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休息ファンクラブ  作者: ゆるうる


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1話 学校はただの箱である

学校は、全ての学生が暮らしやすい環境であると言えるだろうか?

全ての学生が青春を過ごしていると思うだろうか?


答えは、否。この学校にいる全ての生徒に聞いても、否、という回答が返ってくるだろう。

学校とは、所詮ただの箱である。


面白い、面白くない。楽しい、楽しくない。そんな基礎的な経験を小学校でして、中学校に行ったらその応用を経験することになる。では高校生はその応用の先か?と言われれば違うだろう。

義務教育ではなくなり、今では色んなスタイルの学校が存在する。


僕が行ってる高校は、一般的に存在する公立高校。部活で何か目ぼしい活躍があったわけではないし、過去に問題行為があったというわけでもない。言ってしまえば何の変哲もない高校だ。


「......眠いな」


体育館には、基本的に倉庫が併設されている。

そこには授業で使うボールだったり、跳び箱、マットなどなど体育以外でも使う道具が揃っている。


この学校の体育館倉庫は、異様に広い。

出口が二つあって、外に出られるし、授業をしているときは生徒や教員の声が当然聞こえてくる。


この広い体育館倉庫の角っこで卓球台を縦に置き、仕切りのように立てかけ、大きいソファを構え、照明を置き、本を顔に乗せ、まさに今眠ろうとしているのが高校2年生、月咲英途(つきさき えいと)である。


◇


「えぇ〜月咲くんを...ですか」


「そうそう。やっぱ朝川さん委員長だし」


千葉県立千葉中央高校。千葉という単語が連続していて、ゲシュタルト崩壊を起こしそうなこの学校はごく普通の一般的な公立高校である。今職員室でやり取りをしているのは月咲英途のクラスメイトであり、2年4組の委員長である朝川歌乃(あさかわ かの)と、担任である高橋敬(たかはし たかし)。


「ですが私、月咲くんと一回も話したことないし、、」

「...彼、もうかれこれ半年くらい体育館で過ごしてるんじゃないですか?」


「そうかもな」

「俺が言っても聞く耳持たないし、月咲の親に言ってもうんともすんとも言わない」

朝川に頼むのも苦渋の決断だったんだぞ、と高橋先生は付け加えた。


「むしろ今までよく放置してましたね...」


「それな、あーはっは」

笑う高橋先生。私はそれを冷ややかな目で見つめていた。


「そもそも彼、卒業できるんですか?」


「まぁ出席はしてるし、テストも別教室で受けてるからな」

「成績はボチボチだが...なんとも言えない」


月咲英途、2年4組の生徒。黒髪で割と顔立ちは整ってるけど、根暗でまともにクラスメイトと関わろうとしない。でも入学式や先輩の卒業式には来ていたし、毎回朝礼には必ずいるというよくわからない生徒。


クラスラインで月咲くんの話はちょこちょこ出るが、そのことを直接話している生徒は見かけない。

私から見たら問題児でちょっと顔が良いくらいしか印象がなく、周りからは陰キャの問題児という最悪のレッテルを貼られている気がするけど、わざわざ委員長の私が話しかけに行かなきゃいけないことなのだろうか?


「......とりあえず明日、朝礼後にあいつのとこ行ってこい」

「1限は俺の授業だから、出席ってことにしといてあげるから」


「......はぁ」

放課後に呼び出されたのがこんな案件だとは。明日の私が憂鬱になった瞬間だった。

ちょっかいかける感覚で接してみるか。


◇


基本的には、僕はこの体育館倉庫で1日を過ごしている。

いつからかといえば、去年。


僕は高校で何かを得ようとは思っていないし、何か別でしたいことがあるわけでもない。

側から見れば、変な奴に見えること間違いない。


現に部活やら授業やらで道具を取りに来る生徒に冷めた目で見られている。


「......またいるよ」

「あそこだけ変なオーラするもん」


小声でやり取りしていてもちゃんと聞こえる。

すでに朝礼には行ったし、11時くらいまで仮眠しようとしていた瞬間。


──バァン。


「へ!?」


「あ、ごめ」


急に同じクラスの生徒が入ってきた。名前は朝川...なんとかさんだっけ。

茶髪の少女は何も言わずに仁王立ちで腕を組み、英途の前に聳えた。


「......なに?」


「月咲くん。教室に戻らない?」


「あーそういうの間に合ってるんで」


「......」


「絶対あの名前面白い先生に言われて来たでしょ」


「そう。高橋先生に言われて」


やっぱりか。前にも来ては一緒に授業受けようぜやら、別教室行こうぜやら言われた。

それが嫌だから僕はここにいる。


「よいしょっと」

茶髪少女は、僕のふかふかソファに座りこちらを見た。


「めちゃくちゃ座り心地いいじゃん。私も欲しいくらい」


「ねぇ、僕の絶対領域に踏み入れないで」


「体育館倉庫はあなただけの場所じゃないよ?」


「チッ、面倒な」


「舌打ちすんな」

目を細め、足を組み偉そうに座る女子に僕は問いかけた。


「で、茶髪少女は僕を──」


「茶髪少女やめて。朝川歌乃。クラスメイトの名前くらい覚えなさい」

朝川歌乃、誰だっけ......クラスの委員長がそんな名前だった気がする。


「朝の川さん。僕は省エネなの。自衛でここにいる」


「自衛でいるにはあまりにも度が過ぎてると思うんだけどね...」


「私も頼まれてここにいるんだよ。わかる?」


「知らん」


「聞く耳持ちなさいよ」

足を組み替え、手を顎に乗せ明後日の方向を向く彼女。


「それにもう5月だし、校外学習あるんだよ」


「そういえばそうなんだっけ」


「水族館行くのに、月咲くんだけグループ決まってない」


「じゃあ家で水族館の映像見てるよ」


「そういうことじゃなくてさ...はーだるこいつ」


「本音が出たな委員長」


「......よく委員長ってわかったね」


「思い出しただけ」

そういえば、今日は別の本を持って来たんだった。朝川さんそっちのけで読書を始める。


「......月咲くんは、クラスが合わないの?」


また聞かれても無駄な質問。今までに死ぬほど聞かれた質問だ。

適当にあしらっておこう。


「そうかもな」


「......月咲くん、そんなイキってて楽しい?」


「.............は?」

彼女が笑顔で言った一言に、僕は怒りを覚えるのだった。

お読みいただきありがとうございます!

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