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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者レディム・ルーグストンの章

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第408話 「暗闇よりの姫」(ストーリー)

 暗処悲噛姫。

 その奥底に激しい情念と黒い炎をたぎらせる邪神は、かつては王国の地方の貴族の娘だった。

 娘は三姉妹の長女だった。が、同じ血を引きながら、彼女は二人の妹たちと大きな違いがあった。

 それは、妹たちが近隣の諸侯に知れわたるほどの美貌であるのに対し、彼女は思わず目を逸らしたくなるほどの醜女(しこめ)だったのだ。


 三姉妹は心穏やかに育っていた。

 両親は分け隔てることなく愛情を注ぎ、それは幼少、思春期を過ぎても変わることなく続いて、家族は仲むつまじく過ごしていた。


 しかし周囲はそうはいかない。

 三姉妹は年の頃に社交の場へ出ると、瞬く間に男たちによる取り巻きが出来た。

 しかしその中に長女は含まれてはいない。男は皆、妹の美貌に引き寄せられるように群れを作ったのだ。


 長女は嘆き、己の醜さを怨み涙し、暗い部屋で泣く日が増え、笑顔が消えていった。

 だがそんななかで、一人の貴族の男だけは違っていた。その男は美しい妹ではなく、他の男たちに見向きもされない長女に常に優しく声をかけ微笑んでいた。


 異性の暖かさに触れた長女は瞬く間に恋におちた。

 日々その男を想い、手紙をしたため、詩を詠んだ。

 そして恋心は暗かった長女の心に希望の光をもたらす。

 長女の顔に笑顔が戻り、明るい振る舞いをとる。

 しかしその幸せは偽りであり、幻だった。


 ある日、長女は胸の中にある男への想いを、意を決して伝えた。心に光をもたらした男のことを愛していると。身も心も受け取ってほしいと。

 告白を受けた数秒の後、沈黙していた男は笑った。下卑た高い声だった。


 豹変した男に、長女は戸惑い言葉を失う。

 そんな長女に男は笑いながら語った。

 男が長女に目をかけていた理由は、世間からの評判を高めるためだと。

 周りの男たちが美しい妹に夢中になるなか、見向きもされない哀れな女へ手を差しのべる。

 紳士的な振る舞いは下卑た連中に聖人のように映り、事実両親と妹たちは、大切な家族である長女に敬いの態度を示す男を大層気に入っていたのだ。


 事実を聞かされた長女は深く悲しみ、激しく嘆いた。

 長女は再び部屋へ籠るようになり、そこで暗く淀んだ感情を生まれ、その感情は歪み怨みとなって愛していたはずの家族へと向けられ、ついには怒りのままに家族を殺め家に火を放ち命を絶った。


 しかし長女の怨みは死語も残った。それどころかさらに強さを増し、長女は家族たちの命を取り込んだ怨念の塊となって生前長女に冷たい目を向けた男とその一族に様々な厄災をもたらした。

