22.
竜に“手”を叩きつける。
嫌がるように顔をしかめて、竜が翼を広げた。
飛んでしまったら、また捕まえなければ。
面倒。
だから“手”で翼を掴む。
笑い声がする。
痛がるように身を震わせて、竜が吠えた。
悪いけど、空にはいかせないよ。
左の“手”に力を入れてから、右の“手”を一気に力一杯引っ張る。
引き千切る。
笑い声がする。
気味の悪い音が聞こえてきて、鳥肌がたった。
竜も痛いのだろう。悲痛な咆哮があがる。
千切った翼を放り捨てる。そのまま胴体を掴み直して、今度は左の“手”を力一杯引っ張る。
また気味の悪い音と、竜の悲鳴。
竜が地面に倒れた。
竜の翼は、人間で言えば腕の位置にある。両腕をもがれたのと同じになった竜は、血を噴き出しながらも僕を見ている。
僕も竜を見る。
笑い声がする。
血が噴き出す量がどんどん少なくなっている。
ボコボコと肉の断面が蠢いている。
まさか千切れた腕も再生するの? 嘘でしょう? それだと、どこで爆弾を使えばいいのだろう。
体の外側にくっついて? あの硬い鱗を吹き飛ばせる? すぐに治ってしまわないかな?
笑い声がする。
口の中? 近付いて食べられた所で爆発させる? 炎の吐息でも大丈夫なのに?
この爆弾、そんなに威力あるのかな?
……う~ん。確か、狩人は動物を仕留めた時に血抜きをするって言ってたっけ? でも傷がすぐに塞がっちゃうんじゃ……いや、翼は治らないのかな? うん、千切れた所の肉が蠢いて、盛り上がってきてる。どんどん、内側から膨らんできている。
生えてきそうだ。
笑い声がする。
なら、どうしよう。え~と、どうすれば生き物は死ぬって言ってたっけ。
ああそうだ。頭を砕かれるのと、胸の、心臓を壊されたら駄目なんだっけ。
頭かぁ。
竜は今、治療に専念しているのか地面に寝そべって動かない。
笑い声がする。
左の“手”で顎を押さえると、竜が暴れだした。
構わずに右の“手”で頭を叩く。拳をギュッと握って、何度も何度も。思いっきり叩く。
夢中になって叩いていたら、竜の唸り声が聞こえなくなって、笑い声がする。
見れば竜の頭がもっと平べったくなっていた。
潰れちゃった。笑い声がする。
それでも、頭がボコボコと蠢き始める。
これも治っちゃうのかぁ。すごいな竜って。
笑い声がする。
なら心臓かな。
お腹を裂かなきゃ。
動かなくなった竜の体を“手”で掴んで、よいしょっと引っくり返す。
笑い声がする。
頭と翼の部分はまだ蠢いている。さっきより翼の部分は肉が伸びている。
早くしなきゃ。
近づいても、竜は動かない。
尻尾の方に行って、左の“手”で体を押さえて、右の“手”で胸の辺りを掴む。
ぎゅうっと握れば、“指先”が肉に食い込んでいくのが分かる。
血が噴き出して、竜の体がビクビクと跳ねる。
笑い声がする。
ゆっくりと右の“手”を動かせば、嫌な音とともに竜のお腹の皮が剥がれていく。
跳ねる竜。笑い声がする。
赤い煙が風に流されていく。
ある程度剥がした所で、思い切り引っ張って皮を千切り捨てる。
急がなきゃ。
両方の“手”を地面に着いて、力を入れれば僕の体が浮き始める。
人間は両手を使えば上半身を持ち上げられるし、すごい人になれば逆立ちして歩ける。なら力の強い僕の“手”なら、もっとすごい事が出来る。そう思ったけど、これはすごい。
地面に着いた“手”で体を引っ張れば、僕の体はすぐに竜のもとへと辿り着くことができた。
すぐ側に来て、分かった。
竜はまだ生きている。
呼吸していた。体が上下している。
顔が潰れているのにだ。
すごい。
“手”を使って竜のお腹の上に登る。
すごい臭いだ。あと気持ち悪い。
もう裂けた所の肉が蠢いている。
爆弾を体の中で使えば、心臓は壊せるかな?
見ると、肉と骨の間に赤い岩があった。いや、岩じゃない。明るくなったり暗くなったりして、膨らんだり縮んだりしている。
なんだろうこれ。
それが膨らんで明るくなると肉が蠢く速度が早くなって、縮んで暗くなると遅くなった。
これかぁ!
これがなければいいんだな!
さっそく両方の“手”を使って、その岩みたいなものを取り出す。
ぶちぶち。ぷしゃー。
わぁ、大きいなぁ。でも邪魔だし。そこら辺に置いておけばいいよね。ぽい。
岩みたいなものを取り出したら、肉が蠢くのをやめていた。
あと、僕が入り込むのにちょうどいい空間も。
ここでなら、大丈夫かな。
入り込むと、臭くて、目が痛い。足下がぬかるんで転んでしまった。
急いでリュックサックを降ろす。中を見れば黒光りする大きな球がいくつも入っていた。割れたりしていないから、良かった。
そういえば、これどうやって爆発させるんだろう。
聞いておけばよかったなぁ。
でも、割ればいいんだよね。
じゃあ割ろう。それで終われる。
「せーの」
右の“手”で球を一個、摘まんで、潰す。
ああ、これでぼ──。




