過去の夢でもいいよね?
久しぶりの更新です。
【メイドさん】でも、書きましたが少々ヘタっておりました。
ですが!!!もう大丈夫です!??
「ハァ、ハァ、遅れてすまん!」
俺は待ち合わせの場所に20分遅れで着くと、待ってくれていた友人に自転車の上で息をきらしながら謝る。
そんな俺に対して、友人は待ちくたびれた感を全面に出しながら顔を上げ、俺に文句を言う。
「おせーぞ蓮牙!何やってたんだよ!」
と、声を荒げる友人だが、会うのが久方ぶりな為か、声質は怒り2割で嬉しさ8割と言ったところだ。
「いやー、アバラいってると予想以上に力が入んなくてよ~、笑えるぐらいに漕げねーんだよ。」
「あ~、そう言やそんな事言ってたな。
確か阿久流木のじーさんがやりやがったんだろ?」
「まーな、もうあんまり痛くはねーけど。」
ハハハと笑い、俺はまだズキリと痛むアバラをさすりながら強がりを言ってみた。
合気道を学ぶために、阿久流木家の道場に住み込みながらの修行?は、もう2年目に突入していた。
最初は「軟禁状態ぐらいは覚悟しとくべきか?」と警戒していたものの、予想に反して阿久流木のじーさんは「外との接点を沢山持っとった方が良いぞガハハハハ!」などと、外の人付き合いを重んじている傾向にあった。
おそらく《学びて思わざるは、すなわち危うし》とゆう事---つまり何の為に武を学ぶのか、外界と接して考えろって言いたいんだと思う---だろうが、豪快に笑いながら言われると只の遊び人みたいだ…。
まぁ俺的には良かったがな。
あと俺がアバラを折った理由としては、阿久流木のじーさんをぶん投げようとしてカウンターを食らったからだ。
阿久流木のじーさん、って言うか阿久流木流合気道は、古流武術らしく普段の生活の中でも咄嗟に使える武術を主体としているため、普通に生活している時は勿論の事、風呂に入っていようが、寝起きだろうが、所構わずじーさんが攻撃を仕掛けてくるのだ。
どこのアニメだよ!って言いたくなるが、真面目にマジな話だから困る。
だけど当たり前の話、最初っからこんな馬鹿げた事はしてこない。
初めのうちは、すれ違ったり油断している時に、脇腹を突かれたり膝カックンをしてくる等の、子供のイタズラぐらいだったのが、俺の技術が一年ぐらいで崇史と並ぶ程の異常な早さで覚えていった為、最近では受け身や、その後の対応の練習もかねて、隙あらば俺を投げ飛ばしてくるまでに悪化?してきたのだ。
そんな日常を過ごしていたんだが、ある日「たまにはじーさんにも苦汁を舐めさせてやる!」なんて思いに至り、わざと隙を作ったりしたものだが、相手は筋肉の弛緩なんてものが朝飯前で分かる程の達人なわけだから、引っかかってくれやしねぇ。
しかし転機はおきた!
5日前の昼頃、じーさんが俺を投げようとしてきたので、俺は「こ~れはチャンスだ!死ねや!この糞じじいがぁ!」なんて悪態を心の中で叫びながら、カウンターでじーさんを投げようとして---
---更に上のカウンターで返されたのだ。
しかも、庭石の上目掛けて………。
正直返されると微塵も思っていなかった俺は、まともな受け身もとれずに、見事アバラを折っちゃったって訳だね(笑)。
とゆう訳で絶賛療養中の俺は、練習も軽めのものしかさせてもらえなくて、普段よりも多く余った時間を使って悪友と久しぶりに遊んでいるのだ。
………そして、この日が【俺】が絶対忘れられない悪夢となり、【ボク】が見ている悪夢になる。
【ボク】がまだ【俺】だった頃何度となく思い出し、うなされた悪夢………。
【俺】のトラウマや足枷になっているのを、彼女の手助けを借りて、なんとか乗り越える事ができた悪夢………。
そして、今………思い出させるかの様に【ボク】が見ている悪夢………。
…
……
…………
「しかし、時間が経つのが早いなぁ~。」
「じじいかよ!」ビシッ
俺の台詞に友人---千宮寺 留道が、すかさずツッコミを入れる。
「いやいや、俺も、お前も、忙しくてなかなか会えずに、最後に会ってから、もう2年だぜ? 少しは懐かしんでもいいだろ。」
「ん?………もう、そんなに経つっけ?」
「じじいかよ!」ビシッ
今度は俺が留道にツッコミを入れ、2人で笑い合う。
笑いのレベルが自分でも分かるぐらいに劇貧なんだが、それでも気の合った友人との久しぶりの会話は楽しい物となるから不思議だ。
留道は俺とは違い千宮寺の本家に生まれ、千宮寺家の跡取りとして数年前から、あれやこれやと教育を受けているらしく、今日のように丸々1日暇ができるのは年に1回あるかないかぐらいの程度だからな。
ちなみに、一応年上の兄姉が居るが、彼らはあまりの低能さに、いまの当主である父親から、その権利を剥奪されている。
当然、それに断固反対した彼らだったが、当主の「じゃあ、千宮寺の姓も剥奪するぞ?」の一声で黙り込んでしまったらしい。
情けない奴らだ、まぁ自分の欲望でしか物事を考えないんだからそんなもんか。
としか俺は思わない。
まぁ、そんな事はどうでも良い。
今は、留道と遊ぶ事の方が重要なんだから。
「じゃあ、出始めにどこに行くよ?」
「あー…、とりあえずゲーセンだな!」
「OK」
目的地に向かう為に自転車に跨ると、留道がニヤけながら俺を見る。
こいつがこんな顔をしてきた時は、だいたい賭事をしたい時だ。
「蓮牙~、千円賭けてゲーセンまで競争しね?」
ほらな。
「今の俺の状態でふっかけてるんなら悪質だぜ留道?」
「あー、そうだったな。」
俺の言葉にうなだれる留道。
その隙をついて、奴の自転車のスポークとスポークの間に靴を突っ込み、スルリと脱ぎ捨てる。
ハッハー!これで奴は、すぐに出発する事は出来ない!しかも突っ込んだのは後輪の方だから、かなりの時間が稼げるはずだ!
