


リゼの目が少し細くなる。


セラは一歩も引かない。


「危害を加えたら、私が止める」


短い沈黙。


リゼが笑った。


「お前が?」


「私が」


「一人で?」


セラの目が鋭くなる。


「必要なら、ノクス全員で」


リゼは。


少しだけ驚いたような顔をした。


そして。


「なるほど」


小さく笑う。


「だから三百年生き残るのか」


セラは答えなかった。


レオンだけが。


少し嬉しそうに笑っていた。


「いいな、それ」


「何が?」


「一人で無理なら、みんなでやる」


レオンは肩をすくめる。


「俺のノクスより、そっちの方が強そう」


「お前のノクスはどんな組織だったんだ」


ヴァルドが聞く。


「全員一人で強かった」


「子どもが考えそう」


「十三歳だから」


「便利だな」


「お前まで言うな」


少し笑いが起きる。


その直後。


ガレスの表情が変わった。


懐から。


小さな通信魔導具を取り出す。


「どうした?」


セラが聞く。


ガレスは答えない。


魔導具から聞こえる声に耳を傾ける。


そして。


顔を上げた。


「第三王」


リゼを見る。


「お前、もう遅いかもしれん」


「何が」


「七王会が動いた」


劇場の空気が変わる。


「誰だ」


リゼの声が低くなる。


ガレスは短く答えた。


「第二王」


レオンが瞬きをする。


「今度はどんな奴?」


リゼは。


少しだけ嫌そうな顔をした。


「一番」


言葉を選ぶ。


「話が通じる」


レオンが安心しかける。


だが。


続き。


「そして一番、信用できない」


安心が。


綺麗に消えた。

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