第46話 再会
佳果たちは宴のあと、一度ログアウトして睡眠をとった。今日はたまたま全員が休日だったため、改めて昼すぎにラムスで落ち合うことにしたのだ。約束どおりの時刻にログインした彼らは、旅を再開するべく村の出入り口までやって来た。それを住民が、総出で見送る。
「シムル、本当にいいのかよ?」
「ああ。父ちゃんと母ちゃんにも話、つけといたから」
「そうだぜ。佳果くんたちは大切な人を救うために旅をしているんだろ? ならその目的に、うちの息子を役立ててやってくれないか!」
「わたしどもがそうしていただいたように、どうかその方も助けてあげてください。きっと――暗闇のなかで、今も光を待ち続けているはずですから」
「……わかったっす。シムルは俺らが責任をもって守りますんで」
「ありがとう佳果くん! それではよろしくお願いしますね、みなさん」
「ぬはは、しっかりヴェリスちゃんの力になってやれよシムル! こんなぺっぴんさん、油断してっとすぐにとられちまうから気ィつけろよ!」
(……とられる?)
「だぁ父ちゃん! 適当なこと言うんじゃねえよ!」
「ふふっ。何かあればすぐに駆けつけますから! 困ったときは、またわたくし達にご連絡ください」
「お世話になりました。近いうちに、この村で育ちそうな野菜の種とか持ってきますんで、楽しみにしていてください!」
「そん時ゃ俺も、力仕事を手伝いにくるぜ!」
「わたしも、わたしもいろいろがんばる!」
「……ってなわけで、そろそろ出発するから! いってきまーす!」
そう言ってシムルはそそくさと歩き始める。彼は少しさみしそうな表情をしたが、景気のよい両親の「いってらっしゃい!」を聞いて、不安よりも期待に胸を高鳴らせながら故郷をあとにした。
◇
「ここがアスター城下町……!」
アラギの次に行けるようになるこの城下町は、アスター城を中心に栄えている非常に大きな拠点だ。ぜひ観光したいところではあるものの、今回はサブリナが出迎えてくれて、このまま城まで行く手はずになっている。
「それにしても、王様に謁見することになるなんてね」
「まったくだ。俺、礼儀作法とかてんでわからねぇぞ……」
「はは、佳果どのは自然体で振る舞われたほうが魅力的だと思いますよ」
「そ、そうか?」
「まあ心配すんなよ兄ちゃん。ガキのおれらも招待されてる時点で、そのへんは寛大に受け入れてくれるはずじゃん? なあヴェリス」
「……わたし、大人だけど?」
「お、おう」
「うふふ。……サブリナさん、今回は勲章を頂けるとおっしゃっていましたけれど、本当によろしいのでしょうか」
「もちろんです。ラムスの件が解決できたのは、シムルくんの頑張りがあってこそ。そしてそのシムルくんをお支えになったのは、紛れもなく皆様ですから。陛下も、皆様とお会いできるのをたいへん楽しみにされていましたよ! 特に、佳果どのは丁重にお迎えするようにとの勅令をたまわっています」
「お、俺ぇ? なんかやったっけか……」
訝しがっているうちに、王城の門をくぐる。中は豪華絢爛というよりも、おごそかで品格のある内装が目立つ。サブリナはかなり上の立場にいるのだろうか、整列している兵士たちの敬礼に気合が入っていた。
やがて謁見の間へと続く扉があらわれ、一同は緊張しながらその先へと進む。
「女王陛下。お連れいたしました」
「まあまあ、ありがとうねサブリナ。……今日は遠路はるばる、アスター城へようこそいらっしゃいました。あなた方にお会いできる日を心待ちにしておりましたよ」
「あ……」
「どうしたの阿岸君?」
「あんた、あの時の……!」
「ええ。お久しぶりですねぇ、佳果さん。その節は本当にありがとうございました」
驚く佳果の見つめる先。
玉座に座っていたのはフルーカであった。
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