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最強忍者の異世界無双~現代最強の忍者は異世界でもやっぱり最強でした~  作者: 轟龍寺大鋼
ルゼリオ王国動乱編 特級冒険者ワーレン・エッダランドの章

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第361話 「恥ずべき敗北」(ストーリー)

「戦力の回収だと?今さら退けってのか?」

「ええそうですよ。今言った通り、大きな戦いの前にこんな場末で消耗して死なれるのは望むところではありませんからね」

「言ってくれるじゃねぇか。こちとら互いに命がけだぜ」

「規模ではなく場所と位の話ですよ。命を懸けるなら大舞台、好敵手との戦いに懸けるべきでしょう。超将軍、六姫聖に限らずこの国に生きるなら本能的に求めることですよ。でしょう?」

「ちっ、もったいぶるだけの価値はあるんだろうな?」

「それは体験済みでしょう。彼女らが万全となれば、互いに血で血を洗う戦いを味わえますよ」

「聖人面して言うことが血生臭ぇな、相変わらずよ。解った、退いてやるよ。けどよ、スキルマスターはどうすんだ?捕まっちまってるぜ」

「大丈夫です。それなら・・・」

 長々とクザートとリースは会話を続けた。

 その間、周りは二人を見ていることしかできない。それだけ、付け入る隙がなかったのだ。


 リースが一歩前に踏み出した瞬間、姿を消した。

 そして全く間をおかず、拘束され地面に転がるムクの前に姿を現した。その動作を誰も察知することができなかった。

「有無を言わさず連れて帰ればいいんですよ」

 そう言うとリースはムクを足で拾い上げ、空中に放ると肩で受け止めて担いだ。

「き、貴様!」

 いきり立ったドウマが忍者刀で斬りかかった。

 が、軽く上げた蹴り足で攻撃を外に弾かれ、同じ足の爪先で顎先を蹴られると、脳震盪を起こして地面に落ちた。

「無駄ですよ。戦い続きの疲弊しきった身体で、私に攻撃なんて当たるわけないでしょう」

 担いだムクを一切揺らすこと無く、リースは自称サイガのライバルのドウマを地にまみれさせた。


「む!・・・やりますね」

 リースの頬に一筋の赤い線が浮かび上がり、一滴の血が流れた。指先でそれを擦り取りニヤリと笑う。

「な、なめてもらっちゃ・・・困るね。腕には、自信が・・・あるんだ」

 地面に倒れ込みながらも軽口をたたくドウマの手には、忍者刀とは別に脇差しが握られていた。一刀目に紛れさせて二刀目を放っていたのだ。

「素晴らしいですね。その身体で私に攻撃をかすらせるなんて。これはますます万全の状態での手合せに期待が持てますよ!」

 これまでに様子とうって変わって、リースの表情と声が嬉々とした調子で跳ね上がった。明らかに興奮していた。


 リースがカルカリの地に姿を現した本来の目的は、反乱軍の計画の妨げとなるドウマの妨害、足止めだった。しかし、いざ到着してみれば監獄は崩壊、各員が激闘から疲労困憊ときている。

