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 スタッフに連れられ、ロビーの隅にある通路を奥へ進む。


 通路にはいくつかの部屋がつながっており、通路の左右にその部屋への入り口がある。基本的にドアはないようだ。歩きながらちらっと視線だけで中を覗くと、スタッフらが働いているのが見えた。


 いくつかその入り口をスルーした後、ドアがきちんと備え付けてある入り口の前に止まる。



「こちらへ」



 開けられたドアに入り、中を見回す。

 さっき会議室と言っていたな。複数の椅子と机があるだけの単純な部屋だ。


 一応会議室には見える。この世界ならこんなもんか?

 ホワイトボードなんてあるわけもない。


 勧められるままに座り話を待つ。

 お茶でも出ないかな?



《マスター、ここからの会話を私に任せていただけませんか》


(いいけど。ヤバイ感じ?)


《警戒した方がいいでしょう。ダンジョンの話を初めて聞いた時、マスターをお止めしました。あの時いくつかの要素を警戒していての事でしたが、その一つに『力ある者の把握、利用』という項目がありました。

 ダンジョンで得た魔石の査定は、マスターの異質な力を公開するに近い行動です。ここからの会話は慎重に行わなければいけません。下手をすると利用され、マスターの自由な行動が制限される可能性が。それはいまのマスターが何より嫌うもの、ではありませんか?》


(あぁ、そんなことになったらキレるぜ。マジにな)


《今後の活動を考えれば、ダンジョン管理ゲート組織とは良好な関係であるべきです。どうかおまかせください。いつもならマップを表示している左上に、発言すべきテキストを表示しますのでそれに従ってください》



 上司っぽいのがやってきたな。前回も見た人だ。



「お待たせしました黒瞬様。ご足労をおかけします。課長補佐のアディウートルです。一昨日もお会いしました。

 わざわざ場所をかえさせていただいたのは他でもありません。お持ち帰りいただいた魔石についてです。物量も驚異的ではあるのですが、問題はその等級です。我々の記録にはない魔石でした。

 察するにかなり深い層に到達されたのではと。

 ご存じのようにダンジョンでの魔石収集活動において、常ではない事が起こった場合、活動者にはそれの報告義務がございます。

 お疲れの所大変申し訳ないのですが、事情をご説明願えませんか」


「もちろんです。協力させて頂くのは吝かではありません。その前にまずは等級の結果を教えてもらえませんか?」


「ありがとうございます。F1級18個、F2級47個です。今回F級はありませんでした」



(F1、F2て! そんなんあるんかよ)



 オレは心の中でつっこんだけど、アイはさも存じてます的な態度を崩さず話す。

 いやホントに知ってたくさいな?

 油断するとやべー所からもいろいろ情報集めてるからな、この子。



「承知です。そちらのお考えの通り9層まで到達しました」



 滑らかに切り出した後、詳細を簡潔に冷静に告げてゆく。


 ウルフは無視した。

 4~6層はボアでF1が出る。

 7~9層はグレートボアでF2が出る。

 グレートボアは同時には最高2頭までで3頭は無かった。

 10層はノータッチ。



「大変わかりやすいご説明、また貴重な情報です。当然ですがこちらからも情報を。

 本日塗り替えられましたが、いままでの最高到達層は7層でした。7層の魔獣の情報は無し。ダンジョングレイウルフからはF級魔石が、ダンジョンボアからはF1級、ここまでは把握しておりました。