「負けた奴が千円奢りだな、わかったぜ留道!」
「ちょっ!? おまっ!? 卑怯者ー!!!」
「なんとでも言え!勝てばいいんだよ!勝てばな!ハハハ!」
最寄りのゲーセンまでは10分程で行けるから、俺が負ける事は先ず無いだろうよ!ハハハハハ!
…
……
…………
「そう思っていた時期も有りました………。」
「なんか言ったか?」
「イエナニモ…。」
「ふーん?」
結果、俺はボロ負けしましたよ、はい。
クッ …あそこで、あんな事が起きなければ……! アレが、ああゆう風にならなければ俺が勝っていたのに、………くそう。
「だけど時間が経つのが本当にはえーなぁ。
もう、夕方だぜ?」
「あー、確かに。」
あれから暫くゲーセンに入り浸って、少し本屋に寄ったぐらいなのに、もう日は傾き始めていた。
やはり気の合った友人との時間は過ぎるのが早い。
…そう、俺と留道は気の合った友人。
………俺は、そう信じていた。
「蓮牙、俺最後に寄りたい所があるんだが……、良いだろ?」
奴に、とある場所に連れて行かれるまで……。
「ここか?来たい場所って?」
「ああ、そうだぜ。」
留道に連いて行き到着した場所は、千宮寺グループが開発を手掛けている土地から少し離れた古ぼけた民家だった。
その家は、外壁や窓の至る所に「金返せ」等の貼り紙や、スプレーによる落書きで覆い尽くされており、周囲の雰囲気からすると、かなり浮いていた……。
少なくとも普通の小学生が来るような場所ではないし、そんな家に何の用があるんだか………?
等と考えていると、留道が何の躊躇いも無く玄関を蹴りはじめた。
そのため、衝撃でポスト口に溢れんばかりに詰め込まれていた悪質なチラシが、地面にバサバサと落ちていく。
「お、おい留道!誰か住んでんだろ!?」
その行動を制止しようと、俺が奴の肩を掴むと。
「あ?この家は良いんだよ~。」
と言いながら振り向いた留道の笑顔に、俺はゾッとした。
その笑顔は2年前によく見た《悪い笑顔》とは違う、《黒い笑顔》に入る物だったからだ。
〔しかし当時の俺がそんな事を分かる筈もなく、ただただ嫌悪感を感じるしかなかったな。〕
留道は、そんな俺を今度は道端のゴミを見るような目で見ながら何かを言おうとした………、が民家の住人が玄関を開けたことにより、奴の興味は住人に向けられる。
「こんにちは!葵さん!
