「アミアミで擦ると、ばか気持ちいいて?」
「網タイツてないのかな」
「いや、急にどうしたの」
おやつ時、俺は過去の思い出を暇つぶしに掘り返しながら、そう呟いていた。
異世界に網タイツというものがあるのかどうか。
そこが気になる。
いや、前世で大和なでしこ先輩がタイツ履いていて、あれで擦られると馬鹿みたいに気持ちいいんだろうなとかは考えたけど、それよりかは娯楽の話だ。
ファッションの話だ。
「網タイツてご存知?」
「いや、知らないわよ」
「わたくしも知りませんわ」
「じゃあ、んーそうだな」
とりあえず、ここで便利なのがスマートフォンもどき。記憶を引っ張り出して、網タイツの画像をイメージしながら魔力で出力。
そうすればあっという間に、画面に網タイツを履いたバニーガールの完成よ。
それを訝しげな表情の二人へ見せる。
「なんで、よりによってこんなエッチな格好なのよ」
「素晴らしいだろ? 肌の露出は最低限でありながら、見せるべき部分は見せることで、見えていない秘境を想像させる神々から賜ったとされる衣装だ。
これで何回致したことか、君たちには分からないだろうけど」
半笑いを浮かべる俺に対して、クルフは明らかな侮辱の目線を送ってくる。
やっぱり分からないかぁ、この素晴らしさを。
残念だねぇ。
それとも、写真の女の子が可愛すぎて嫉妬しちゃったのカナ? お胸も大きいからネ。大丈夫だヨ、クルフちゃん。女の子は胸の大きさダケじゃないかラ。
「それで、網タイツとはどれですの?」
「あぁ、その子が足に付けているアミアミの履物あるでしょ、それが網タイツだよ」
「これが……そうですの……。なんだか、透け透けですわね。これがいいんですの?」
はい、とても。
「いやらしいわね。兎なんて年中発情期の家畜じゃないの。それをモチーフにしてるくらい、性に貪欲なのアンタの世界は?」
「はい、とても」
「そう聞くとなんだかえっちに見えてきましたわね……」
何を言うか。
今力説してやってもいいんだぞ。
スタイルが良くないと着れないものでありながら、艶かしい発色に男の猛々しさが駆り立てられる素晴らしいものだぞ。
随所に見える肌の露出のお陰で、見た者の想像力を掻き立てるエロスだぞ。
――と、言ってやりたいが本題からズレてしまいそうなので、やめておこう。時には我慢も大事なのだ。
「で、この網タイツて見たことないのか」
「ないわね。そもそもこんなにも肌を露出しているのって、風俗街でしかないし」
「風俗街!?」
「基本的に、肌を見せるのは愛する者――一生を添い遂げる相手にのみですから。」
なんと、そんな素晴らしい一角が街にはあるのか。
ぜひ、いや是が非でも向かわねばなるまい。
えーいつ頃行くのがいいんだろうか。というか場所だって分かっていないけど、ひとまず記憶に残しておこう。
いつ出会えるか分からないし、覚えていて損は無い。
「で、その網タイツがあったらどうしてたのよ」
「え、そりゃアロマに履いてもらおうかと」
「わたくしですの!?」
そんな驚くことかね。
そんな目を見開くことかね。
「こういうの令嬢様似合いそうじゃん」
「いや、そういう問題ではなくてでして……」
あ?
なんで恥ずかしがってるのさ。別に履くだけじゃないか。心なしか、クルフの目線も冷たい気がするけど、いつものだと思えば気のせいだ。
「肌を見せるのは、ちょっと……」
「……あぁ、そういうこと」
ようやくアロマが恥ずかしがる理由が分かった。
なんだ、そういうことね。
「分かっていただけましたか……。ですので、その、もう少しお互いのことを知ってからでも――」
「贅肉がついて恥ずかしいのならそう言えよ。変に気遣うのめんどくさいし」
「数分前の会話くらい覚えておけやぁ!」
「おぼぉっ!?」
突如、背後で無視していたクルフからの飛び蹴りが俺の脊髄に炸裂する。
狩人をやっている健康的で鍛え上げられた肉体に、あっけなく俺の体は壁まで吹き飛び、衝撃と痛みを逃すのに必死でのたうち回る。
「痛えだろうが!」
「うっさい! もちっと人の話に興味もちなさいよ!」
興味のない話を覚えている必要なんてないだろ。
この時、俺は確かにそう思っていたが、もう少し話を聞いておけば良かったと後悔する出来事が起こるのは、まだ先の話である。
後悔先に立たず。自分の話だけに集中するのは、良くないという実体験であった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
そして、応援ありがとうございます。
さて、網タイツの話ではありますが、内容はあるようでありません。そんな作品です。
実際問題、異世界に網タイツがあるかどうか考えた時、ある世界線とない世界線の二分でしょう。
しかし、エロスというのは遺伝子に組み込まれた因果でもあり、天才の無駄遣いでもあるわけです。
まぁ私は網タイツよりかは黒タイツがいいですね。
どこかのココナッツミルクヒツジちゃんみたいなのがどタイプです。




