古澤
「行こうか、マトイ」
「……うん」
ダンジョンの入り口をうろついていたゴブリンを殺すと、俺たちはいよいよダンジョンのなかに入っていった。
このダンジョンは洞窟になっていて、中はちょっとした迷路のようになっていた。
地形が入り組んでいて真っ直ぐではないのだ。
だが、それは俺たちにとっては好都合だった。身を潜めながら前に進み、マトイの“麻痺”を使って一匹ずつ魔物を殺していくのだ。道は真っ直ぐでない方が良い。
なかにいた魔物たちを俺たちは次々と殺していった。
殺した魔物たちはハングリーウルフが11体、ゴブリンを4体。
採取した魔物の部位はウルフの牙が44本、皮が11枚、結晶が11個。
ゴブリンの牙を8本、尻尾が4本、耳が8本、結晶が4つ新しく手に入った。
道中で魔物に殺されていた冒険者を二体見つけ、そこから未鑑定の剣を三本、小型のナイフを一本手に入れた。
前回、エイラさんのもとでウルフの牙が銀貨二枚で売れたから、これだけで銀貨88枚の稼ぎになる。
皮が銀貨5枚だから、こちらは銀貨55枚になる。
ゴブリンの部位がいくらになるかはわからないが、ハングリーウルフの部位だけで合計銀貨143枚分稼いだことになる。……これにゴブリンの部位を足すとなると、相当の稼ぎになると言って良いだろう。
(宿に困らないくらいには稼げるようになってきたな……)
俺は自分の手のひらを見つめた。
(俺……成長してきてるな……。結構、嬉しい……)
それから、順調に前に進んでいくと、ある一匹のゴブリンを殺したときに妙な結晶を見つけた。
「マトイ、見てくれ。見たことのない結晶が出てきた」
「……ほんとだ」
ふたりで結晶を見つめ合った。
その結晶は虹色をしていた。
ほかの結晶とは違い、明らかに特殊な色味をしている。
「マトイ、なんだろう、これ? 」
「……わからない。なにか、特殊な効果があるのかも……」
「それは、噛み砕いたときに、ってこと? 」
「……たぶん」
とマトイが頷く。
(特殊な効果のある結晶か……)
(ステータスに特別なボーナスがあったりするのかな……)
(帰ったらエイラさんに鑑定してもらおう……)
「やっぱり、ピギーの能力、面白い……」
興味深そうにマトイが俺を見上げる。
その目は大学で研究していた者らしく好奇心に輝いている。
「そ、そうかな………」
「うん、一緒にいて、飽きない……」
興奮気味にマトイは頷いていた。
そのとき、
「よう、ピギー。順調そうだな。ヒヒッ」
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこに元クラスメイトの古澤茂が立っていた。
「古澤か……。そっちはどうなんだ? 」
と俺は聞き返す。
「こっちはまあ、ぼちぼちやってるよ。ヒヒッ」
「そうか。古澤はひとりで冒険しているのか? 」
「まあな。俺のスキルはエンチャントナイトだからな。別に仲間も必要ないし。ヒヒッ」
(エンチャントナイトか……。ひとりだけで冒険出来る戦闘職持ちは素直に羨ましいな……。まあ、今は、マトイがいるから良いが……)
「それより、さっきお前が魔物の皮を剥いでいるのを見たぜ。ヒヒッ」
「……そうか。俺はクエストも受けられないから、魔物の皮を剥いで売らないと、生計が立てられないからな」
「クエストを受けられない……? そうなのか……? ヒヒッ」
古澤は首を傾げてそう笑い声を漏らした。
(クラスメイトみんながそのことを知っているわけじゃないのか……)
(古澤は悪いやつじゃないが……)
「じゃあ、俺たち、そろそろ行くから」
そう言って前に進もうとすると、
「ピギー。……お前、強くなる気がするよ。ヒヒッ」
と古澤が後ろから言ってきた。
「なんだって? 」
と聞き返すと、
「面白いスキルだなと思ってさ。ヒヒッ。みんな気づいていないかも知れないが、案外、そのスキル、有利だと思うよ。ヒヒッ」
「……そうか? ありがとう」
そう言って俺はマトイと一緒に前に進んだ。
(古澤は悪いやつじゃないんだが……)
悪いやつじゃないだけで、良いやつでもなかった。
過去に俺がクラスで虐められていたとき、古澤はなにも助けてはくれなかった。
それまでは話をしたり、一緒に遊びに行ったこともあったのだが、俺が虐められ始めると、途端に俺を遠ざけるようになったのだ。
(強いやつに尻尾を振るというか……。なにか、狡いところがあるんだよな……だから、あんまり関わりたくない……)
(クソッ……。嫌なことを思い出しちまった……)
「……大丈夫? 」
俺を心配してくれて、マトイがそう見上げてくる。
「ああ。大丈夫だよ。ありがとう」
(マトイがこうして心配してくれるのが、なにより嬉しい……)
(……というか、この冒険で、マトイとの距離もだいぶ縮まってきた気がする……)
「……私、嬉しかった」
マトイがぽつりと言った。
「ん? なにが? 」
と聞き返すと、
「……一緒に呪いを解こうって、ピギーが言ってくれたこと」
(ああ。そういえば、そんなこと言ったな……)
「……そうか」
と言うと、
マトイはすぐに目を逸してしまった。
それから、照れ隠しに口笛を吹いている。
(落ち込んでいる俺を見て励ましてくれたのかな……)
「……」
(やばい、結構、嬉しい……)
現在のステータス
愛称:ピギー
種族:人間
同伴者:マトイ(忌み子)
所持金:銀貨7枚
所持品:小型のナイフ×2、ブロードソード、未鑑定の剣3本
ハングリーウルフの皮×13、ウルフの結晶×13、ウルフの牙×52
ゴブリンの結晶×5、牙×10、尻尾×5、耳×10
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