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「オレが複数いてここで魔素を生産しててもそこまで楽しくないだろ。ってゆうかオレ自身が気持ち悪い。何かもうちょっとマシなアイデアはないのか」
《ルル。もう私たちは仲間です。恥ずかしいとか遠慮とかどうでもいいでしょう。敢えて言いますが人と神の境界線さえ私たちの間には無意味です。
せっかくそこまで気持ちを言えたのです。わたし達がこの最下層にずっと滞在するのは無理と理解した上で、それ以外の心からの望みがありますね?言ってごらんなさい》
「・・・・・・」
《言えませんか?恥ずかしがり屋さんなのでしょうか。この世界の神の心の動きは人に近しいのですね》
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・いや、ひっぱりすぎぃ!」
《マスター、すこしだけ、ね》
「・・・オスの白ネコがほしいにゃ」
「お年頃かよっ!」
《マスター、下品な言い方はやめてください。神であるルルの意図はそういう事ではありませんよ。無聊を慰めるような気持ちの筈です》
「そうですよりくさま。いまのはヒドイですょ。黒と白がそろったらかわいさも倍になるですの。ノワールとブランですの」
「だからその名前はだめだって。じゃなくてドッペルゲンガーをネコにするのね?んで一緒に暮らすと。だれをどうコピーするの。外界からネコ連れてくる・・・のは無理だな」
《前の様にマスターをベースでいいでしょう》
「オレをベースにって、それおかしくならないかな。ミューズを創る時は同じ人間だったわけだし?ベースがオレでも納得できるけど、オレをネコにって強引すぎでしょ」
《良い機会ですのでもう少しドッペルゲンガーシステムについて解説しましょう。しかしそれを説明する前に理解しなければならない概念があります。名を付けるなら『神の万物データベース』です》
「お~~いおいおい、まてまて、オレのテンプレセンサーが反応したぞ。ズバリそれは『アカシックレコード』だろ、ど~ん」
《はい否定しません。あらゆる全てを収めた場所であり概念です。マスターは一瞬で理解できたようですがミューズ、ついてこれますか》
「・・・てへっ」
「ミューズ、でっかい倉庫だ。なんでも置いてあるんだ。ミューズが思い付くもの全部だ、ぜ~~んぶ。物だけじゃない、情報とか概念とか想いとか歴史とか、とにかく全部あるって思っとけ」
「わかりましたっ!りくさま!」
《この魔石をコピーする例でいきましょう》
そう言ってミューズにさっき入手したD級魔石を取ってこさせて皆の目の前に置かせる。
《まずは観測してこの魔石の情報を取得します。形、色、大きさ、重さ、材質、内部構造、エネルギー、含有してる魔素、などなどなど。
その後に複製を創りあげると思いますよね?便宜的にコピーと呼んでいたので当然です。実はそうではありません。ここで『アカシックレコード』から『最も近い素体』を持ってきて魔素を加えて物質化するのです》
「あれ?いきなりわからなくなったぞ」
《安心してください。わからなくなっていることをわかっています。
この魔石の形はほぼ球体ですね。この形を現実の世界に再現するには、まずこの形に一番近い『素体』を『アカシックレコード』から持ってきます。それに魔素を注ぐとこの形が現実に再現します。同様に色も、大きさも、重さも、他すべて同じように一番近い『素体』をそれぞれ持ってきて魔素を注ぎ再現します。
再現したそれら全てを組み合わせると魔石が物質化するのです》
「・・・アニメとかアイドルのフィギュアの金型っぽい?」
《何気なく川崎陸の趣味を暴露しましたが例として悪くありません。色の金型、形の金型、大きさの金型、重さの金型、各々全てに魔素を注ぐ。金型を外して色、形、大きさ、重さを取り出し全て合体させると魔石が再現します》
「なんとなくわかったが、なんでそんな回りくどいことするんだ?その場ですぐ複製でいいじゃん」
《金型の良い点はなんでしょうか?》
「ん-と、一度金型を作ってしまえば次からは簡単に何度も作れる。その都度一体一体の手彫りはめちゃ大変だろうからな。商売だったら量産するだろうし」
《まさにソレです。10層の現場でドッペルゲンガーシステムを用いて一から複製を始めると消費するエネルギーは莫大、かつ時間もおそろしくかかってしまうのです。神々のすべてが共有している『アカシックレコード』ならもうそこに金型があるのです。手彫りをする必要はありません》
「つまり神々がコピー能力を使うときの金型データベースが『アカシックレコード』であると?ドッペルゲンガーのシステムは対象に必要な金型をいっぱい持ってきて魔素を注いで成型するシステムだってか」
《天才的な比喩能力ですね。その通りです。ただし『アカシックレコード』はコピー能力使用時に限定されるわけではなく、あらゆる神の能力を使用する時に用いられるデータベースです。
神々はこのデータベースを利用することによって様々な能力を効率的に運用しています。その最たる例がこの複製の製造なのです。
今回は理解しやすさのため金型という言葉に頼りましたが実際はもっと普遍的な物なのです。今は学ぶ必要はないでしょう》
「だいぶ脳が疲れた。そしてミューズはあきらめて聞いてないな」
「ルルをだっこするのにいそがしぃのです。しかたのないコトです」
黒ネコを抱いた幼女を抱いた超絶美女が最下層をブラブラ歩いて散歩してた。おまえら自由かよ。かわいーし癒されるじゃねーか、ちきしょう。
《これで『アカシックレコード』とドッペルゲンガーシステムが理解できました。ここからやっと本題です。何が本題だったか覚えていますか》
「・・・・・・・・」
《マスターをベースにして白ネコを作ることの妥当性とその可否です》
「そうそうそう、いま言おうとしてた。マジで」
《はいはい。別に構いません。説明を続けますよ。
ドッペルゲンガーシステムでマスターから情報を取得します。種族、体、性別、外見、ステータス、スキル、服装、持ち物などなどですね。ミューズの時は主に体、外見、性別、服装などを偽装しました。
白ネコの場合は加えて種族なども偽装すればいいのです。この意味においてベースにはそれほど拘る必要がありませんね》
「ん~そっか。偽装するからベースはなんでもいいわけか」
《と見せかけてベースはマスターである方が好ましい。全く他人の別の存在に偽装を施すより、自分自身つまりマスターに偽装を施す方が何千倍も何万倍も楽ですし精度が高くなります》
「た、たしかにそりゃそうだ。実質オレ一択なんだな」
《その通りです》
「説明はおわりましたかぁ?わたしがうまれた時とおなじモノがみられるんですの?ドキドキしますぅ」
「そうだな。さっそく行くか」
《待ってください。ルル、白ネコの名前はどうしますか。それと身体機能やスキル的な物で何か希望はありますか。わたしとしては全回復法を移植したいのですが》
「まてアイ、前に自分でユニークスキルはコピーできないって言ってたぞ」
《はい。ユニークスキルは『アカシックレコード』に金型がないのです。過去に誰も持ち得ていないモノなので。どこかの神がその存在を認識して金型を登録しないといけないのです。でもルルが協力してくれたらあるいはどうですか?》