 戦いを望むルゼリオ王国の民、超将軍としてはいささか拍子抜けしていたのだ。

 しかし、窮地にあっても消えぬ闘争心の炎と技の冴えを見せるドウマに、リースは喜びの感情のままに振る舞った。

「ふふふ、これは期待に胸が膨らみますね・・・おや?」

 喜ぶリースの頭上が急に曇天となった。不可解な気象に、頭上を見上げる。

「!!」

 見上げたと同時に、巨大な物体がリースの顔面を襲った。

 即座に脱力、降下し、リースは軽やかにそれを躱した。

 物体が空を切って風を起こす。


 曇天の正体は雲ではなかった。

 限界を迎えたはずのリンが立ち上がり、攻撃を仕掛けてきたことによって日光を遮ったのだ。

「ふぅっ、ふぅっ・・・望むところでない?期待する?な、何様ですの・・・!?」

 リンの声は疲労と怒りで震えていた。実質見逃されると言う扱いが、燃焼材となって限界の身体を奮い立たせていたのだ。


「見たところこの中で一番消耗していながら、それをおして立ち向かってくるとは・・・これが、暴風か・・・ふふふ・・・」

 肉体の限界を越えさせるリンの闘争心の強さに、リースは思わず笑い、そして欲が出た。

 リンの眼前から一瞬で消え去り、クザートの前に現れる。

「クザート、スキルマスターを連れて帰ってくれませんか?」

 そう言ってムクを地面に下ろす。

「なんだと?お前、まさか・・・」

「ええ。すこし・・・遊んできます」

 また一瞬で姿を消した。

 リンの前に現れる。


 ◆


「お待たせしました。さぁ、始めましょうか」

 戦闘狂のリンのお株を奪うような、リースの余裕の開幕宣言。それがまた、リンの怒りをさらに燃え上がらせる。

「おのれ・・・ダグマ!」

 聖鎖ダグマを巻き付けたリンの拳が唸る。侮られた怒りと相成って猛虎の威嚇に匹敵する圧を放つ。

 だが、如何に迫力、気力を孕もうとも、ドウマやジョンブルジョン同様、疲弊しきった肉体では、王国最高峰の武人、超将軍には遠く及ばなかった。


 右の拳を開いた掌で軽く外へと受け流すと、リースは半歩前に出る。その間に、みぞおち、右脇腹、左大腿、喉、顎、眉間に拳を打ち込まれていた。

「これはずいぶんと緩い攻撃ですね。これでは良い的ですよ」

 全てが一瞬の打撃とはいえ超将軍のそれは、やはり一つ一つが必殺の威力。リンは大きく身体を揺らす。

「くっ、か、身体が・・・まともに・・・動かない・・・」


 リンは肉体が限界を迎えようと己の攻撃が堅牢な鉄扉すら粉砕すると信じていた。

 それだけの鍛練を行い、強敵との死線を潜り抜けてきた自負があったからだ。

 しかしその自負は、一方的な敗北というかたちで呆気なく散ることとなる。

 気持ちだけが走ったことにより、意気は上々だが身体が全くついてきていないのだ。

 それによって、リースの攻撃をなす術もなく浴びることとなった。


 痛みに耐えかねて左膝を着く。下がった額に肘が打ち込まれ額が割れた。

 立ち上がっても、両脇が開き防御が疎かになったところに、みぞおちへの前蹴りと両脛を削る足払い。

 辛うじて蹴りを出すも、あっさりと躱されて先から付け根まで膝を叩き込まれる。

 牽制の拳を出せば間接をとられ、防御を固めれば肉と経絡への的確な一本拳が突き刺さる。

 なにをしようと逆手にとられ痛手として返ってくる。しかもその全てが死に至らぬよう手加減されたものだったのだ。

 それは、戦いに命と誇りをかけるリンにとって、耐え難い屈辱の時間だった。


 ◆


「いやぁあああああ!お姉ちゃん、お姉ちゃんが死んじゃうよぉ!」

 いたたまれぬ凄惨な光景に、セニアがたまらず悲鳴をあげた。

 リンの元に駆けつけようと、たまらずクレーターの縁から身を乗り出すが、それを横から差し出された一本の手が阻んだ。

「お嬢様、あれは戦士の命を懸けた場です。如何に無惨であろうとも割って入ることは許されません。助けるという行いが、何よりも侮辱となるのです・・・」

「チ、チカ・・・そんなぁ・・・」

 チカは普段とは違う真剣な顔つきだった。

 かつて組織に所属し任務を遂行してきた戦士の矜持が、リンと共感したのだ。


 ◆


 一方的な蹂躙は誰に止められることもなく続き、それは十分(じゅっぷん)以上に及んだ。

 リンは身体中が打撲によって変形、変色し、無事なのは頭髪ぐらいだった。

「う、ああ・・・ぐ・・・」

 残された力で拳を握り振りかぶるリン。しかし、その動きはあまりに鈍く、上段に構えたところで止まってしまった。

「もう終わり・・・ですね。素敵な時間でしたよ」

 満たされた、穏やかな口調でそう告げると、リースは軽やかな動きの上段後ろ回し蹴りでリンの顎を左から右に蹴り抜いた。


 意識が切断されたリンの身体から力が抜け、足が崩れ、膝を着き、前に崩れる。

 前傾となった巨体の頭を、リースは優しく抱き止めた。

「今回は不本意ながら、望まぬかたちでの手合せになってしまいましたが、次は是非とも互いに万全の状態で闘いましょう。その時には、あらためて貴女を・・・殺させてもらいます」

 言い終わったリースが抱き止めた手を緩めると、リンはずるずるとリースの胸に顔を滑らせて地面に倒れた。

 恥辱にまみれた敗北だった。

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