表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の結末  作者: 鷹村紅士
22/23

22.

 竜に“手”を叩きつける。

 嫌がるように顔をしかめて、竜が翼を広げた。

 飛んでしまったら、また捕まえなければ。

 面倒。

 だから“手”で翼を掴む。


 笑い声がする。


 痛がるように身を震わせて、竜が吠えた。

 悪いけど、空にはいかせないよ。

 左の“手”に力を入れてから、右の“手”を一気に力一杯引っ張る。

 引き千切る。


 笑い声がする。


 気味の悪い音が聞こえてきて、鳥肌がたった。

 竜も痛いのだろう。悲痛な咆哮があがる。

 千切った翼を放り捨てる。そのまま胴体を掴み直して、今度は左の“手”を力一杯引っ張る。

 また気味の悪い音と、竜の悲鳴。

 竜が地面に倒れた。

 竜の翼は、人間で言えば腕の位置にある。両腕をもがれたのと同じになった竜は、血を噴き出しながらも僕を見ている。

 僕も竜を見る。


 笑い声がする。


 血が噴き出す量がどんどん少なくなっている。

 ボコボコと肉の断面が蠢いている。

 まさか千切れた腕も再生するの? 嘘でしょう? それだと、どこで爆弾を使えばいいのだろう。

 体の外側にくっついて? あの硬い鱗を吹き飛ばせる? すぐに治ってしまわないかな?


 笑い声がする。


 口の中? 近付いて食べられた所で爆発させる? 炎の吐息でも大丈夫なのに? 

 この爆弾、そんなに威力あるのかな?

 ……う~ん。確か、狩人は動物を仕留めた時に血抜きをするって言ってたっけ? でも傷がすぐに塞がっちゃうんじゃ……いや、翼は治らないのかな? うん、千切れた所の肉が蠢いて、盛り上がってきてる。どんどん、内側から膨らんできている。

 生えてきそうだ。


 笑い声がする。


 なら、どうしよう。え~と、どうすれば生き物は死ぬって言ってたっけ。

 ああそうだ。頭を砕かれるのと、胸の、心臓を壊されたら駄目なんだっけ。

 頭かぁ。

 竜は今、治療に専念しているのか地面に寝そべって動かない。


 笑い声がする。


 左の“手”で顎を押さえると、竜が暴れだした。

 構わずに右の“手”で頭を叩く。拳をギュッと握って、何度も何度も。思いっきり叩く。

 夢中になって叩いていたら、竜の唸り声が聞こえなくなって、笑い声がする。

 見れば竜の頭がもっと平べったくなっていた。

 潰れちゃった。笑い声がする。

 それでも、頭がボコボコと蠢き始める。

 これも治っちゃうのかぁ。すごいな竜って。

 笑い声がする。

 なら心臓かな。

 お腹を裂かなきゃ。

 動かなくなった竜の体を“手”で掴んで、よいしょっと引っくり返す。

 笑い声がする。

 頭と翼の部分はまだ蠢いている。さっきより翼の部分は肉が伸びている。

 早くしなきゃ。

 近づいても、竜は動かない。

 尻尾の方に行って、左の“手”で体を押さえて、右の“手”で胸の辺りを掴む。

 ぎゅうっと握れば、“指先”が肉に食い込んでいくのが分かる。

 血が噴き出して、竜の体がビクビクと跳ねる。

 笑い声がする。

 ゆっくりと右の“手”を動かせば、嫌な音とともに竜のお腹の皮が剥がれていく。

 跳ねる竜。笑い声がする。

 赤い煙が風に流されていく。

 ある程度剥がした所で、思い切り引っ張って皮を千切り捨てる。

 急がなきゃ。

 両方の“手”を地面に着いて、力を入れれば僕の体が浮き始める。

 人間は両手を使えば上半身を持ち上げられるし、すごい人になれば逆立ちして歩ける。なら力の強い僕の“手”なら、もっとすごい事が出来る。そう思ったけど、これはすごい。

 地面に着いた“手”で体を引っ張れば、僕の体はすぐに竜のもとへと辿り着くことができた。

 すぐ側に来て、分かった。

 竜はまだ生きている。

 呼吸していた。体が上下している。

 顔が潰れているのにだ。

 すごい。

 “手”を使って竜のお腹の上に登る。

 すごい臭いだ。あと気持ち悪い。

 もう裂けた所の肉が蠢いている。

 爆弾を体の中で使えば、心臓は壊せるかな?

 見ると、肉と骨の間に赤い岩があった。いや、岩じゃない。明るくなったり暗くなったりして、膨らんだり縮んだりしている。

 なんだろうこれ。

 それが膨らんで明るくなると肉が蠢く速度が早くなって、縮んで暗くなると遅くなった。

 これかぁ!

 これがなければいいんだな!

 さっそく両方の“手”を使って、その岩みたいなものを取り出す。

 ぶちぶち。ぷしゃー。

 わぁ、大きいなぁ。でも邪魔だし。そこら辺に置いておけばいいよね。ぽい。

 岩みたいなものを取り出したら、肉が蠢くのをやめていた。

 あと、僕が入り込むのにちょうどいい空間も。

 ここでなら、大丈夫かな。

 入り込むと、臭くて、目が痛い。足下がぬかるんで転んでしまった。

 急いでリュックサックを降ろす。中を見れば黒光りする大きな球がいくつも入っていた。割れたりしていないから、良かった。

 そういえば、これどうやって爆発させるんだろう。

 聞いておけばよかったなぁ。

 でも、割ればいいんだよね。

 じゃあ割ろう。それで終われる。


「せーの」


 右の“手”で球を一個、摘まんで、潰す。

 ああ、これでぼ──。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