↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者: 焉
第四章 雷雨をこえて架かる虹 ~あまねく愛のまぼろし~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/367

第45話 自由意志

「私が遠回しにちからを使う理由はただ一つ。直接的な手助けをすれば、それは君たちのエリア移動を阻害することになるからだ」


「エリア移動を阻害……?」


「知ってのとおり、エリア移動とは精神的な成長にともなう魂の進化を指している。ちなみにラムスの件で、シムルのSSはⅥ(6)に到達したはずだよ。おそらく元はⅣ(4)あたりだったのだろうけれど」


(……合ってる)


 シムルと最初に出会ったとき、彼のSSはⅣ(4)だった。それが現在、本当にⅥ(6)に至っているのであれば、すでに楓也と同じエリアまで来ていることになる。


「ヴェリスや阿岸君は?」


「ヴェリスは無垢《むく》な魂であったがゆえ、シムルとともに健《すこ》やかな成長をとげている。彼女はⅢ(3)からⅤ(5)まで移動しているだろうね」


「Ⅵ(6)ではなく?」


「ああ。彼女はおそらくYOSHIKAの魂と呼応している。彼が先に進むまでは、ともに停滞する可能性が高い」


「……何をもってそういう判断をしているのかわかりませんけど、阿岸君のSSはまだⅤ(5)のままという意味ですよね」


「その解釈《かいしゃく》で問題ない。彼はまだ決定的な機会が巡ってないようだからね――まあ、君がつかみかけている案件が片付けば一気に動くかもしれないけど?」


「……またそうやって仄《ほの》めかすんですか。その匂《にお》わせも含めて、エリア移動の阻害ってやつが絡《から》んでいると?」


「フフフ、理解がはやくて助かるよ。……でも、今後のためにもう少しだけ踏み込んでおこうか。もぷ太くんは"自由意志"を知っているかな」


「? 藪《やぶ》から棒に、なんの話です」


「阻害の延長線上にある話さ。君は、成長とはどういう時に起きるか考えたことはあるかい」


「成長? そりゃ、努力して、自分を磨いた時に……」


「では、その努力しようという意志はどこから来るのかね」


「……先に進もうと思えるような出来事があったとか」


「ふむ。でもその出来事は、本人にとってターニングポイントに成り得たとしても、また別の人にとっては何の変哲《へんてつ》もない、些事《さじ》にすぎないかもしれないよねぇ?」


「…………なにが言いたいんですか」


「つまり本人が必要性を感じ、そうしたいと心から願うことで初めて努力という行動が生まれる。そしてそれが実を結んだ時、人はようやく成長できるのだよ」


「そのことと"自由意志"に、なんの関係が?」


「車の両輪《りょうりん》というやつさ。己の成長にかかわる決定を能動的に行うために、不可欠となるのが自由意志だ。自由意志は人間のアイデンティティであり、自由であるがゆえプラスにもマイナスにも傾《かたむ》くことができる。……そこへちからを持つ者が現れて成長を手助けした場合、どうなると思う?」


「?」


「答えはかんたん――自由意志は怠惰《たいだ》というマイナスを選択し、成長の機会そのものが失われる。なにせ自分が動かなくても、ちからのある者がなんとかしてくれちゃうわけだからねぇ」


「……それって、あなたとぼくたちの比喩《ひゆ》ですか。甘えるなとでも言いたいんですか? ……ぼくらは怠惰を選んだりしませんよ! ただ、人間生きていれば本当にどうしようもない時だってあるでしょう! そういう時は普通、みんなで助け合うものじゃないですか……あなたには、人のこころがないんですか!?」


「なかなか鋭いね」


「は……?」


「私のこころは――いや、いい。もぷ太くん、最後に大事なことを伝えよう。今日ここに来てもらった一番の理由でもあるんだけど」


 そう言って情報屋は浮かび上がる。

 この男は、いつもこうやって唐突にいなくなろうとする。


「待ってください! まだ聞いてないことがたくさん……!」


「いいかい、もぷ太くん。君のいう"どうしようもない時"というのは、実は偶発的に発生しているものではない」


「!?」


「物事には、それが起こらなければならなかった理由が必ず存在し、またそれと向き合うことでしか得られない成長も存在する。君たちは今後、君たち自身の自由意志で困難に立ち向かった先でしか、押垂《おしたり》夕鈴《ゆうり》に辿り着くことはできないよ。くれぐれも気をつけて」


「! あなたは、もうすべて知って……!」


「どうかな。あと、今の話はまだYOSHIKAに言わないほうがいい。言えばその分、目標への道のりがさらに険《けわ》しくなるからねぇ。ククク……」


 音もなく消え去る情報屋。

 静寂をきわめた洞窟でひとり、楓也は目を閉じて考えふける。


(結局、あの人なりの誠意のつもり……だったのかな? いずれにせよ、ぼくがやらなきゃいけないことは変わらない。フィクサー(・・・・・)の証拠を、もっと集めなきゃ)


◇


「自由意志と、♯∽Δ�§¶ですか……」


 星空の下、アイとアーリアが並んで座っている。


「ええ。後者はエリアⅧ(8)以上でないと認知できないので、きっと別の伝え方をしていると思いますが……今ごろ、もぷ太さんもこれと同じ話を聞かされているでしょう」


「楓也ちゃんが? 一体どなたから……」


「みなさんが黒の情報屋と呼んでいる人――波來《ならい》明虎《あきとら》からですね」


「まあ! あの方、プレイヤーでしたのね……わたくしはてっきり」


「ふふ、確かにわたし達と近いものがあるかもしれません。あの人の魂はちょっと変わっていますから」


「……明虎さんとあなたは、どういう関係なんですの?」


「それについては、次の目的地で知る機会があるはずです。申し訳ありませんが、今はお教えすることができません」


「わかりましたわ。それで、今回お話していただける内容はこれで全部でしょうか?」


「……もう一つあります。エリアⅨ(9)にいるあなただからこそ、この段階でお伝えしておかねばならないことが」


「?」


「夕鈴と同じあやまちを繰り返さないためにも、どうか心して聞いてください。さもなくばあなた達は――ヴェリスさんに殺されることになります」

今回は作中屈指の重要エピソードかもしれません。


※お読みいただき、ありがとうございます!

 もし続きを読んでみようかな~と思いましたら

 ブックマーク、または下の★マークを1つでも

 押していただけますとたいへん励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。