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四人

 


 あれからマトイがことあるごとに俺を心配してくれるようになった。

 率先してダンジョンの奥を様子見をしてくれるし、俺の手が汚れると「……大丈夫? 」と言って布で拭いてくれるのだ。

 (優しくしてくれるのは嬉しいんだが……)

 (少し過剰というか、優しさが大きすぎるというか……)

 嬉しいには嬉しいのだが、マトイには出来れば俺の少し後ろを歩いてもらいたい。

 もし敵に会えば俺が先に攻撃を受けた方が良いし、万が一のときもマトイひとりならなんとか逃げ切れるだろう。

 だから、マトイには俺の心配よりも、自分の心配をして欲しい。

 だが、そんなことを言えるはずもなく、俺はマトイの善意をその後も受け続けていた。


 

 さらにハングリーウルフを二匹討伐し、その皮を剥いでいるとき、

 (これはあれだな……)

 と俺は唐突に気がついた。

 (マトイは俺に対してお姉さんぶりたいようだな……)

 さっきから俺に世話を焼く姿を見てそう気づいたのだ。

 「……ふふ」

 マトイの少し後ろで、俺は自然にそう笑みが零れていた。

 自分よりも二歳年下のマトイが俺に対してお姉さんぶっている姿が可愛く思えたのだ。

 (俺に妹がいたら、こんな気持ちなのかもな……)

 小さい身体で一生懸命動いているマトイを見て、そんなことを思っていると、


 「……ピギー。気を抜かないよう、気をつけて。敵は、どこにいるか、わからない」

 とマトイに叱られた。

 「うん。わかったよ。マトイも気をつけて」

 そう返すとマトイは意気込みを込めてうんうんと鼻息荒く頷いていた。



 ……


 (もう少しでダンジョンの奥まで来そうな気がするが……)

 そう思ったときのことだった。

 

 「早く、早く」

 という声が聞こえて前を向くと、見覚えのある四人の男女がこっちに向かって走ってきていた。

 (あれは……、衛藤たちだ……)

 それは元クラスメイトの幸村健児、加納満、浦田遊矢、衛藤香織たちだったのだ。

 (この世界に来た初日に、俺にテイムを掛けて裸で土下座させてきたやつらだ……)

 遠くにその姿が見えただけなのに、すでに胸のなかに嫌悪感がいっぱいに広がってきていた。


 (ん…? あいつら、傷を負っているのか……?)

 良く見ると衛藤たち四人は装備がぼろぼろになっていたのだ。

 「ピギー、どけ、どけ、邪魔だ! 」

 加納がそう叫ぶ。うんざりした想いになりながら、道の脇に身をずらした。

 「お前、まだ死んでいないのか」

 すれ違いざまに浦田遊矢が舌打ちするようにそう言った。

 「いいから、そんな豚にかまっていないで、早く逃げるわよ! 」

 振り返って衛藤香織がそう叫んだ。

 「クソッ、当たりの職業を引いたはずなのに、なんでこんなに苦労するんだ」

 と加納が叫ぶ。

 「魔物がこんなに強いなんて、聞いてねぇっての! 」

 とこれは浦田遊矢。

 「ひい~」

 そう言いながら、最後尾にいた幸村健児が走り去っていった。



 (なんだ、あいつら……)

 (もしかして、この奥にいる魔物に返り討ちにされたのか……? )

 いかにも負け犬らしく逃亡していく四人をぽかんと眺めていると、

 「……あいつら、魔物を舐めてる」

 とマトイが呟いた。

 「どういうことだ? 」

 と聞くと、

 「たぶん、あいつら、良い職業適正を持っているんでしょう? 違う? 」

 「ほかの三人は知らないが、衛藤香織はテイマーだったな、確か」

 「……うん。鍛えれば、すごい強力な職業」

 「ってことは、この奥にいる魔物はよっぽど強いのかな」

 「……というより、あいつらがダンジョンを舐めているんだと思う」

 マトイが続けて言った。

 「いくら良い職業適性を持っていても、冒険を舐めていたり、魔物を見くびったり、仲間との連携がうまく取れないと、簡単に死ぬ。……あいつらは、それがわかっていない」

 (なるほどな……)

 と俺は思う。

 (確かにあいつら、良い職業適性を手に入れたって浮かれていたもんな……)

 (マトイの言うように、ダンジョンや魔物を舐めていたのかもな……)

 (案外、俺が思うよりも、元クラスメイトたちはこの世界で苦労しているのか……? )


 色々と考え込んで四人が去った方向を眺めていると、

 「……ピギーは大丈夫。ダンジョンも、魔物も舐めていない」

 とマトイが励ましてくれた。

 「……それに、連携も上手く行ってる」

 と付け足してくれた。

 

 「そうだな」と俺は微笑み、マトイの頭をフードの上から撫でてあげた。

 「ん」

 とマトイは照れを隠して頷いていた。



 「じゃあ、この奥に行ってみるとしようか……」



 


 現在のステータス


 

 愛称:ピギー

 種族:人間

 同伴者:マトイ(忌み子)

 所持金:銀貨7枚

 所持品:小型のナイフ×2、ブロードソード、未鑑定の剣3本

ハングリーウルフの皮×18、ウルフの結晶×18、ウルフの牙×72

ゴブリンの結晶×7、牙×14、尻尾×7、耳×14



 

 


 


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