 黒瞬様のご活躍により、9層まではダンジョングレートボアでF2級と判明したということですね。

 念のための再度確認ですが、10層は情報なしということで?」


「はい。降りてさえいません」


「承知しました。これは一般には秘匿されておりますが、10層にはクセのある各ダンジョン共通の魔獣が配置されているようです。ご注意ください」


「詳細は? ないのでしょうか?」


「大変申し訳ありません。10層の詳細は、10層を通過した実績があるダンジョンの管理組織にしか公開されていないのです。

 黒瞬様がその実績を解除されるのを心から希望します」


「まだ10層に挑む準備ができていません。しばらくはないでしょう」


「・・・・そうですか。それは残念ですが仕方ありません。では別のお話を。

 黒瞬様は単体でご活躍なされておいでですが、ダンジョンは複数人で突入するのが一般的なのです。あえて言うならば、一人では危険すぎて無理なのです。

 あなた様はどのように攻略なさっておいでなのでしょうか」


「・・・・その質問に答える義務が?」


「・・・いえ、失礼しました。詮無き事を申し上げました、お許しください。

 次に7~9層についてなのですが、地図情報をいただけませんか?」


「すいませんが、道中は危険なので道順をメモする余裕はありません」


「ではどうやってお戻りに?」


「足には自信があるので」



 一瞬、課長補佐殿は面食らったまま動きが止まった。

 意味をよく理解できなかったようだ。

 しつこく聞いてくるようなら、『答える義務が?』カウンターだ!



「ハハ・・・では地図情報の作成を依頼させていただけませんか? もちろん報酬はお支払いします」


「作成には数か月~半年を使うでしょう。その間に私が持ち帰るはずだった魔石、及びその換金額はどなたが補填してくださるのでしょう? それを凌駕するほどの依頼料なのでしょうか。

 また私だけにとっての事ではありません。そちらの組織としても、この領としても、あるはずだった魔石の供給がなくなってしまいますが。

 一昨日と本日の私が持ち帰った魔石量を考慮してお答えください」


「・・・・・・・・・・・


 参りました。降参です。

 あなた様に期待するあまり、押しつけがましい事を申し上げてしまいました。このダンジョンはややマイナーで、魔石産出量も少なく、記録層も浅い。

 こういうダンジョンを統括する我々にとって、あなた様は長い冬があけたばかりの春の日差しのように希望に満ちたものでしたので。

 重ね重ね申し訳ありませんでした。謝罪いたします」


「いえ、お役目なのは理解しています。こちらにも悪気は一切ありません。お互いに流すということで?」


「ご配慮痛み入ります。では係りの者に清算させますのでお待ちを」



 口調は平気そうだったが、あきらかにガッカリした様子で課長補佐は出て行った。

 交代で女性スタッフがやってくる。


 一瞬アイが警戒するのがわかった。

 例の人ではない。



「ご報告差し上げます。

 F1級魔石18個、F2級魔石47個。F1は銀貨4枚。F2が銀貨5枚となります。F2については、本ダンジョン初出であり、暫定とさせていただきます。

 合計かつ税を抜き、金貨21枚と銀貨4枚、小銀貨9枚となります。ご確認ください」


「はい、前回と同様に銀貨以下の端数を下さい。残りは組合の預託金へ。サインもここでしてしまいますね」


「承知しました」



 そそくさとやる事を終え、管理ゲートを後にする。女性スタッフが二人でお見送りだ。



(お疲れ、どうだった?)


《完全に予想範囲内でした。警戒してはいましたが肩透かしです。マスターのお力を全く理解していません。こちらには好都合ですが。そのうち理解してしつこく言い寄ってくるでしょう。

 また、情報にウソはありませんでしたが、10層の魔獣に関しては伏せられていましたね。10層の情報はこの管理ゲートの施設においても発見しているのですが》


(あいつら10層クリアさせて箔つけたいんだろ? なんで伏せるんだ? むしろ積極的にもってこいよだろ)


《おそらくですが・・・・あの課長補佐は本当に知らない可能性が。10層の情報を見つけた部屋は、明らかに他の部屋より大きく、家具が上等でした。

 この施設の最上位職制、またはその近辺しか知らないのかもしれません》


(アイ・・・・スパイ活動はほどほどにな)


《拒否します。データ及び情報収集は私の存在意義レゾンテートル、マスターのために決して手は抜きません》


(へいへい)

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