 特に顔の美しい女が、自慢の顔を切り裂かれ、焼かれ、溶かされて無惨に死んでいった。


 やがて厄災に耐えかねた人間たちは高名な術師や聖職者に力を借り、長女の魂を神格化して供物と祈りを捧げ続けることでようやく沈静化した。


 こうして生まれたのが『暗処悲噛姫』であり、ルゼリオ王国の一部では、その名と話はいまだに語り継がれている。


 ◆


 怨みと悲劇によって誕生した邪神『暗処悲噛姫』。

 その経緯から、彼女は見目麗しいナルや一見華麗なリリーに怒りをおぼえる。

 それが逆恨みや言いがかりの類いであろうが、美しさが最大の罪である彼女にとっては、それが行動理念、存在理由となるのだ。

 そして今、その心の奥底に鎮座する黒い粘着質の怨みは、写し身によって増幅され本体の中へと注がれていた。


「ふぅむ、ふむ、ふむ・・・随分と強い怒りの念を抱いたものよのう・・・まぁ、確かにあれだけ形の良い面を見てしまえば古傷が疼くのも頷けるのぅ」

 飲み込んだ写し身たちの怨嗟をしっかり咀嚼すると、暗処悲噛姫の本体は上空を見る。

 ナルがいた。垂れた絹のように美しい黒髪が、朝日を反射して二つ目の太陽の出現を思わせる。

「けしからんのう・・・腹立たしいのぅ・・・」

 重く鈍い口調でポツリと呟くと、暗処悲噛姫はメイに絡み付いていた首から下をさらに溶かして口から中に入りこんでいく。


「ぐ、げぼ・・・」

 暗い魔力が強制的に流入してきたことにより、メイは拒否反応を示し激しく嗚咽する。

「ふん、余を拒むかならば・・・」

 暗処悲噛姫は溶けた身体を幾つもの支流に分けた。

 細くなった粘液状の身体が耳、鼻、目へと突っ込み、穴という穴から侵入を試みる。

「ふぁふぁふぁ、さすがに耳からは吐き出せまい。さらにほれ、まだ口は開いておるぞ」

 粘液がメイの下半身へと向かう。滑らかで不気味な感触が胸から腹へと動く。


「な・・・や、やめ・・・」

 目を塞がれた暗闇の中で、メイは自身が汚されていくのを感じていた。

 滑った感覚の異物が腰の腰の布を押し退けて侵入してきたのが解る。

「上の口よりも、こちらの方が魔力を喰らうには適当かのう。ほうれ」

 身をよじらせながら抵抗するも、暗処悲噛姫はメイの内部に侵入した。

「゛゛゛゛~~~!!」

 メイは口を塞がれたまま、恥辱によって声にならない声で絶叫した。


「ふぁふぁふぁ・・・(ぬく)い、温いのぅ・・・体内が魔力で溢れておるぞ。ここは楽園よ・・・ん?お主、既に一度、神に憑かれておるな」

 身体を貪るなかで、暗処悲噛姫はメイの中の神の残滓に気付いた。それはかつては学園都市ワイトシェルでサルデスに侵食されたときのものだった。


「この魔力は・・・サルデスであるな。なんと、死の神に股を開いておったか、このアバズレが。ふぁふぁふぁふぁ!」

「むぐ、ふ、ぐぅうううううう!」

 侮辱の言葉に、メイは怒りで身体を震わせ力をこめて魔力を昂らせる。

「無駄よ。内をとられておっては、如何に強き魔力があろうとも抗えぬぞ!」

 黒い怨みの粘液が全身を飲み込み、メイの内も外も徹底的に侵し尽くした。

 直後、黒い巨大な炎が立ち上がり、周囲にどす黒い熱風を巻き起こす。


「いかん。皆、一ヶ所に集まれ。氷の壁を作る!リリー、おまえも加護で壁を作れ!」

 友の魔力の動きに危険を察知したナルが全員に指示を出した。

 それに従い、戦士たちは一斉に集合する。


「『八交霜相』(はっこうそうそう)!」

 ナルが、巨大な霜柱を八方向から発生させて中央で重ね合わせることで八重の防壁を作る『八交霜相』を前方に発現させて黒い炎に対して備えた。


「出ろ『シャッター・セグン』!」

 リリーが右手を振り下ろすと、その仕草に沿って巨大なシャッターが上方から下りて八交霜相の後ろに展開された。


 八層の霜とシャッターの二段構えの防壁に、黒い炎がぶつかった。

 炎は霜の壁に触れた瞬間に、八層の六層を蒸発させ僅かに侵攻の足を止めた。が、即座に勢いを取り戻すと残りの霜を溶かした。

「く・・・一瞬か。不甲斐ない」

 魔力の差を実感し、ナルは嘆いた。


 八重の霜を消し去ると、黒い炎はシャッターを攻める。

 炎は叩きつけられた勢いだけでシャッターを内反り変形させ、金属製に耐火処理を施した表面を焦がして溶かし始めた。

「なんだよこれ?炎のくせに・・・お、重い・・・!?」

 シャッターにかかる負荷に全身で抗いつつ、リリーは初めて受けたメイの魔力の強さに驚愕する。


 変形していたシャッターの色が変わり始めた。中央部が発光し、高熱を帯びているのが解る。

「くそっ、耐熱が限界だ。破られる!!」

 敗北を悟り、苦々しくリリーが叫んだ。

 炎の熱が空間を満たしていく。


「こうなったら、肉体の限界を向かえるかもしれんが、おれがやるしかないか・・・」

 サイガがリリーの前に出た。その右手には氷と風の魔法珠が嵌められた魔法剣。左手には超化翠が握られている。

 超化して炎を切り払おうという算段なのだ。


 意を決してサイガが構えた。

 同時にリリーの加護が限界を迎える。

「もうダメだ・・・破られる・・・」

「無理をするな。加護を解け、あとはおれがなんとかする!」

 サイガが魔法剣と超化翠を強く握った。発動を促す。

「超・・・」

 超化発動。と、踏み切ったとき、大きく状況が変わったことを察して、サイガは超化を止めた。


 熱が消えた。それは炎による攻めが終了したことを意味していた。

「シャッター・・・消すぞ」

 宣言してリリーが加護を解くと、全員の目に黒い炎に全身を包まれたメイの姿が飛び込んできた。



◯拘束されるメイ

挿絵(By みてみん)



◯黒い炎に侵食されるメイ

挿絵(By みてみん)


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