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次の日は久しぶりの完全休日にしようと考えていたが、昨日の関係で組合に書類を出さないといけないことに気付く。
ちなみにこの世界では一般人には休みの日というものはなくて基本的に毎日働く。斡旋所関係や軍の周辺も毎日営業だが非番という名目で交代勤務制なようだ。特にダンジョン管理のあの施設は24時間なので大変そうだな。
でもこれが当たり前だ。
別にこの世界全体がブラックってわけでもない。前世を覚えているオレだからこその感覚で休みを設けるけど普通は毎日働かないと生きていけないしね。だってその日暮らしだもん、一部のお金持ち以外みんなそう。
いつもの如く斡旋所に向かいバススに挨拶と手続き。金額を見てギョッとされるも何も言われないし言わない。
「リクさん。そろそろ組合長が言ってた月二回の納入ですよ。どうするっすか」
「あ~はい。少し考えがあるので・・・できれば組合長と話したいのですがいますかね?」
「今日はお昼すぎ少し遅めの時間の予定です。組合長同士の打ち合わせが入ってるっす」
「結構時間ありますね・・・わかりました。またその頃に」
思わぬ時間が空いてしまった。
宿に戻って寝ててもいいんだが気分じゃないな。う~~ん。
そうだ。前から気になってた事。武器屋、防具屋、鍛冶屋について調べようかな。あっその前に宿屋を変えるんだった。手続きしよう。
《マスター、街に武器屋と防具屋はありません。斡旋所内に鍛冶組合があるので聞きたいことがあれば訪問するとよいでしょう。
また、移行するに最適な宿屋は複数の候補から抽出し決定済です。質、サービス、食事共に街の最高峰ですがお値段も最高峰です。トイレ事情も最善です。
しかしながら真の決定打となったのは『お湯提供サービス』です。これはマスターが切望していたものです》
(なんだとっ!ついにかっ!決定だ。最高の選択だ、よくやった)
《はい。ではまずは鍛冶組合へどうぞ》
オレはまだ見ぬお湯提供サービスに期待を膨らませながらアイの案内に従い鍛冶組合へ。ここでもやはり受け付けがあり男性に話しかける。
「すいません。ここ鍛冶組合ですよね?少し聞きたいことが」
「なんだ?誰だ?」
「失礼。狩猟組合の者でリクと言います。聞いてもいいですか」
「おまえ・・・例の黒髪か、女みたいな顔しやがって」
カチーーン。ケンカうってるのか?やんのか?
オレは常時身体強化してるんだぜ?
いやまて、ここは斡旋所で人の目も多い。ここでの生活を捨てたいのか?
「ハハハ・・・少し話を聞いても?」
「なんだ」
「武器とか防具って販売してます?どこに行けば買えますか?」
「武器?うん?木こり用の斧ってことか?」
「いえ、戦闘用の剣とか槍とか。防具なら盾とか兜とか」
「売ってるわけないだろ危ない。犯罪者が気軽に買って使ったらどうするんだ」
「え、あ、はい。・・・各家庭で使ってる包丁とか鍋とかその販売は?その修理は?」
「おまえ街に来て間もないんだったか?一か月?丘の上村?あのクソ村にいたんじゃわからないだろうな。
簡単な修理ならここでやってやる。大がかりな鍛冶が必要な物は軍の中にある整備課だ。うちの組合員もたくさんそこにいる。兵隊の武器防具もそこだ。鍛冶仕事を頼みたいならそこに行け。もっとも高いぞ?なんならオレが話通してやろうか。もちろんわかってると思うがそれなりの物は必要だ」
アカン。これ以上ここにいたらコイツ殴るわ。
どうも。考えておきます、と言って即その場を離れる。
てめー、顔覚えたからな。
《マスター、大人な対応立派でした》
(ぶん殴ってもよかったけど、あんな奴に手だしても損しかないよな)
《ご安心ください。あのオスが保有するなけなしの魔素にジャミングを仕掛けておいたので。今頃フラフラしてまともに歩けていない筈です。脳と各肉体部位間の信号を邪魔しています》
(ちょっ、そんなこと出来るの聞いてないよ?魔獣に使えば無敵じゃん)
《反響定位の応用です。現時点では魔素容量の著しく低い者にしか通用しませんので》
(逆に言うとダンジョン以外ならおまえ最強じゃないか)
《すでにマスターがそうですが?あとおまえって呼ばないでくだ・・・いえ。お好きなようにお呼びください。その『おまえ』は身近な者への呼びかけで親愛の気持ちが含まれていると最近理解してきました。同じ『おまえ』でも相手や状況によって違う、大変興味深いですね》
(逆に使いずれーし!)
この後、軍の整備課の所在地を調べて訪問しあらためて武器等の販売がないこと、武器以外の鍛冶依頼は出せる事、ただし時間と金がかかる事などを確認した。
急いで宿屋に取って返し今日までの清算をする。ちなみに清算といっても宿屋は先払いが基本なので余剰分を返してもらう清算だ。
受け付けの人に心付けを渡すとこちらが驚くほど喜んでくれ、また惜しんでくれた。
約一か月かな、お世話になりました。
続いて新しい宿へ。着いたら受け付けに話しかける。
「もしや黒瞬様では?お会いできて光栄です」
「アハハ、どうもよろしく」
おかしくない?ダンジョン2回しか入ってないしたったの数日前からだよ?北の森のグレートボアの件とかも目立ってる?あの受け付けの女性の拡散じゃないだろうな?インスタでもやってるのか。
それとなく受け付けの人に聞いてみたら。
「この宿を気軽にご利用いただける方は少数です。その可能性がある方に対しては、常に情報網を張り巡らせ営業に活かしております」
「いやはやプロですね。変な事聞いてすいません」
「いえいえ。
ところで、あなた様のような特別な方に喜んで頂けるサービスをいくつかご準備させて頂いております。簡単にご説明させて頂いても?
まずはご利用料金の支払いですが、あなた様の所属組織のプール金からこちらで引き落とし処理対応が可能です。あなた様の手間はサインのみになります。
また、連泊される方のお部屋の清掃サービスとお洋服の洗濯サービスも大変ご好評頂いております。
さらに『お湯提供サービス』はいかがでしょうか。これは各部屋にあるバスルームに大きめの盥とお湯をご提供するものです。つまり疑似的な入浴ですね。盥は魔道具です」
「それ全部申し込みます!」
「ありがとうございます。必ずやご満足して頂けるものとなるでしょう。お部屋を出る時、またはお帰りになられた時に受け付けにお申しつけください」
おいすげーーよ!前世並みのホテルやん!
ってかこの人、口は滑らかでうまいし説明はわかりやすいし人当たりもいい。値段も確認せずに申し込んじゃったよ。アイも何も言わないしな?
《マスター、この個体の魔素容量は決して多くはありませんが注目すべき魔素の動きを見せています。ここにいる間は詳細を観測する必要があるようです》
何も言わないなと思っていたらアイがまた怪しい事を言い出した。ほどほどにな、と言って宿をいやホテルを出る。
次はまた組合だ。忘れちゃいない。




