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僕の結末  作者: 鷹村紅士
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02.

 戸締まりを確認して、僕も学園へ。

 両親の残してくれた家はこじんまりとした二階建ての家だ。

 聞いた話だと、両親はどちらも孤児で、師匠に才能を見出だされて修行した結果大成したという。

 その働きは国王陛下にも誉められたらしい。

 だから二人とも、もっと大きな館にも住むことも可能だったそうだ。でも、二人とも僕らと一緒に暮らすことや、そもそも大きな館だと落ち着かないといった理由でこの家にしたそうだ。

 僕らが親無しでも学園に通って日々生活できているのは、両親のお陰だ。二人の残してくれた遺産があるからこそ、今の生活が出来ている。

 ……だから、きちんと学園に行かなきゃいけない。

 両親と約束したから。両親の遺産で生活できているのだから、約束は果たさないと。


「お早うございます」

「ん、あー」

「お早うございます」

「あー忙しい忙しい」

「お早うございます」

「お、いいご身分だな無能」


 挨拶しても、まともに返ってくることはない。

 それでも、挨拶は欠かさない。

 大通りに出ると人の行き交いが激しいから気を付けないといけない。端を歩いていく。

 通り沿いの店がどんどんと開店準備している。

 そんな光景を見ながら歩く。

 歩くこと三十分ほど。道を曲がってさらに歩く。

 そうするとちらほら制服姿の若者たちが多くなっていく。

 僕たちが通うのは国立エデルビア学園。

 ここエデルビア王国の名を冠した由緒ある教育施設だ。王公貴族から平民まで通える場所で、農業に工業、商業、騎士や兵士などの武官に事務仕事をする文官など様々な分野の基礎を学ぶことができる。


「おはよー」

「うぇ~い」

「うわ、おいやめろよ~」


 皆、仲のいい友人同士でお喋りしながら正門へ入っていく。

 僕も正門へ。

 そこでは毎朝恒例の検査が行われている。

 ここではある一定の品位を求められる。あまりに粗暴だったり、態度が悪いと評価が下がってしまって退学になってしまうんだ。

 まぁ、制服をきちんと着て、危険物を持ってこないで、真面目に授業を受けていればそうそうそんな事にはならない。

 ならないんだけど……。


「クレッグ・ヴィシテン、またお前は姉よりも遅いのか? いい加減にしろ!」


 僕は叱責される。


「姉はもうとっくに登校しているぞ。なのにお前は何だ? 随分遅くに……いいご身分だな。姉を見習ってもっと早く行動しろと何度言えば分かるんだ!」

「す、すみません。ですが……」

「言い訳などするな! 結果を見せろ!」


 門の前に立つのは、学園の風紀を取り締まる自治会の生徒たち。所属する生徒は成績や生活態度などが優秀な人たちばかり。あと、大体が貴族の子息子女。

 僕を叱責するのは、クラリア・ファティーン伯爵令嬢。武門の家柄で、父親は僕の父さんと同僚で、背中を預けられる間柄だったそうだ。

 武人の父の影響で男勝りな性格と口調で、昔から僕に対してきつい。

 そう。父の関係で僕と彼女は幼い頃からの知り合いだ。

 けれど、ご覧の通り。彼女と僕の間には友人なんて気安い関係などない。

 彼女は貴族で、剣術を学び、人の上に立つ者として恥ずかしくない人間を目指している。

 逆に僕は平民で、戦う力はなくて、臆病者だ。

 彼女は、そんな僕を嫌っている。

 父親である伯爵様から父さんの話を聞いて、じゃあその息子も父親を尊敬して騎士になるのだろう。自分と切磋琢磨する人間なのだろう、と。そう思って会うのを楽しみにしていて、実際会ったら臆病者で、とても失望したのだ。

 本人からそう聞いた。

 ただ、姉さんと彼女は仲が良いようで、よくお茶をしているらしい。

 伝聞なのは、実際にその場面を見たことがないからだ。


「まったく。貴様の御両親は立派な方々だというのに、どうしてそのような軟弱なんだ。恥ずかしくはないのか!?」

「申し訳なく……」

「だったらキチンとしろ!」


 頭を下げることしかできない僕を、叱責し続けるファティーン伯爵令嬢。

 そんな光景を、周囲の生徒たちは、笑ってみている。


「また怒られてる」

「学習能力ないのかしら」

「もう退学すればいいのに」


 笑っているのは、ほぼ女子生徒だ。

 ファティーン伯爵令嬢は女子生徒には絶大な人気を誇っている。悪を許さず、同じ女性だから色々と事情も分かってくれる彼女。

 信頼されない訳がない。

 そんな人物から事あるごとに怒られている僕は、女子たちからは侮蔑の対象になっている。

 男子生徒たちは笑うことはない。僕に興味がないから。僕に関わることを無駄だとして一切干渉はしない。


「……はぁ、もうこんな時間になってしまったのか。行け」


 始業前の鐘が鳴り、ファティーン伯爵令嬢は苛立ち混じりにそう吐き捨てる。いくら何でも叱責して遅刻させるのは不味いからだ。

 遅いとはいえ、規定の時間には間に合うように行動しているのに。


「では」

「フン」


 一礼して立ち去る僕に、彼女は鼻をならすだけだった。


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