路地裏で、月と日の狭間に照らされて side:シュウ
1000PV行きましたー!!!!
こんな拙作を読んでくださる皆々様に感謝を!!
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「分断された……」
傲慢な学習をレンが始める数分前、図らずもシュウはレンと同じ言葉で状況を整理していた。
目の前に、自信満々に立つ獣人。そしてその奥にはレンを投げ飛ばしたフードの人物がいる。
「――」
状況の整理はシュウ冷静をもたらしてくれる。神格の発動をいつでもできる気構えで、シュウは脳内でやるべきことのリストアップを始めた。
「……子供の居場所を突き止めること。レンと合流すること。――目の前の敵を、殺すこと」
冷たい目で敵を見据えてそう言い切った。
確認をするように、小声で言葉を並べ立てるシュウのその視線に気づいた獣人はフードを取り、顔を見せる。
――愉悦に染まった、その顔を。
「アタシを殺す、って目をしてるにゃー。怖いにゃー」
常人にはない長々しい爪を光らせ、常人のそれより余程尖った牙を見せて、獣人は笑う。
その声音に、額面通りの意味はない。むしろ全くの逆だ。
先に広がる未来が楽しくてしょうがない。
想像が現実に移ろっていることが愉しくて仕方がない。
そんな隠しきれない獰猛な笑みがその言葉にはわかりやすいほど多量に含まれていた。
「白々しいよ。――どうせすぐ死ぬんだから、名乗れよ獣人」
「……お前、生意気だにゃあ」
対して人間そのものの歯を見せて余裕そうにシュウは煽る。
余裕を演出しているのではない。心から、余裕を持っている。
建物の影に立つ獣人と違い、シュウは月に照らされている。煽りが言葉と表情、その二つで十全に伝わるほどに明るく。
――いつだって光は勝者に当たるものだ。故に今も、シュウは余裕を崩さない。
根拠のないものではない。むしろ海よりも深い根拠があると、シュウは強く言い切れる。
「主人公は負けないからね」
「うげ、演者気分かにゃ。生意気な上にそれじゃ神でもお前を救えねーにゃ」
獣人が感情に任せて腕を振れば、その先にある爪が煌く。
右に三、左に三。合わせて六本の、命を容赦なく刈り取らんとする爪が――、
「負け犬は吠えるのが仕事にゃあ!」
一切の躊躇いなく、シュウに差し迫る。
六本の爪は鋭く、人の肉など容易く切り裂き、その奥の命に手をかけるだろう。
そんな、軽々と人を切り刻む代物を、
「……負け猫のほうが正しいんじゃない?」
嘲るように目の前の獣人を笑い、その攻撃をシュウは易々と防いでいた。
爪とシュウの間に割って入るのは、シュウの神格である『挫けぬ盾』だ。
嘲笑うシュウは、言葉を続ける。
「生憎僕は強い方なんだよ」
――刹那、『挫けぬ盾』がそのまま質量の壁として振り切られる。
「――!」
壁というどうにもできない質量と衝突して、獣人の体は軽々と吹き飛ぶ。空を勢いよく飛び、舞うその姿はダメージを負ったと名言して良い――否、飛びすぎだ。
食らった瞬間に自ら飛び退き、衝撃を散らしている。
「いいにゃあお前! アタシはキャープ! 覚えて死んでいくにゃあ!」
音もなく着地する獣人――キャープは牙を鳴らしていっそ狂気的と言えるほどに笑う。
笑い、地を蹴る。
路地裏の地面のみならず、建物までも自らの地として縦横無尽にその身を散らす。
目で追える速度ではないそれは、まるでヘビを思わせるような一本の輪郭と成っていく。
巨大生物に囲まれるような威圧感を撒き散らすキャープが、フェイントを織り交ぜてながらその爪でシュウの命を狙う。
攻撃と思わせて地を蹴り、壁の跳ね返りを使った加速だと思わせながら攻撃を放ち、文字通り、四方八方から無数の攻撃が迫る。
常人ならばどこから切られたかすらもわからぬ内に命を落とすだろう。
しかし、シュウは常人ではない。冒険者だ。
「――そこ、ここ、ここ……フェイント、そこ」
淡々と、あしらうように防ぎ続ける。
躱され、いなされ、シュウに傷はつかず、シュウの周りの石畳だけに爪痕が刻まれていく。
「――ッ! うざったい! いいかげんに食らうにゃあ!」
じれったく歯軋りをして、地面だけを捉え続けるキャープがいらついた声を飛ばす。
それを聞きながら、シュウは試行を重ねて計画を練る。
四方八方から声と攻撃を飛ばすキャープは、しかし決定的な攻撃をしてこない。
一見強力な連続攻撃だが、今のキャープの攻撃の本質は一撃離脱故の切り替えやすさだ。
連続する雨のような一撃離脱を躱しながら、シュウは思考を続ける。
「――」
軽い攻撃は言い換えれば隙が無い。攻守をすぐさま切り替えられる体勢に決定打を食らわすことは難しい。
――ならば、誘えば良い。
――刹那、キャープは目の前のうざったい人間に隙を見る。
音を左右へ散らし、動き回ってわかりにくい現在地を更にわかりにくくする。と、同時、キャープはシュウの背後へ音もなく着地。
それが罠だとも気付かず、無防備に見える背に爪を突き立てんと強く地を蹴り――、
「言ったでしょ? 僕、強い方なんだ」
――直後、キャープの目の前に自身を貫いて余りある程大きな槍が出現。
シュウが槍の形で生成した『挫けぬ盾』の穂先に、勢い強く咄嗟に止まれぬキャープの体が近づいていく。
どんなものでも、急には止まれない。
自らの勢いでその胴を貫かれそうになるキャープの目と、シュウの視線が交錯。
大ダメージは免れないと半ば確信のように考えるシュウの流し目の先、キャープは更に加速した。
「……!」
身を捩り、体勢が変わり、胴を貫く筈だった穂先は、キャープの肉を軽く抉るだけに留め、そしてその身を抉られたキャープは止まらない。
加速した身から放たれる爪が月の光を反射して煌めきながらシュウへ迫り――、
「……冷や汗出てるにゃ、演者野郎」
「一撃も食らわせられずに良く言うよ」
煌めく爪を、シュウは腰から抜き去った鈍く光る中剣で防いでいた。