………少しお時間良いですか?」
最初の口調は、いつもの留道に戻ったかのようだったが、後半部分は先程の《黒い》雰囲気の留道が、住人の女性と話をしている。
彼女の名前は、白岩 葵両親が病的なまでのギャンブル中毒者であるうえに、この時には両親共に蒸発していたため、その被害を一身に受けている女性だった。
彼女は、溜め込んだ怒りや苦痛をぶつける事も出来ない為か、死んだ魚のような目をしていて、服の上からでも分かるほどに体も痩せ細っていた。
〔そして彼女こそが、俺の最初で最後の恋人になってくれた最高の女性だ。〕
「んじゃ、おじゃましまーす。」
葵さんと、やりとりを終えた留道が彼女の家に上がり込み、俺が後に続く。
家の中は実にシンプルで、最低限度の生活がかろうじて可能な家財しか置いてなかった。
「………すいません、お茶も出せなくて…。」
「いえいえ。」
希薄に謝る彼女とは正反対に、留道は飄々といった感じで返事を返す。
飄々と言っても《黒い》嫌な雰囲気でだが………。
そんな正反対の空気を纏った2人は、俺を余所に会話を進めていく。
そこで俺が分かった事をまとめると。
葵さんの年齢は俺よりも5つ上の17歳で、借金が有ることを知ったのは両親が蒸発してかららしい。
それから高校を中退して、先程の千宮寺グループ開発地区のアルバイトで生計をたてつつ借金を返済しているとの事。
ちなみに、借金は生半可な量ではないらしく、知人や友人はおろか親戚すらも彼女との縁を切ってきたようだ(でなければ彼女が、こんな生活をしいられる訳が無い)。
それでも借金取りの手は緩んだりはしてこないらしい。
当然と言えば当然だろう、彼女には何の罪も無いのだが、そんな事は取り立てる側からすると何の意味も無い。
彼等は貸した分と利子さえ回収できれば良いのだし、彼等の言い分からすれば、そんな両親の下に産まれた奴が悪い、みたいな考えなのだろうからな。
〔今聞いても、そんな世間の彼女に対する、あまりの仕打ちに憤りを感じるが、情けない話今の俺にはどうする事もできないし、当時の俺はそんな事を考えてもいなかったな………。〕
葵さんと留道の話を隅で聞いていたが、何故留道が葵さんに会いに来たのかが分からない。
こいつと彼女の接点なんて、ほとんど無いに等しいと思うんだが。
「………あの、今日はどういった用事で来た……のですか?」
俺が留道を眺めながら奴の真意を測りかねていると、葵さんも同じ考えだったのか、おどおどしながらも、こちらに問いかけてきた。
言葉の最後の方だけが敬語に変わったのは、おそらく年下に敬語を使いたくない気持ちと、俺達が千宮寺の血を持っているという事実が、せめぎ合った結果なんだろう。
「あぁ!無駄話が長引いてしまいましたね。
今日伺ったのは、あなたと取り引き?がしたいと考えたからです。」
「? 何の取り引き……ですか?」
「とある条件をのんでくれるならば、あなたが抱えている借金を全額肩代わりしましょうと言う話です。」
「「 え? 」」
留道が発した言葉に、俺と葵さんは同じ反応をしめした。
本当にコイツは何を考えているんだろうか?
確かに今のコイツならば、父親に相談して無理やりにでも可能なのかもしれないが、それには其れ相応の代償が必要となってくる筈だ。
それに、さっきの会話で分かったが2人は初対面でもある、そんな浅いとも言えないぐらいの関係しか無い間柄なのに、借金の肩代わりなんてやってやる義理もないだろうに。
「……本当に…そんな事、可能なんですか?」
暫くの沈黙の後、葵さんが提案をだしてきた留道に対して、疑いの眼差しを向けながら聞いてきた。
提案を聞いた時の反応こそは同じだったけど、どうも考えている内容は俺と違ったようだ。
冷静に考なくても世間一般的には、葵さんの反応の方が正しいかもしれない。
この世間のどこに、親戚すらも縁を切るレベルの借金を肩代わりする12歳がいるだろうか?
そんな事を言われても相手の方は、からかわれているか、ただの妄言を言っているガキか、とかしか受け取らないはず。
今は妄言としか思われていないみたいだけど……。
そんな彼女の反応を見た留道は「やれやれ」といった感じで、自分のバックの中から通帳を取り出し、それを葵さんに見えるように開くと---
「えっ?」
葵さんの表情が《疑い》のものから、《驚き》のものへと変化した。
その隙を突いてなのか、留道の奴がたたみかけるかのように口を開く。
「これに入っている金は、父の名義で俺が稼いだ金で、別に怪しい金じゃないから安心して受け取って貰っていいですよ。
まぁ、稼ぎ方は父に教えてもらった方法でなんですがね。」
ハハハと笑いながら、留道は更に葵さんの抵抗力を下げる為の話を続けていく。
俺からじゃ見えないが、葵さんの様子を観ると、通帳には、かなりの金額が書かれているのが想像できる。
留道の親父はコイツに、そんな事までを教えているのか?
いくら後継ぎだからと言っても、教える内容に見境が無いような気がするのは、俺の気のせいではないはず……。
次から次へと湧き上がる不信感と疑問を、留道の奴に問い詰めたいが、この部屋の異様な空気を払いのけて、奴に聞き出す余裕が今の俺には無かった。
〔まぁ、暫く経ってから分かったけど、余裕と言うより、そんな勇気や知識が無かっただけなんだよな……。〕
そんな空気感の中、葵さんが口火を切ってきた。
「私は何をしたら良いんですか?」
そう言いながら留道を見据える眼は、先程までの虚ろなものとは打って変わって、このチャンスを逃がすまいと言わんばかりなギラギラと野心溢れるものに変化していた。
まさに〈目は口ほどに物を言う〉と言ったところだろう。
そして、そんな葵さんを見下し嘲笑うかのように、留道は口角のつり上がった口を開く。
「その体を俺に差し出せ。」
まるで笑いを堪えるかのように放たれた言葉に、更に周囲の空気が歪んだ気がした……………。
次話は少しグロいかも ……………?




