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辺境の村人に転生した俺が、追放された悪役令嬢に好かれ、エルフの幼馴染には迫られる日々。  作者: 月見里さん


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「見えるものより、見えないもののがいいて?」


「見えないものって、素晴らしいと思わないか」


「…………急になによ」


 昼寝から目覚め、リビングへ辿り着いた俺を出迎えたのは可愛らしい声でもなく、冷たくあしらう酷い声であった。

 いや、声低すぎだろ。海底にでも住んでるのか。

 寝起きのVtuberみたいな声質やめてくれよ。


「例えば、心。これは間違いなく見えないものだ。個々人で思っていることも、考えていることも、それによって引き起こされる心理現象だって、個性がある。

 これらは一切見えないはずが、誰でも持っているそれぞれの色がついた素晴らしいものだ」


「…………はぁ」


「そこにあるが、実際に存在しているかは見えないわけだ。そういうものは、決まって想像した人間によって造形が左右される。つまり、様々な人間によって作られる形や色、質感に至るまで個性的かつ妖艶なほど魅力的なわけだ」


「…………何が言いたいのよ」


 よくぞ、聞いてくれた。

 ここまではただの前座、本質はこれからだ。

 その呆れた瞳を恍惚としたものにしてやる。


「つまり、お前らてパンツ履いてるの?」


「くたばれ」


 一瞬であった。

 刹那の殺気を感じ取った隙間に、クルフは椅子へ気だるそうに座っていたはずが、俺の左頬へ右の拳を殴りつけていた。


「おぐほっ!?」


 ぶん殴られ、そのまま勢いに抗う術もなく転がって柱に激突する。

 背骨に走る痛みに耐え、頬をヒリつかせる殴打にも耐えながら、俺は即座に回復魔法を施す。


「急に何をするんだ」


「あんたの方こそ、急に何を言い出すのよ気色悪い」


 違和感の残った頬を撫でながら、立ち上がる。

 そんな様子をクルフは軽蔑の視線を向けていたが、いやいや、何も理解しちゃいないなクルフくんよ。


「クルフよ。俺はこの世界へ転生した人間だ」


「知ってるわよ」


「それも、生のパンツは見たことない人間だ。父親の風呂上がりの贅肉が乗せられたパツパツな布地とか、家族の洗濯物でしか見たことがない。

 そんな俺は、疑問に思うわけだ。お前たちは本当にパンツを履いているのかと」


「その流れになるのはよく分からないわよ」


 実際問題、どんなパンツを履いているのか気にはなるだろ。普通、常識的に考えて。

 異世界での常識はどんなものなのか。把握するのは大事だろ。

 それがたまたま下半身の布地てだけで。

 理由としては健全だ。


「もし、履いているのならいい。どんな素材か、どんな色か、肌触りや目で見た時の印象なんかを見せてくれれば、触らせてくれればいい。

 ただ、問題はな。お前がパンツを履いていないということだ」


「……」


「それでいいのか? 寂しくはないか? そう思うわけだ」


「…………何が言いたいわけ」


 おやおや、下賎な輩を見るような瞳ですこと。

 でも、そんな目こちとら慣れてるんだよ。

 逆に快感だね。


「つまり、履いているならパンツを見せてくれ。

 履いていないなら、俺が作ってやる。

 お前みたいな暴力的で、女らしくないような奴でも似合う可愛らしくセクシーな奴を仕立ててや――」


 そこからは走馬灯だ。

 言い切るまでに、俺はクルフによる渾身の一撃を顔面に喰らい、意識が明暗していく中、物思いに耽っていた。


 そういえば転生する前――それも小学生の頃、初めて家族以外のパンツを見たなぁという記憶が蘇る。


 学校からの帰り道。それも友だちとは一緒に帰らない物寂しい道ではあったが、庭先から見える洗濯物に目を奪われた。

 ピンクの布地。しかもレースでフリフリがついたものだ。

 可愛らしくとも、扇情的なソレに目を奪われ、童帝心が燻られながら、その形状や色に至るまでを目に焼き付けていた。

 きっと、綺麗なお姉さんが履いている――いや、自分を着飾るアイテムとして使っているんだろうと妄想していた。


 そして、何をするつもりでもない。ただ、吸い込まれるように記憶に刻みこんでいたのだ。

 そんな時だ、立ち止まって真剣に脳のメモリー最大限まで活用している時、すれ違う同級生がこう言ったのだ。


「うわ、あそこのおばちゃんまた自分のパンツ干してるよ」

「あ、本当だ。この時間に干すのやめて欲しいよね。家族の誰か止めてくれないのかな」

「聞いたところによると、おばちゃんひとり暮らしてやつらしい。だから、あれもおばちゃんが履いているキャピキャピのパンツだってよ」

「うへぇ、見ちゃったよぉ」


 そう言いながら、通り過ぎていく中、俺の頭は真っ白だった。

 今すぐにでも頭を強打して見たことも、パンツの色も、形状も、誰が履いていたのかさえ忘れたいと。

 落ち込んで帰ったのを思い出す。


「……あんた、なんで殴られて泣いてるのよ」


「…………すまん、クルフ。もう一回、一回でいいから――」


 溢れ出る涙は悔しさに染まっていて、自分の愚かさを呪っているようだった。


「俺の記憶が無くなるまで思いっきり殴ってくれ」


「わかった」


「え――」


 逡巡の迷いもなく、クルフの凶悪な一撃に見事俺は記憶を無くすことに成功した。



 ――目を覚ましたのは三日後だったが。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


なんとなく面白い話になっているか不安ではありますが、脳みそを空っぽにして読んでいただけるような作品を目指しております。

さて、休載すると言っていたのですが、なんとかストックは減りましたが更新ができそうな感じですので更新していきますね。好きなだけ書いて、好きなだけ休む。

そんな感じですので、ご理解頂けると幸いです。

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